相続税を払いすぎたかも|更正の請求で取り戻す・5年の期限
相続税の申告が終わって数年——「土地の評価はもっと下げられたのでは」「あの葬式費用を引き忘れていた」。払いすぎに気づいたとき、申告期限から5年以内なら「更正の請求」で取り戻すことができます。
相続税は土地の評価次第で税額が大きく変わり、申告後の見直しで還付が出ることは珍しくありません。この記事では、更正の請求の仕組みと期限、見つかりやすい払いすぎの型、手続きの流れと注意点を整理します。税理士の選び方は「相続税の税理士費用」をどうぞ。
①更正の請求は、申告した税額が多すぎたときに税務署へ減額を求める手続き。期限は原則、申告期限から5年以内 ②遺産分割の成立・遺留分侵害額の支払い・認知など、申告後に事情が変わった場合は「事由を知った日から4か月以内」の特則がある。5年を過ぎていても使える一方、4か月を逃すと請求できない ③よくある払いすぎは、土地の評価減(不整形・広い土地・貸家建付地・道路に接していない)の見落とし、債務・葬式費用の計上漏れ、特例の未適用 ④請求書と根拠資料を提出し、税務署の審査は数か月。税理士費用は還付額の成功報酬型が多い。過少申告が見つかるリスクも含めて、申告書の控えから確認を始める
更正の請求とは——期限は「申告期限から5年」
更正の請求は、申告した税額が本来より多かったときに、税務署へ減額(還付)を求める手続きです。修正申告が「少なく申告したので増やす」なら、更正の請求は「多く申告したので減らす」方向です。
期限は原則、相続税の申告期限(死亡から10か月)から5年以内。2022年3月に亡くなり申告期限が2023年1月なら、2028年1月まで請求できます。税理士に頼んでいたか自分で申告したかは関係ありません。逆に5年を過ぎると、明らかな払いすぎでも原則取り戻せません。
4か月の特則——分割成立・遺留分など後から変わった事情
申告時点では正しかったのに、後から事情が変わって税額が減る場合には、別の期限があります。その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に請求する特則です。
- 未分割で申告した後、遺産分割が成立した——配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を後から適用する典型例。申告期限から3年以内の分割が条件(分割見込書の添付が前提)
- 遺留分侵害額を支払った——遺言で多く取得した人が他の相続人に金銭を払ったとき、その分の税額が減る(「遺留分侵害額請求」)
- 認知・相続放棄の取消し・遺言書の発見など、相続人や取得財産が変わった
この特則は5年を過ぎていても使える反面、4か月を逃すと請求できません。分割協議がまとまった日、遺留分の合意書に署名した日から数えるため、その日を記録しておいてください。
見つかりやすい払いすぎの型——土地・債務・特例
| 型 | 具体例 |
|---|---|
| 土地の評価減の見落とし | 最も多い型。不整形地・間口が狭い・奥行きが長い・道路に接していない・がけ地・高圧線の下・広い土地(地積規模の大きな宅地)・貸家建付地・セットバックが必要な土地など、減額できる要素を使っていない |
| 債務・葬式費用の計上漏れ | 未払いの医療費・固定資産税・住民税、葬儀後に届いた請求、お布施や心づけなど領収書のない支出 |
| 特例・控除の未適用 | 小規模宅地等の特例、相次相続控除、障害者控除、配偶者の税額軽減の計算誤り |
| 財産の評価の誤り | 取引相場のない株式の評価方法、家庭用財産の過大計上、名義預金でないものを相続財産に含めた |
土地の評価減は、相続税専門でない税理士や自分で申告した場合に見落とされがちです。申告書の「土地の評価明細書」で補正率の欄がほとんど空欄なら、見直しの余地があるサインです。
手続きの流れと費用・注意点
- 申告書の控えと評価明細書を集める——申告した税理士から控えを受け取る。手元になければ税務署で閲覧の申請ができます
- 払いすぎの有無を確認する——土地なら現地・公図・測量図を見直し、減額要素を洗い出す。相続税専門の税理士に「見直し」を依頼する形が一般的で、費用は還付額の20〜30%程度の成功報酬型が多く、還付がなければ無料という事務所もあります
- 更正の請求書を提出する——請求書に、変更後の税額と理由、根拠資料(評価の計算書・領収書・分割協議書など)を添えて税務署へ
- 税務署の審査を待つ——数か月かかることが多く、追加資料を求められることもあります。認められれば還付金が振り込まれ、還付加算金(利息に相当)がつきます
注意点は2つ。①見直しで逆に申告漏れが見つかれば修正申告が必要になる。②一人だけの請求は他の相続人の税額にも影響するため、全員で足並みをそろえるのが原則です。
見直しの土台は、財産と債務の一覧——申告に載せた財産・載せ忘れた債務や葬式費用を一枚に並べると、払いすぎの型が見えてきます。財産目録の下書きを画面のステップに沿って無料でつくれます。
財産目録をつくるよくある質問(FAQ)
申告を頼んだ税理士とは別の税理士に見直しを頼んでも失礼ではありませんか?
失礼ではなく、実務では普通に行われています。土地の評価は税理士によって差が出る分野で、相続税専門の事務所が「申告後の見直し」を業務として受けているほどです。元の税理士に断る義務もありません。ただし申告書の控えや評価明細書は元の税理士から受け取る必要があるため、資料の交付を求めてください。還付が出ても、評価の判断には幅があるため、元の税理士の責任を必ず問えるわけではありません。
更正の請求をすると、税務調査が入りやすくなりますか?
請求そのものが引き金になるわけではありませんが、税務署は審査の際に申告書全体を見直すため、逆方向の申告漏れが見つかると修正申告を求められたり調査に発展したりすることがあります。根拠が確かなもの(測量図で確認できる不整形地、領収書のある債務など)に絞って請求するのが安全です。名義預金など申告漏れの心当たりがあるなら、請求の前に税理士に全体を確認してもらってください。
5年を過ぎてしまいました。もう取り戻せませんか?
原則として取り戻せません。ただし、遺産分割の成立や遺留分の支払いなど「後から生じた事由」については、5年を過ぎていても事由を知った日から4か月以内なら請求できます。また、税務署側が明らかに誤った処理をしていた場合など、極めて限られた場面で救済されることはありますが、期待はできません。「5年」は申告期限から数えるため、死亡日からは5年10か月です。まだ間に合うかどうか、申告書の控えで申告期限を確認してください。
還付されたお金は誰のものですか?相続人で分けますか?
還付金は払いすぎた税額を負担していた各相続人のもので、税額の減少分に応じて各人へ振り込まれます。相続財産ではないため遺産分割の対象にはなりません。税理士への成功報酬の負担は決まりがないため、還付額に応じて按分するなど相続人同士で取り決めておいてください。請求も原則として相続人ごとに行い、全員が請求書を出す形が一般的です。
まとめ
相続税の払いすぎは申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せる——最も多いのは土地の評価減の見落としで、次に債務・葬式費用の計上漏れ、特例の未適用です。分割成立や遺留分の支払いなど後から変わった事情には「4か月以内」の特則があり、5年を過ぎても使える一方で逃すと請求できません。申告書の控えと評価明細書を手に、補正率の欄が空欄なら見直しの合図。逆方向の漏れが見つかる可能性も含め、専門の税理士に全体を見てもらうのが確実です。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。