貸家建付地・貸宅地の評価|賃貸割合と空室・使用貸借は下がらない
アパートを建てて貸していた土地は評価が下がる——ただし「どのくらい」「空室があると」「子にタダで貸している土地は」となると、答えられる人は多くありません。貸している土地の評価は、貸し方と相手で下がる幅がまったく違います。
貸家建付地と貸宅地の計算、賃貸割合と空室、使用貸借、用途の切り分け、小規模宅地の特例との併用を整理します。土地評価の基本は「相続した土地・建物の評価額の出し方」をどうぞ。
①貸家建付地(自分のアパートを第三者に貸す土地)は「自用地×(1−借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)」で、借地権割合60%なら満室で18%減 ②賃貸割合は貸している床面積÷全体。空室があれば減額も減るが、募集を続けている一時的な空室は賃貸中として扱える ③貸宅地(借主が建物を建てる)は「自用地×(1−借地権割合)」で大幅減。親族に無償・低額で貸す使用貸借は自用地で下がらない ④小規模宅地の特例(200㎡・50%減)と併用可。駐車場や自宅が混在すれば用途ごとに区分
貸家建付地の計算——借地権割合×借家権割合×賃貸割合
貸家建付地は、自分の土地に自分の建物を建てて第三者に貸している土地です。入居者の借家権で土地の利用が制約される分、評価が下がります。
| 計算式 | 例(自用地評価5,000万円・借地権割合60%) |
|---|---|
| 自用地評価×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合) | 満室:5,000万円×(1−0.6×0.3×1.0)=4,100万円(18%減) 賃貸割合50%:5,000万円×(1−0.6×0.3×0.5)=4,550万円(9%減) |
借地権割合は路線価図に記載され(住宅地で60〜70%が多い)、借家権割合は全国一律30%。満室でも減額は借地権割合60%で18%、70%で21%が上限です。建物も「貸家」として固定資産税評価額×(1−0.3×賃貸割合)で評価され、両方が下がります。
賃貸割合と空室——一時的な空室は賃貸中とみなせるか
減額幅を左右するのが賃貸割合——貸している床面積÷全体です。10室中8室なら80%で、減額は満室時の8割。相続開始日時点で判定します。ただしたまたま空室だった部屋を賃貸中として扱える場合があります。次の事情があれば「一時的な空室」として含められます。
- 相続開始前は継続的に賃貸され、退去後速やかに募集している
- 空室の期間中、他の用途に使っていない
- 空室の期間が短く(数か月程度)、相続開始後速やかに入居者が決まった
長期間募集もしていない部屋、物置に使っていた部屋、リフォーム中の部屋は含められません。空室の扱いは見解の相違が起きやすいため、募集広告や退去日・新規契約日の記録を保管してください。
貸宅地と使用貸借——大きく下がる土地・下がらない土地
貸宅地——借主が自分の建物を建てている土地(底地)です。「自用地評価×(1−借地権割合)」と大きく下がり、借地権割合60%なら更地の40%の評価です(「底地(貸している土地)の相続」)。
使用貸借——最も誤解の多い部分です。親が子に無償で貸し、子が家を建てている土地は「使用貸借」で借地権は生じず、自用地として100%で評価されます。地代が固定資産税程度なら同じ扱いです。借地権が認められるには、通常の地代と権利金の授受、または税務署への届出が必要です。
| 貸し方 | 評価 |
|---|---|
| 第三者に有償で貸し、借主が建物所有(貸宅地) | 自用地×(1−借地権割合)。大幅減 |
| 自分の建物を第三者に貸す(貸家建付地) | 自用地×(1−借地権割合×0.3×賃貸割合)。2割前後減 |
| 親族に無償または低額で貸す(使用貸借) | 自用地評価。減額なし |
| 自分の建物を親族に無償で貸す | 自用地評価。減額なし(建物も自用家屋) |
用途の切り分けと、小規模宅地の特例との併用
用途の切り分け——自宅とアパートが同じ土地にある、入居者用の駐車場がある場合は、用途ごとに面積で区分します。自宅部分は自用地、アパート部分は貸家建付地、入居者専用の駐車場は貸家建付地に含められ、外部に貸す月極駐車場は自用地(「駐車場・貸地の相続」)。
小規模宅地の特例との併用——貸家建付地は「貸付事業用宅地」として200㎡まで50%減を重ねて使えます(相続開始前3年以内の貸付は原則対象外)。自宅の敷地の特例と併用する場合は限度面積の調整があります(「小規模宅地等の特例」)。
自用地評価5,000万円のアパート敷地(200㎡以内)なら、18%減で4,100万円、さらに50%減で2,050万円。「アパートを建てると相続税が下がる」と言われる理由ですが、建築費と空室リスクが前提です。相続の場面では、賃貸割合と用途の区分を正しく反映することが払いすぎを防ぐ実務です。
貸している土地は「貸し方・相手・賃貸割合」で財産目録に——アパートか貸宅地か使用貸借か、入居状況と地代の額を書いておけば、評価の区分が正しく決まります。財産目録の下書きを画面のステップに沿って無料でつくれます。
財産目録をつくるよくある質問(FAQ)
父の土地に私が家を建てて住んでいます。父が亡くなったら評価は下がりますか?
下がりません。親の土地に子が無償で家を建てて住む形は「使用貸借」で、自用地として100%で評価されます。固定資産税程度の地代を払っていても同じです。「貸しているから下がる」は、有償で第三者に貸している場合の話です。小規模宅地の特例の可否は別途税理士に確認してください。
相続開始時にアパートの3室が空室でした。全部自用地扱いですか?
土地全体が自用地になるわけではありません。入居中の部屋に対応する部分は減額され、空室分だけ賃貸割合が下がる計算です。空室が一時的で募集を続けていたなら、賃貸中として扱える可能性もあります。募集広告や管理会社の記録を集めて税理士に相談してください。
アパートの敷地の一部を、入居者以外に月極駐車場として貸しています。
外部に貸す駐車場は自用地として評価します。入居者専用なら貸家建付地に含められます。混在する場合は面積で区分し、外部向け駐車場に舗装などの構築物があれば、その部分は小規模宅地の特例の対象になり得ます。
親族に相場より安い家賃で貸している貸家の敷地は、貸家建付地になりますか?
相場の半額程度以上で契約の実態があれば貸家建付地として扱われることが多いですが、固定資産税や維持費程度の低額なら「使用貸借」として自用地評価です。親族間の低額な賃貸は厳しく見られ、契約書・振込・確定申告の実態がないと否認されます。相場に近い家賃で契約し、記録を残してください。
まとめ
貸している土地の評価は貸し方で決まります。貸家建付地(自分のアパートを貸す)は「自用地×(1−借地権割合×0.3×賃貸割合)」で満室なら2割前後減、貸宅地(借主が建物を建てる)は「自用地×(1−借地権割合)」で大幅減。賃貸割合は相続開始時の入居状況で決まり、一時的な空室は募集の記録があれば賃貸中とみなせることも。親族に無償・低額で貸す使用貸借は自用地評価で下がらない。自宅・駐車場との用途区分を面積で行い、貸付事業用として小規模宅地の特例と重ねて使えます。
財産目録を、無料でつくりませんか
貸し方・相手・賃貸割合・地代を書き出せば、評価の区分が正しく決まります。財産目録の下書きを画面のステップに沿って無料でつくれます。
あわせて読みたい
この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。