相続税の税務調査|入られやすい家・時期・当日何を見られるか
申告を終えて1〜2年たった秋、税務署から「申告内容を確認したい」と電話が入る——これが相続税の税務調査の始まりです。相続税は申告した家の1割前後に調査が入り、その8割超で申告漏れが指摘されるといわれ、他の税目より「入られやすく、当たりやすい」税金です。
この記事では、どんな家に、いつ、どんな形で調査が来て、当日何を聞かれ、何を見られるのかを整理します。名義預金やタンス預金がどう見つかるかは「タンス預金と名義預金は相続でバレる?」に譲り、ここでは調査そのものの流れと備え方に絞ります。
①実地調査は申告件数の1割前後、簡易な接触を含めると2割程度がめやす(年度で変動)。追徴になる割合は8割超 ②入られやすいのは、遺産が大きい・生前の預金の動きが大きい・不動産の評価が難しい・税理士の関与や書面添付がない・無申告の家 ③時期は申告の翌年〜翌々年の8〜11月が多く、事前に電話がある任意調査。午前は故人と家族の聞き取り、午後は通帳・印鑑・貸金庫の現物確認 ④備えは申告前が本番。財産を漏れなく洗い出し、過去10年の入出金を説明でき、名義預金は申告に含める。当日は正直に答える
どのくらいの家に入るのか——確率とペナルティのめやす
国税庁の公表では、相続税の実地調査は申告件数に対しておおむね1割前後。電話や文書で申告漏れを尋ねる「簡易な接触」を含めると、申告した家の2割程度が何らかの確認を受ける計算です(割合は年度で変動します)。
実地調査に入った家の8割超で申告漏れが見つかり、中心は名義預金と生前の出金です。ペナルティは、見落としなら過少申告加算税(原則10〜15%)、隠していたと判断されれば重加算税(35〜40%)で、本税と延滞税が上乗せされます。無申告なら無申告加算税、悪質なら重加算税の対象です。
入られやすい家と、調査が来る時期
| 入られやすい家の特徴 | 税務署が見ている理由 |
|---|---|
| 遺産総額が大きい | 2〜3億円を超えると優先度が上がる。申告漏れの額も大きくなりやすい |
| 生前の預金の動きが大きい | 亡くなる数年前からの多額の出金は、現金化・名義変更の疑い。故人と家族の口座は過去10年分を照会される |
| 家族の資産が収入に比べて多い | 専業主婦の配偶者や学生の孫に高額の預金があると名義預金を疑う |
| 不動産・非上場株の評価が難しい | 評価の誤りが起きやすい |
| 税理士の関与・書面添付がない | 自分で申告した家は確認の必要性が高いと判断される |
| 無申告 | 基礎控除を超えていそうな家は、不動産・金融資産の情報から把握される |
時期は申告した翌年か翌々年の8〜11月が中心——税務署の事務年度(7月始まり)の前半に、異動を終えた調査官が動くためです。申告から3年を過ぎて連絡がなければ可能性はかなり下がります(時効は原則5年、悪質な場合7年)。
当日の流れ——午前の聞き取りと午後の現物確認
相続税の調査は原則任意調査で、事前に電話で日程を調整します。税理士に申告を頼んでいれば税理士に連絡が入り、立ち会ってもらえます。場所は故人の自宅か相続人の自宅、調査官2人で1日が一般的です。
- 午前:聞き取り——故人の経歴・収入、趣味、病歴と介護、生活費の出どころ、誰が財産を管理していたか、相続人それぞれの職業・収入・預金額。雑談に見える質問の一つひとつが「財産はどこにあるべきか」の推定材料です
- 午後:現物確認——通帳・印鑑・保険証券・権利証・貸金庫の鍵・手帳や日記・金庫の中身。印鑑は朱肉をつけずに押して「最近使ったか」を見ることもあります。家族名義の通帳も求められます
- 終了後——後日指摘の説明があり、納得すれば修正申告、納得できなければ更正処分を受けて不服申立ての道があります
心得は一つ。わからないことは「わかりません」と答えること。その場の推測や辻褄合わせは、後で事実と食い違うと「虚偽の答弁」と受け取られ、重加算税の根拠にされかねません。
備え方——申告前が本番、当日は正直に
備えは、連絡が来てからではなく申告の段階で決まります。
- 財産を漏れなく洗い出す——預貯金・有価証券・保険・不動産・貴金属・貸付金まで一覧(財産目録)にする。「知らなかった」は通りにくい
- 過去10年の入出金を説明できるようにする——多額の出金の使途(介護費・改築・贈与)をメモと領収書で残す
- 名義預金は申告に含める——家族名義でも実質が故人の財産なら相続財産。入れておけば「隠した」にはならない
- 書面添付制度を使う——税理士の確認書面があると、調査前の意見聴取で済むことがあり、実地調査に至る割合が下がる傾向
- 申告後は資料を保管する——申告書の控え・評価の根拠・通帳・領収書を最低7年
調査は「隠す家」を探す仕組みです。裏を返せば、財産の全体像を最初に正直に出した家には、指摘するものがほとんど残りません。
調査に強い申告は、漏れのない財産の一覧から——預貯金・不動産・有価証券・保険・貸付金まで書き出した財産目録があれば、申告の抜けが減ります。画面のステップに沿って無料でつくれます。
財産目録をつくるよくある質問(FAQ)
税務署から調査の電話が来ました。断ることはできますか?
日程の調整はできますが、正当な理由なく拒み続けることはできません。調査官には質問検査権があり、拒否や虚偽の答弁には罰則もあります。「税理士の都合がつく日に」といった変更は通ります。連絡が来たら申告を頼んだ税理士に立ち会いを依頼し、自分で申告した場合はこの段階で税理士に相談する選択もあります。通帳と申告書の控えを手元に揃えておきましょう。
故人の古い通帳を処分してしまいました。不利になりますか?
税務署は金融機関に照会して過去10年程度の取引履歴を把握できるため、処分したこと自体で隠したとみなされるわけではありません。ただし多額の出金の使途を説明できないと、「相続人が受け取った現金」と推定されることがあります。金融機関で取引履歴を取り寄せ(有料)、出金の使途を思い出せる範囲でメモにしておくと、当日の説明が楽になります。「処分した」と正直に伝えて構いません。
調査で追徴になったら、税理士に責任を問えますか?
財産を伝えていなかった場合は相続人の責任で、税理士には問えません。一方、伝えた財産の評価や特例の判断を誤ったなど税理士側の過失が明らかなら、損害賠償の対象になることがあります。ただし賠償は加算税・延滞税が中心で、本税は本来払うべき税額なので対象外です。「申告漏れは依頼者の責任」と定める契約が多いため、依頼前に責任範囲を読んでおいてください。
相続人が別々に住んでいます。調査はどこに来ますか?
原則として故人が最後に住んでいた自宅で、誰も住んでいなければ、財産を管理していた相続人(多くは配偶者や長男)の自宅です。通帳・印鑑など「現物」がある場所が選ばれます。全員の同席は不要ですが、財産を管理していた人と申告書に署名した人は出席を求められます。事前に相続人同士で口裏を合わせるのではなく、「事実をそのまま答える」ことを確認しておくのが最善です。
まとめ
相続税の税務調査は申告した家の1割前後に入り、8割超で追徴が出る——遺産が大きい・預金の動きが大きい・税理士の関与がない・無申告の家が対象になりやすく、時期は申告の翌年〜翌々年の秋が中心です。当日は午前に聞き取り、午後に通帳・印鑑・貸金庫の現物確認。答えは正直に、推測はしない。本当の備えは申告前——財産を漏れなく洗い出し、出金の使途を説明でき、名義預金を申告に含めた家には、指摘するものがほとんど残りません。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。