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相続発生後

遺産分割協議書のケース別記載例|自動車・株式・代償分割の書き方とその後の手続き

公開日 2026年8月16日 ・ 更新日 2026年8月16日 ・ 10分で読めます

遺産分割協議書の基本の書き方(全員参加・実印・後日判明財産の条項など)は、親記事「遺産分割協議書の書き方とひな形」で解説しました。この記事はその実践編です。現場で差し戻されやすい3つの財産――自動車・株式・代償分割について、そのまま使える記載例と、協議書を書いた後に待っている手続きまでをセットで解説します。

協議書は「書いて終わり」ではなく、運輸支局や証券会社という提出先の審査に通ってはじめて仕事をする書類です。財産の特定が曖昧だと「どの車ですか」「どの銘柄ですか」と差し戻され、相続人全員の実印をもう一度集め直すことになりかねません。先に提出先の要求を知ってから書く――これがこの記事の軸です。

全体像:財産別・協議書のあとに待つ手続き

遺産分割協議書に書いた後に待つ手続きを自動車・株式投資信託・代償分割の3ケースで示す図。それぞれ運輸支局、証券会社、振込という提出先がある
図:協議書に書いた後に待つ手続き ― 財産別の提出先。記載が曖昧だと各提出先で差し戻されます。

ケース① 自動車の記載例と名義変更

記載例:車検証を「そのまま」書き写す

「第〇条 相続人〇〇〇〇は、次の自動車を取得する。 車名 トヨタ/登録番号 品川300あ12-34/型式 〇〇〇-〇〇〇〇/車台番号 〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇〇/原動機の型式 〇〇-〇〇」

特定の決め手は登録番号(ナンバー)と車台番号です。この2つは必ず車検証(自動車検査証)の表記どおりに書き写してください。「父の白いプリウス」のような書き方では手続きできません。

その後の手続き:運輸支局での移転登録

  • 提出先:新しい所有者の住所を管轄する運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会で、必要書類も普通車より簡易です)
  • 主な必要書類(普通車):車検証・協議書(または後述の簡易方式)・故人の死亡と相続人がわかる戸籍等・取得する相続人の印鑑証明書・車庫証明(保管場所が変わる場合)
  • 期限の目安:法律上の厳格な期限はありませんが、名義が故人のままだと売却も廃車も任意保険の更新もできません。自動車税の納税義務者の変更も含め、早めの手続きを

知っておくと楽になる制度:査定額100万円以下の普通車は、「遺産分割協議成立申立書」という簡易な書式(取得する相続人1人の実印のみで可)で名義変更できる運用があります。査定書等で100万円以下を示せる古い車なら、全員の実印を集める負担を大きく減らせます。軽自動車はそもそも協議書・印鑑証明が不要な扱いです(申請依頼書等で可)。

ケース② 株式・投資信託の記載例と移管

記載例:証券会社と口座で特定する

「第〇条 相続人〇〇〇〇は、被相続人名義の次の有価証券を取得する。 〇〇証券株式会社 〇〇支店(口座番号1234567)に預託されている有価証券のすべて」

銘柄が多い場合は、口座を特定して「すべて」と書くのが実務の定石です(銘柄・株数は変動し得るため)。特定の銘柄だけ分ける場合は「〇〇株式会社 普通株式 100株」のように銘柄・数量まで書きます。

その後の手続き:証券会社での相続手続き

  • 流れ:証券会社へ連絡→相続手続書類の取り寄せ→協議書・戸籍等の提出→取得する相続人名義の証券口座へ移管相続人が同じ証券会社に口座を持っていない場合、新規開設が必要です)
  • 現金で分けたい場合も、いったん相続人の口座へ移管してから売却するのが原則です。「代表者が換価して分配する」と協議書に書いておく方式も使えます
  • 見落とし注意:単元未満株(端株)と、証券会社を通さない特別口座の株式。株主名簿管理人(信託銀行)への照会で発見できることがあります
  • 非上場株式(自社株等)は評価も手続きも別世界です。税理士・司法書士への相談を推奨します

ケース③ 代償分割の記載例――書き方を間違えると贈与税

代償分割とは、たとえば自宅(2,000万円)を長男が単独で取得する代わりに、長男が二男へ差額調整のお金(代償金)を支払う分け方です。不動産が遺産の大半を占めるご家庭の定番手法ですが、書き方に最重要の注意点があります。

記載例

「第1条 相続人 甲野一郎は、次の不動産を取得する。(不動産の表示・登記事項証明書どおり) 第2条 甲野一郎は、第1条の不動産を取得する代償として、相続人 甲野二郎に対し、金500万円を令和〇年〇月〇日限り、同人の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。」

最重要ポイント

「代償として支払う」ことを協議書に明記しないまま500万円を渡すと、単なる兄弟間の贈与とみなされ、贈与税(この例で約48万円超)が課されるリスクがあります。代償分割は必ず、①協議書に代償金条項を明記する、②支払期限と支払方法(振込)まで書く、③記録が残る振込で支払う、の3点セットで行ってください。

代償分割の実務チェックポイント

  • 支払能力の確認を先に:代償金を払えず約束が破綻すると、協議のやり直しはできず(再分配は贈与課税のリスク)、未払金の請求問題になります。分割払いにする場合は期限・回数も明記を
  • 金額の根拠を共有:不動産の評価(固定資産税評価・査定額など)を全員で共有してから金額を決めると、後の不満を防げます
  • 相続税の計算では、代償金を払った側は課税価格から控除、受け取った側は加算されます。申告が必要なご家庭は税理士に代償分割の旨を必ず伝えてください

3ケース共通の実務Tips

  • 提出先が複数(車+証券+銀行+登記)になるなら、法定相続情報一覧図を最初に取得。戸籍の束の使い回し待ちが消えます
  • どのケースも「後日判明した遺産は〇〇が取得する」の条項を忘れずに(親記事の7要素参照)
  • 協議書は財産ごとに分けて複数作ることも可能です(例:車だけ先に1枚)。急ぐ手続きがある場合の実務テクニックですが、全体の分け方と矛盾しないよう注意してください
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よくある質問(FAQ)

ローンが残っている車はどう書けばいいですか?

車検証の所有者欄がディーラーやローン会社になっている場合、その車はまだ故人の所有ではなく、ローンの処理(完済または承継)が先です。所有権留保の解除後に通常の相続手続きとなります。信販会社へ早めに連絡してください。

車をすぐ売却したい場合も、いったん相続人名義にするのですか?

はい、原則としていったん相続人へ移転登録してから売却します。買取業者が相続手続きごと代行してくれるサービスもあるため、売却前提なら業者に相談するのが早道です。

株の評価額はいつ時点のものを使うのですか?

遺産分割の話し合いでは合意した時点の時価を使うのが一般的です。一方、相続税の計算では死亡日の終値等を基準とした別のルールがあります。分割の基準と税務の基準は別物と覚えておいてください。

代償金を分割払いにしてもらったのに、途中で払われなくなりました。

協議書に基づく金銭請求(民事)の問題になります。協議自体を解除してやり直すことは原則できないとされているため(判例)、支払期限を過ぎたら早めに内容証明等での請求を。だからこそ、支払能力の確認と期限の明記が契約前の生命線です。

まとめ

  • 車は登録番号+車台番号を車検証どおりに。100万円以下は簡易方式、軽自動車はさらに簡易
  • 株式は証券会社・口座で特定し「すべて」方式が実務的。移管先の口座開設を忘れずに
  • 代償分割は「代償として支払う」の明記+期限+振込の3点セット。書き漏れは贈与税に直結
  • 提出先が多いなら法定相続情報一覧図を先に取得して並行処理

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供です。税務(代償分割・株式の評価)は税理士に、個別の手続きは各提出先にご確認ください(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。