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本人の意思確認書とは?家族信託・生前対策の「無効主張」と「使い込み疑い」を防ぐ書面

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 7分で読めます

本人の意思確認書とは、家族信託・生前贈与・遺言などの生前対策について、「本人が内容を理解し、自分の意思で決めた」ことをその時点で記録しておく書面です。

生前対策の紛争は、実行した時ではなく本人が亡くなった後や認知症が進んだ後に、「あれは親の意思ではなかった」「兄が言わせたに違いない」という形で噴き出します。そのとき本人はもう説明できません。意思確認書は、まだ語れるうちに本人の言葉を証拠として固定しておく、シンプルですが強力な防御策です。

この記事の要点

①生前対策の紛争は「本人が語れなくなった後」に起きる。意思確認書は本人の言葉を先に固定する証拠 ②書くべきは、日付・本人の言葉での目的と理解・質問への応答・中立的な立会人。利害関係者だけで作らない ③診断書(能力の証拠)・公正証書(手続きの証拠)と役割分担し、三点セットで争いの芽を摘む

なぜ必要か――紛争は「語れなくなった後」に来る

意思確認書が効く典型的な場面は2つあります。

  • ①契約の「無効主張」への備え。家族信託や贈与に不満を持つ相続人から、「契約時にはすでに認知症だった。無効だ」と主張されるケースです。契約時の本人の理解と意思を示す同時期の記録があるかどうかで、争いの展開は大きく変わります(家族信託の失敗事例
  • ②受託者・同居家族への「使い込み疑い」への備え。親の財産管理を担った子が、後から他の兄弟に「勝手にやった」「自分に有利に仕組んだ」と疑われるパターンです。「親自身がこの仕組みを望み、内容を理解していた」という記録は、管理を担う側の身を守る盾になります(兄弟がいる場合の受託者の決め方

とくに家族信託を専門家に頼まず進める場合、公証人による意思確認のプロセスが薄くなりがちです。自分たちで作るなら、なおさら意思の記録を厚くする――これが実務の鉄則です(家族信託を自分でやる方法)。

作るべきタイミング

  1. 生前対策の実行と同時。家族信託契約・贈与契約・遺言の作成日に合わせて作るのが基本形です。契約書と同日付の意思確認書は「その時点の意思」の証拠として最も自然です
  2. 家族会議で方針を決めたとき。契約前でも、本人が家族に方針を語った時点で記録する価値があります。会議の合意は家族会議合意書、本人の意思は意思確認書、と役割を分けて残します
  3. 判断能力がグレーになり始めたとき。軽度認知障害(MCI)や初期の認知症でも、内容を理解できるなら契約は可能な場合があります。グレーゾーンの時期こそ、医師の意見とセットで意思の記録を残す価値が最も高い場面です(判断能力の坂道と対策の締切

盛り込む項目と作り方

項目書き方のポイント
作成日・場所契約書と同日付が理想。日付のない書面は証拠価値が大きく下がる
対象となる行為「令和◯年◯月◯日付の家族信託契約」のように特定する
本人の言葉での目的「私が認知症になっても、長男が自宅を売って施設費用にあてられるようにしたい」など、本人の語り口のまま書く。定型文の写しでは弱い
内容の理解の確認「誰に何を託すか」「利益は誰のものか」等の質問と本人の応答を記録する
署名・押印本人の自署。可能なら日付も自書してもらう
立会人利益を受けない中立的な人(受託者以外の兄弟・専門家・ケアマネ等)の署名。作成時の様子のメモも添える
意思確認書の基本構成。「本人の言葉」と「中立的な立会人」が証拠価値の源泉です。

あわせて、作成時の動画・音声を残すのも有効です。本人が自分の言葉で目的を語る数分の動画は、書面を補強する生きた証拠になります。また、遺言に添える場合は、遺言本文とは別に気持ちや経緯を書く付言事項も同じ働きをします(付言事項の例文集)。

診断書・公正証書との役割分担

  • 医師の診断書・長谷川式などの検査結果:「その時期に判断能力があった」ことの医学的証拠。意思確認書とは証明する対象が違うため、代わりにはならず、併用が理想です
  • 公正証書:公証人が本人確認と意思確認をして作る文書で、手続きとしての信頼性を担保します。家族信託契約や遺言はできる限り公正証書化すべきです(公正証書遺言の作り方)。ただし公証人が確認するのは作成時の短時間であり、日頃の意思や経緯まで記録されるわけではありません
  • 意思確認書:上の2つの隙間を埋める、「なぜ・何を望んだか」という意思の中身の記録です。三点セットが揃えば、無効主張にも使い込み疑いにも多面的に反論できます
意思確認書は「万能の護符」ではありません

判断能力の有無は、最終的に医学的所見・日常の言動・契約の複雑さなどから総合的に判断されます。書面が1枚あれば絶対に争われない、というものではありません。だからこそ、疑いの余地が生まれそうな事案(財産が大きい、家族関係に緊張がある、判断能力がグレー)では、専門家と公証人の関与のもとで進めることを強くおすすめします。

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よくある質問(FAQ)

意思確認書があれば、後から契約を無効にされることはありませんか?

無効主張を完全に封じる効力まではありません。判断能力は総合判断されるためです。ただし本人の言葉・日付・中立的な立会人の揃った意思確認書は有力な証拠となり、診断書・公正証書との三点セットで争いの芽を大幅に減らせます。

医師の診断書があれば、意思確認書は不要ですか?

役割が違います。診断書は能力の証拠、意思確認書は意思の中身の証拠です。能力があっても「騙されて署名させられた」と争われることはあり、その反証になるのは意思確認書のほうです。両方あるのが理想です。

意思確認書は誰が作成し、誰が立ち会うべきですか?

本文は本人の言葉をもとに作成し、本人が署名します。利益を受ける人(受託者・受贈者)だけで作った書面は疑いを晴らす力が弱いため、契約で利益を受けない中立的な立会人(他の兄弟・専門家・ケアマネ等)を入れてください。

すでに軽い認知症の診断がある親の意思確認書を作っても意味はありますか?

意味はあります。認知症の診断=契約能力ゼロではなく、軽度なら内容を理解して契約できる場合があります。グレーゾーンこそ記録の価値が高い場面ですが、必ず医師の意見と専門家・公証人の関与のもとで慎重に進めてください。

まとめ

  • 意思確認書=「本人が理解し、望んで決めた」ことを本人が語れるうちに固定する証拠書面
  • 効く場面は、契約の無効主張への備えと、財産管理を担う家族への使い込み疑いへの備え
  • 本人の言葉での目的・質問応答・日付・中立的な立会人が証拠価値の源泉。動画の併用も有効
  • 診断書(能力)・公正証書(手続き)・意思確認書(意思の中身)の三点セットで守りを固める

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法的アドバイスではありません(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。判断能力の評価や書面の証拠価値は個別の事情によります。重要な契約の前には司法書士・弁護士等の専門家および医師にご相談ください。