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家族信託と遺言はどっちが優先?重なったときのルールと「両方使う」正しい設計

公開日 2026年8月16日 ・ 更新日 2026年8月16日 ・ 9分で読めます

「家族信託で財産の行き先まで決めたなら、遺言書はもういらないのでは?」「先に書いた遺言と信託の内容が食い違ったら、どっちが勝つの?」――信託を検討し始めた方が必ずぶつかる疑問です。

結論からお伝えします。①信託と遺言は「どっちが強いか」ではなく守備範囲が違う道具です。②信託した財産には信託契約(帰属権利者の定め)が優先し、遺言で別のことを書いても及びません。③遺言が働くのは信託していない財産で、ここが空白のままだと遺産分割協議が必要になります。④だから実務の正解は「どっちか」ではなく信託+遺言のセットです。

守備範囲マップ:信託財産と信託外財産

家族信託と遺言のどちらが優先されるかを示す図。信託した財産には信託契約が優先し、信託していない財産には遺言書が働く
図:家族信託と遺言 ― どちらが優先されるか。結論は「どっちか」ではなく守備範囲が違うということです。

信託した財産(自宅・信託口口座の金銭など)は、法律上もう「本人の相続財産」ではなく「信託財産」として扱われます。本人が亡くなると、その行き先は遺言でも遺産分割協議でもなく、信託契約に定めた帰属権利者の条項で決まります。これが「信託が優先」と言われる正体です。

一方、信託に入れていない財産――年金が貯まる本人名義の口座、入れ忘れた預金、車、貴金属など――は通常の相続財産です。遺言がなければ遺産分割協議(全員の実印)が必要になり、「信託まで組んだのに、残りの預金で協議が発生した」という本末転倒が起きます。信託外財産の受け皿として、遺言は依然として必要なのです。

重なった(抵触した)ときの優先ルール:時系列で決まる

ケース結論
先に遺言→後から信託契約抵触する部分は後の信託が優先(遺言のその部分は撤回とみなされる・民法1023条の考え方)。「自宅は二男へ」の遺言後に自宅を信託し帰属権利者を長男にすれば、長男が取得
先に信託→後から遺言信託財産には遺言は及ばない。後から遺言で「信託した自宅は二男へ」と書いても、原則として無効(信託契約の変更手続きによるべき)
同時に作る(推奨)信託契約に信託財産の行き先を、遺言に信託外財産の行き先を書き分ける。抵触が構造的に起きない
後から気が変わって信託財産の行き先を変えたい場合は、遺言の書き直しではなく信託契約の変更が正しい手続きです。
重要な注意

後から気が変わって信託財産の行き先を変えたい場合は、遺言の書き直しではなく信託契約の変更(委託者・受託者・受益者の合意)が正しい手続きです。そして本人の判断能力が失われると、変更の合意自体ができなくなります。信託の承継設計は「最初に決め切る」意識で臨んでください。

「両方使う」設計の実務

  1. 信託契約大きな財産(自宅・老後資金)を入れ、帰属権利者を指定(例:残余財産は長男へ)します。
  2. 遺言書信託外財産の包括的な受け皿を書きます。「本遺言書に記載のない一切の財産(信託財産を除く)を長男に相続させる」の一文が定番です。あわせて遺言執行者の指定を行います。
  3. 整合チェック:信託の帰属権利者と遺言の受取人の全体バランスが遺留分を侵害していないかを確認します(侵害があると死後の金銭請求リスクがあります)。
  4. 作る順番:同時が理想です。公正証書は同日にまとめて作成できるため、信託+遺言(+任意後見)を同日にが効率的です。
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家族信託契約書ツールと遺言書ツール(いずれも無料・登録不要)で、この記事の書き分けどおりのセット下書きが作れます。信託契約側の帰属権利者、遺言側の「記載のない一切の財産」条項、どちらもステップに含まれています。

よくある質問(FAQ)

家族信託だけで、遺言を書かないとどうなりますか?

信託財産は帰属権利者へ移りますが、信託外財産について遺産分割協議が必要になります。年金口座の残高だけでも協議は発生します。1枚の遺言で防げる手間です。

帰属権利者の定めを入れなかった信託はどうなりますか?

信託法の順序(委託者またはその相続人等)に従って帰属が決まりますが、解釈をめぐって揉めやすい状態です。契約に必ず帰属権利者(+予備)を定めてください。

遺留分は信託財産には及ばないのですか?

及び得ます。信託を使えば遺留分を回避できる、という理解は誤りで、遺留分対策目的の信託の効力が裁判で争われた例もあります。承継の全体設計で遺留分に配慮してください。

どちらか一つしか作れないなら、どちらを優先すべきですか?

目的次第です。生前の凍結対策が急務なら信託(遺言は生前に何の効力もありません)、死後の承継だけが目的なら遺言で足ります。ただし両方の下書きは無料で作れるため、「一つしか作れない」状況はほぼありません。

まとめ

  • 信託財産=信託契約が優先、信託外財産=遺言の領域。守備範囲が違う
  • 抵触は時系列で「後の信託が先の遺言に勝つ」。信託後の変更は遺言ではなく変更契約で
  • 信託外財産の受け皿として遺言は必要。「記載のない一切の財産」条項+執行者指定を
  • 同日にセットで作るのが、抵触も空白も生まない最適解

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供です。抵触・遺留分が絡む設計は専門家のレビューを受けてください(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。