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再婚家庭の相続対策に家族信託|後妻の生活を守り、最後は先妻の子へ

公開日 2026年8月25日 ・ 更新日 2026年8月25日 ・ 8分で読めます

再婚した夫が抱える願いは、たいてい2つ同時にあります——今の妻に、この家で最後まで暮らしてほしい。そして最後は、先妻との子に自宅を戻したい。ところがこの2つ、遺言では両立できません

遺言で決められるのは1代先まで。妻に相続させた自宅の行き先は、妻の相続の問題になり、親子関係のない先妻の子には原則として渡りません。この隙間を埋めるのが家族信託です。相続権の基本と生前対策全般は「再婚家庭の相続は「前妻の子」も相続人」、制度そのものは「受益者連続型信託とは?」に委ね、ここではケースの設計に絞ります。

この記事の要点

①遺言の限界は1代先まで。妻に残した自宅は、妻の死後は妻の親族側へ移り、先妻の子には戻らない ②受益者連続型の信託なら「妻の次は先妻の子へ」を契約で指定できる ③ただし遺留分は消えない。先妻の子に一定の財産が渡る設計と、生前の説明をセットにしないと、仕組みだけでは揉める

なぜ再婚家庭は難しいのか

相続人は、後妻先妻の子です(先妻自身は相続人ではありません)。両者は法律上、親子ではありません。ここから2つの難所が生まれます。

ひとつは協議の難しさ——面識が薄い、あるいは感情的な経緯がある者同士で、自宅という分けにくい財産を分ける話し合いをしなければなりません。もうひとつが自宅の行き先です。自宅を後妻に相続させれば当面の住まいは守れますが、後妻が亡くなればその自宅は後妻の親族へ移り、先妻の子には戻りません。逆に先妻の子に相続させれば、後妻の住まいが不安定になります。

遺言と信託の届く範囲の違い

自宅の行き先:遺言と信託で届く範囲が違う 遺言の場合 本人(夫) 後妻へ 後妻の親族へ(指定できない) 受益者連続型の信託の場合 本人(夫) 後妻が受益者 次の受益者=先妻の子(指定可) ※信託には期間の制限(30年ルール)があります。詳細は受益者連続型信託の記事へ。
図:遺言は1代先が限界。信託なら「後妻の次は先妻の子」という2代先の承継まで契約で指定できる。

設計例——自宅を軸にした組み立て

典型的な形はこうです。委託者:本人/受託者:財産管理を担う子など/当初受益者:本人/本人の死後の受益者:後妻/後妻の死後の受益者:先妻の子。信託財産は自宅と、後妻の生活費に充てる預金の一部。

この設計で得られるものは3つあります。

  • 後妻の住まいが守られる——受益者として自宅に住み続けられ、遺産分割の協議に晒されません
  • 自宅が先妻の子へ戻る——後妻の死後の行き先を、本人が生前に決められます
  • 本人の認知症にも備わる——受託者が管理するため、判断能力が落ちても自宅の管理や必要に応じた売却が止まりません(できなくなること一覧

なお、後妻の住まいを守る手段としては配偶者居住権もあります。住む権利だけを確保するなら配偶者居住権、その先の承継まで決めたいなら信託——目的で使い分けてください。

失敗しやすい3点と、生前の説明

  1. 遺留分を無視した設計——先妻の子の取り分をゼロに近づけると紛争が起きます。信託していない預金や生命保険金で調整するのが実務です(遺留分とは
  2. 受託者の選び方——後妻・先妻の子のどちらが担っても不信が生まれやすい構図です。支出ルールを契約に明記し、信託監督人を置くなどの補強を
  3. 期間の制限——受益者連続型には期間の制限(いわゆる30年ルール)があります。孫の代まで際限なく指定できるわけではありません

そして最大の要素が生前の説明です。再婚家庭の紛争は金額より「知らされていなかった」という感情から始まります。全員に説明できないなら、せめて理由を付言事項として書き残す——設計の巧拙より、この一手のほうが結果を左右することがあります(付言事項の例文集)。

設計の前に、財産を1枚に——自宅の評価、預金、保険。全体像が見えて初めて、後妻の生活費と先妻の子への配分を数字で設計できます。財産目録は無料・登録不要です。

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よくある質問(FAQ)

遺言だけでは、なぜ再婚家庭の問題が解決しないのですか?

遺言で決められるのは、自分の財産を誰に渡すかという1代先までだからです。自宅を後妻に相続させることはできても、その後妻が亡くなったときに自宅が誰へ行くかは、後妻自身の相続の問題になります。後妻と先妻の子の間に親子関係はないため、原則として先妻の子には渡らず、後妻の親族へ移っていきます。「妻に住まわせたいが、最後は自分の子に戻したい」という願いは、遺言では届きません。ここを埋めるのが受益者連続型の信託です。

信託を使えば、先妻の子の遺留分も気にしなくてよくなりますか?

なりません。遺留分は信託を使っても消えないと考えて設計するのが実務の前提です。信託財産や受益権をめぐって遺留分の対象になり得るという指摘があり、裁判で争われた例もあります。したがって、先妻の子の取り分をゼロに近づける設計は、かえって紛争を招きます。実務では、生命保険金や信託していない預金を先妻の子へ渡す設計を組み合わせ、遺留分に相当する程度の財産が渡るように調整します(遺留分とは)。

受託者は誰に頼むのがよいですか?後妻ですか、先妻の子ですか?

難しい判断ですが、目安はあります。後妻が受託者になると、先妻の子から財産管理の中身を疑われやすく、後妻本人が受益者でもある場合は立場が重なって不信を招きがちです。一方、先妻の子が受託者になると、後妻の生活費の支出が滞るのではという不安が生じます。実務では、支出のルールを契約に具体的に書き込む、信託監督人を置いて第三者の目を入れる、といった補強で不信を抑えます。誰を選ぶにせよ、選定理由を家族に説明できることが重要です。

本人が元気なうちに、家族へ話しておくべきですか?

可能なら話しておくべきです。再婚家庭の紛争は金額よりも「知らされていなかった」という感情から始まります。亡くなった後に初めて信託の存在を知れば、後妻も先妻の子も、自分に不利な仕組みが密かに作られたと受け取りがちです。全員を同席させるのが難しければ、それぞれに個別に説明し、なぜこの形にしたのかを付言事項として書き残す方法もあります。設計の巧拙より、説明の有無のほうが結果を左右することは少なくありません。

まとめ

再婚家庭の願い——妻に住み続けてほしい、最後は自分の子へ戻したい——は、遺言では届きません。1代先までしか決められないからです。受益者連続型の家族信託なら、「後妻の次は先妻の子」という2代先の承継を契約で指定できます。ただし遺留分は消えないため、先妻の子へ一定の財産が渡る設計を組み合わせること。そして受託者の選び方と、生前の説明。仕組みは紛争を防ぐ土台にはなりますが、納得を作るのは説明のほうです。両方そろって初めて、この設計は機能します。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務の個別助言を行うものではありません。受益者連続型信託と遺留分の関係には議論があり、設計の適否は個別の事情により異なります。実行にあたっては必ず専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)