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生前の備え

尊厳死宣言書とは?書き方・文例・公正証書にする方法|延命治療への意思を確実に残すために

公開日 2026年8月16日 ・ 更新日 2026年8月16日 ・ 9分で読めます

「回復の見込みがないなら、管につながれてまで生かされたくない」。そう考えていても、いざその場面が来たとき、本人はもう意思を伝えられません。決断を迫られるのは家族です。人工呼吸器を外すかどうか、胃ろうを造るかどうか――愛する人の生死に関わる判断を、本人の意思がわからないまま背負う。これは家族にとって、生涯残る重荷になり得ます。

尊厳死宣言書(リビングウィル)は、この場面に備えて、終末期の医療についての自分の意思をあらかじめ書面にしておくものです。この記事では、①書面の効力と限界を正直に、②書くべき内容と文例、③公正証書にする方法、④そして書面以上に大切な「家族・医師への伝え方」まで解説します。

尊厳死宣言書の効力:できること・できないこと

尊厳死宣言書を作って終わりにしない3ステップ。作成する、家族・かかりつけ医と共有する、終末期に家族が医師へ提示する
図:尊厳死宣言書 ― 作って終わりにしない3ステップ。もっとも重要なのは共有すること。誰も知らなければ意思は届きません。

できること

  • 本人の意思の明確な証拠を残せる:終末期医療の方針決定において、医療現場は本人の意思を最大限尊重する方向で運用されており(厚生労働省のガイドラインも本人の意思決定を基本としています)、書面はその最も強い手がかりになります
  • 家族の決断の重荷を軽くできる:「本人がこう書き残していた」という事実は、家族が方針に同意する際の、そして後悔しないための支えになります
  • 家族間の意見対立を防げる:延命をめぐる兄弟間の対立は珍しくありません。本人の書面は議論の基準点になります

できないこと(限界)

  • 医師への法的な強制力はない:日本には尊厳死を直接定めた法律がなく、宣言書があっても、治療方針の最終判断は医療現場に委ねられます
  • 安楽死(積極的に死期を早める行為)とは全く別物:宣言書が扱うのは、過剰な延命措置の差し控え・中止の希望です
  • 救急の現場では間に合わないことがある:搬送時に書面の存在が伝わらなければ、原則どおり救命措置が行われます。だからこそ「共有」が生命線です

書くべき内容と文例

決まった様式はありませんが、実務では次の要素で構成します。

  1. 宣言の前提:「私が回復の見込みがない末期状態に至ったとき」という適用場面の限定(この限定があることで、治る病気の治療拒否と誤解されるのを防ぎます)
  2. 希望する・しない措置:延命のみを目的とした措置(人工呼吸器・心肺蘇生・胃ろう等の人工栄養など)は望まない/苦痛を和らげる緩和ケアは十分に行ってほしい、など具体的に
  3. 家族・医療者への免責の意思:「私の要望に従ってくれた家族と医療関係者に深く感謝し、その行為の責任は私自身にあります」という一文(従う側の心理的・法的負担を軽くします)
  4. 宣言が本人の自由意思によること・撤回の自由:いつでも撤回・変更できることを明記
  5. 日付・住所・氏名・押印

本文の文例(中核部分)

「私〇〇〇〇は、私の傷病が現代の医学では不治の状態にあり、既に死期が迫っていると担当医を含む複数の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。ただし、私の苦痛を和らげるための緩和医療は十分に行ってください。この宣言は私の精神が健全な状態にあるときに、私自身の自由な意思によって行うものです。」

家族と同居の方へ:内容を書く前に、一度家族と話すことをおすすめします。書面は「突きつける」ものではなく「話し合いの結論を形にする」ものであるとき、最もよく機能します。話し合いのきっかけには、エンディングノートの医療の項目が使いやすい入口になります。

公正証書にする方法と費用

私文書でも意思表示としての意味はありますが、より確実にしたい場合は尊厳死宣言公正証書にする方法があります。

  • 何が変わるか:公証人が本人の意思と判断能力を確認したうえで作成するため、「本当に本人の意思か」「書かされたのでは」という疑義を封じられます。医療現場への提示力も上がります
  • 作り方:下書き(当サイトのツールで作成可)を持って公証役場へ相談 → 公証人が文面を整え、本人が出頭して作成
  • 費用:公証人手数料は1万数千円程度+用紙代が目安(正確な金額は公証役場に確認を)
  • 私文書のままにする場合は、少なくとも自書の署名+押印とし、可能なら作成時の判断能力を示す資料(医師の診断書等)を添えると疑義に強くなります

いちばん大切なこと:共有の設計

この分野の残念な実話は、「書いてあったのに、誰も知らなかった」です。書面は提示されて初めて機能します。

  1. 家族に渡す:原本の保管場所を伝え、写しを配偶者・子に渡す
  2. かかりつけ医に伝える:診療録に意思を記録してもらえれば、救急時にも参照されやすくなります
  3. 入院・施設入所時に提出する:人生会議(ACP:本人・家族・医療者で繰り返し話し合うプロセス)の資料として活用
  4. エンディングノートに存在と保管場所を記載する:ノート→宣言書という発見経路を作る
  5. 定期的に見直す:考えは変わってよいものです。日付を更新して作り直せば、常に「最新の意思」として扱われます
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この記事の構成要素を満たした下書きを作成できます(無料でご利用いただけます)。あわせて、家族との話し合いの入口にはエンディングノートツール、亡くなった後の事務の備えには死後事務委任契約書ツールをどうぞ。

よくある質問(FAQ)

尊厳死宣言書を書いたら、救急車を呼んでも治療してもらえなくなりますか?

いいえ。宣言書が対象とするのは「回復の見込みのない末期状態」に限られ、治る見込みのある傷病の治療には影響しません。その限定を書面に明記することが大切です。

家族が反対しています。書けますか?

書面の作成自体は本人の自由です。ただし実際の場面で家族が強く反対すると、医療現場は慎重にならざるを得ません。時間をかけてでも対話を重ねることが、意思の実現可能性を最も高めます。

エンディングノートに書くのと何が違いますか?

ノートの医療欄は「考えの共有」に適し、宣言書は「独立した意思表示の書面」として提示力に優れます。ノートで家族と話し合い、結論を宣言書にする、という二段構えが理想です。

一度書いたら撤回できますか?

いつでも撤回・書き直しができます。撤回の自由は宣言書自体に明記しておきましょう。公正証書の場合も、新しい意思表示で従前のものを撤回できます。

まとめ:書面は、家族への最後の思いやり

  • 尊厳死宣言書は、終末期の延命措置についての意思を残す書面。法的強制力はないが、本人意思の最も強い証拠になる
  • 適用場面の限定・緩和ケアの希望・家族と医療者への免責が、内容の3つの柱
  • 確実性を高めるなら公正証書化(1万数千円程度〜)
  • 書くこと以上に、家族・医師と共有することが機能の条件

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、医療上の判断について助言するものではありません。終末期医療の方針は、ご本人・ご家族と医療チームでの話し合い(ACP)を通じて決定されます(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。