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相続税の未成年者控除・障害者控除|引ききれない分は家族から
相続人の中に未成年の子や障害のある家族がいる場合、相続税には税額から直接差し引ける「未成年者控除」「障害者控除」があります。財産の評価を下げる特例と違い、計算した税額そのものを減らすため効果が大きく、しかも本人の税額から引ききれない分は親や兄弟の税額からも引けるという珍しい仕組みです。
この記事は相続税の2つの控除に絞ります。所得税の障害者控除(要介護認定で使えるもの)は「要介護なら使える障害者控除」、未成年の遺産分割の手続きは「未成年の相続人がいる遺産分割」をどうぞ。
①未成年者控除は「18歳になるまでの年数×10万円」、障害者控除は「85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円)」を、その人の相続税額から差し引く ②どちらも、法定相続人であること・財産を取得したこと・日本国内に住所があること(一部例外あり)が要件。遺言で財産を取得した孫など法定相続人でない人は使えない ③本人の税額から引ききれない分は、扶養義務者(配偶者・親・兄弟姉妹など)で同じ相続で財産を取得した人の税額から差し引ける ④過去の相続で同じ控除を使っていると、2回目は残額しか使えない。税額ゼロになる場合でも申告書に控除の記載が必要
2つの控除の仕組み——税額から直接引く
相続税の計算は、①財産を評価して課税価格を出す→②基礎控除を引いて総額を計算→③各人の取得割合で按分→④各人の税額に加算・控除を行う、という順で進みます(「相続税の計算方法」)。未成年者控除と障害者控除は④の段階で「税額」から直接引く控除です。
小規模宅地等の特例が「評価額を下げる」のに対し、こちらは「税額を減らす」ため、控除額100万円なら納める税金が100万円減る——この直接性が効果の大きさの理由です。
控除額の計算——年数の数え方と計算例
| 控除 | 計算式 | 計算例 |
|---|---|---|
| 未成年者控除 | (18歳−相続開始時の年齢)×10万円 | 12歳3か月の子:18−12=6年×10万円=60万円 |
| 障害者控除(一般障害者) | (85歳−相続開始時の年齢)×10万円 | 50歳の相続人:85−50=35年×10万円=350万円 |
| 障害者控除(特別障害者) | (85歳−相続開始時の年齢)×20万円 | 50歳の相続人:35年×20万円=700万円 |
年数の数え方がポイントです。1年未満の端数は切り上げ——12歳3か月なら「18−12歳3か月=5年9か月」を6年と数えます。障害者控除の「一般」「特別」の区分は、身体障害者手帳の等級(1・2級が特別)、精神障害者保健福祉手帳の等級(1級が特別)、療育手帳の判定などで決まります。手帳がなくても、要介護認定を受けた65歳以上の人で市区町村の「障害者控除対象者認定書」があれば対象です。
引ききれない分は扶養義務者から——最大の特徴
本人の税額が控除額に満たないことは珍しくありません。12歳の子の控除額が60万円で、その子の税額が20万円なら、40万円が余ります。この引ききれない40万円を、同じ相続で財産を取得した扶養義務者の税額から差し引ける——これが2つの控除に共通する最大の特徴です。
扶養義務者とは、配偶者・直系血族(親・祖父母・子)・兄弟姉妹と、家庭裁判所が指定した3親等内の親族。典型は父が亡くなり、母と未成年の子が相続するケース——子で引ききれない分を母の税額から引く形です。扶養義務者が複数いる場合は、その人たちの間で控除額を配分します(協議で決め、決まらなければ税額の割合で按分)。控除を最大限に活かすには、控除を持つ本人だけでなく、扶養義務者も財産を取得して税額が生じている必要があります。遺産分割で「子にはまったく財産を渡さない」と、控除自体が使えなくなる点にも注意してください。
要件と落とし穴——法定相続人・2回目の相続・申告
- 法定相続人であること——遺言で財産をもらった孫など、法定相続人でない人は使えません。相続放棄をした人が死亡保険金を受け取った場合は控除を使えます
- 財産を取得していること——取得額ゼロでは控除の出番がありません。少額でも取得させる分け方が控除を活かします
- 2回目の相続では残額だけ——過去の相続で未成年者控除・障害者控除を使った人は、当時の控除可能額から使った分を引いた残りが上限です。親を続けて亡くした場合に効いてきます
- 申告で記載する——控除で税額がゼロになる場合、申告義務は原則ありませんが、他の相続人が申告する場合は控除の計算書を添付します。手帳の写しや認定書が根拠資料です
障害のある相続人が財産を取得すると、財産管理という次の課題が生じます。成年後見や家族信託は「残された親の認知症への備え」も参考に。
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遺産分割協議書をつくるよくある質問(FAQ)
未成年者控除と障害者控除は両方使えますか?
両方の要件を満たす人は両方の控除を併用できます。10歳の特別障害者なら、未成年者控除80万円と障害者控除1,500万円(75年×20万円)を合わせて税額から引き、引ききれない分は扶養義務者の税額から差し引きます。本人の税額をはるかに超える控除額になることが多いため、扶養義務者側の税額まで含めて設計することが重要です。
相続開始後に障害者手帳を申請しました。控除は使えますか?
原則は相続開始時に手帳の交付を受けているか、交付申請中であることが要件です。ただし、相続税の申告期限までに手帳の交付を受け、相続開始時にすでに障害の状態にあったと医師の診断書などで示せる場合は、控除が認められる取り扱いがあります。要介護認定による障害者控除対象者認定書も同様に、認定の時点と障害の状態を確認されます。手帳や認定書の申請は早めに進め、税理士に相続開始時の状態を伝えてください。
孫を養子にしています。未成年者控除は使えますか?
養子は法定相続人なので、未成年であれば未成年者控除の対象です。ただし孫養子は相続税の2割加算の対象でもあるため、加算した後の税額から控除する形になります。また、相続税の基礎控除の計算では養子の人数に制限(実子がいれば1人まで)がありますが、未成年者控除の適用自体はこの制限とは別で、養子であれば使えます。養子縁組をしていない孫が遺言で財産を受け取った場合は、法定相続人ではないため控除は使えません。
控除のせいで税額がゼロになりました。申告は必要ですか?
未成年者控除・障害者控除は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例と違って申告が適用の要件ではありません。控除後の税額がゼロで、他の相続人にも税額がなければ申告義務はないとされています。ただし他の相続人に税額が生じる場合は全員で申告書を作り、控除の計算書を添付します。控除の残額を将来の相続で使うためにも計算の記録を残し、迷う場合は申告しておくのが無難です。
まとめ
相続税の未成年者控除・障害者控除は税額から直接引く控除——18歳・85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円)で、端数は切り上げ。最大の特徴は引ききれない分を配偶者・親・兄弟など扶養義務者の税額から差し引けることで、遺産分割では本人と扶養義務者の双方に財産を配分する設計が控除を活かします。法定相続人であること、2回目の相続は残額だけ、根拠資料は手帳や認定書。「子には渡さない」分け方は控除を捨てる分け方です。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。