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生前の備え

年金だけで介護はまかなえる?収支と足りないときの順番

公開日 2026年9月11日 ・ 更新日 2026年9月11日 ・ 9分で読めます

「親の年金、月14万円。介護が始まったら足りるのだろうか」——この不安には、実は輪郭のはっきりした答えがあります。在宅介護なら年金の範囲で回る世帯が多く、施設は種類しだいで大きく分かれるのです。

介護費用は親のお金で払うのが大原則です(理由は「親の介護費用は誰が払う?」)。この記事では、その原則を実行するために年金額と介護費用の収支を場面別に並べ、足りないときに手を付ける正しい順番を整理します。順番を間違えると、子の家計が先に沈みます。

この記事の要点

①年金のめやすは、国民年金だけなら月6万円台、厚生年金を含めて月14万円前後(人により大きく異なる)。在宅介護の自己負担は軽減制度込みで月数万円に収まる世帯が多く、年金内で回りやすい ②特養は多床室+負担軽減で月10万円前後からがめやすで、年金内も現実的。民間の有料老人ホームは月20万円超が珍しくなく、年金だけでは不足しがち ③足りないときの順番は、①軽減制度を使い切る→②親の預貯金・保険→③親の自宅の活用→④子の支援は最後。逆走が家計事故のもと ④子が立て替えたら記録する。兄弟で分担と上限を決めてから支援する

結論——在宅は回る世帯が多い、施設は種類しだい

まず年金側のめやすです。国民年金(老齢基礎年金)だけなら月6万円台、厚生年金を含めると月14万円前後——受給額は現役時代の働き方で人により大きく異なり、年度改定もあるため、正確な額は年金振込通知書やねんきんネットで確認してください。

これに対して介護費用は、「どこで介護するか」で桁が変わります。在宅は介護保険の自己負担+実費で月数万円に収まる世帯が多い一方、民間施設は住居費と食費が乗るため月20万円を超えることが珍しくありません。つまり「年金だけで足りるか」の答えは、介護の場所の選択とほぼ同義なのです。

在宅・特養・有料の月額収支めやす

介護の場所月額費用のめやす年金との関係
在宅介護保険の自己負担+食材・おむつ等の実費で数万円程度国民年金のみでも回る世帯が多い
特養(多床室)負担軽減を使って月10万円前後から厚生年金なら年金内が現実的
老健・介護医療院特養に近い水準からやや高め年金+αで届く範囲
民間の有料老人ホーム等月15〜30万円台が中心帯。入居一時金がかかる施設も年金だけでは不足しがち。資産の取り崩し前提
収支のめやす(2026年8月時点)。金額は地域・所得区分・施設・年度改定で大きく変わります。施設の詳しい比較は種類別の解説記事を参照してください。

要するに、「年金だけ」の世帯が最初から民間施設を前提にすると、計画は必ず破綻します。在宅→特養という公的ルートを軸に、資産に余裕があれば選択肢を広げる——これが収支から見た基本戦略です。

足りないときの順番——①軽減②親の資産③自宅④子

  1. ①軽減制度を使い切る——自己負担の払い戻し(高額介護サービス費)、施設の食費・居住費を下げる負担限度額認定、状況によっては世帯分離の検討。申請しないと1円も出ない制度ばかりです。ここを飛ばして「足りない」と結論を出すのが最も多い誤りです
  2. ②親の資産を洗い出す——預貯金・定期・保険の解約返戻金・株式。年金+取り崩しで何年持つかを計算します。介護期間は平均5年程度、10年に備えるのがめやすです
  3. ③親の自宅を活用する——施設に移って空き家になるなら、売却・賃貸が最大の資金源になります。自宅を担保にお金を借りる仕組み(リバースモーゲージ等)は条件と リスクが複雑なため、安易に飛びつかず比較検討を
  4. ④子の支援は最後、上限つきで——ここまでやってなお足りない分だけを、兄弟で分担します。子の老後資金や教育費を削る支援は、次の世代の介護問題を生むだけです。施設費用が払えない場面の具体的な確認手順は「親の施設費用が足りない」へ

子の家計を守る2つのルール

ルール1:立て替えたら必ず記録する。親の年金が入るまでのつなぎで子が払うことは現実にあります。日付・金額・用途を記録し、レシートを残す。これは後で親のお金から精算するためでもあり、相続の場面で他の兄弟と揉めないためでもあります。

ルール2:分担と上限を「先に」決める。なし崩しに払い始めると、払える人(近くに住む人・言い出せない人)に負担が偏ります。月いくらまで・誰が・いつ見直すかを兄弟で決めてから支援を始めてください。そしてこのすべての出発点が、親の年金額と資産の見える化=財産目録です。収支の試算も、軽減制度の該当判定も、兄弟の話し合いも、1枚の目録から始まります。

「足りるか」は、書き出せば計算できます——年金・預貯金・保険・自宅。財産目録に整理すれば、介護費用が何年持つかの試算がその場でできます。無料・登録不要です。

財産目録をつくる

よくある質問(FAQ)

親の年金額を知りません。どうやって確認すればいいですか?

確認手段は3つあります。①年金支給のたびに届く年金振込通知書(額面と手取りが分かる)、②日本年金機構のねんきんネット(本人の登録が必要)、③通帳の年金振込額(偶数月に2か月分が振り込まれる)。切り出しにくければ、「介護保険料や税金の手続きに必要だから」と実務を口実にするか、財産目録づくりを一緒にやる形で自然に共有してもらうのが現実的です。額面だけでなく、介護保険料などが天引きされた手取りで収支を考えてください。

国民年金だけの親です。施設は無理でしょうか?

無理と決めつけないでください。鍵は特養+負担軽減制度の組み合わせです。住民税非課税世帯であれば、負担限度額認定で食費・居住費が下がり、高額介護サービス費で自己負担にも上限がかかるため、多床室なら月額をかなり抑えられます。それでも年金だけで足りない分は、預貯金の取り崩しや兄弟の分担で埋める設計になります。生活保護を受給している・受給を検討すべき水準の場合も、入所できる施設はあります。あきらめる前に市区町村と地域包括支援センターへ相談を。

介護費用は結局、総額でいくらぐらい見ておけばいいですか?

幅はありますが、めやすとして介護期間は平均5年程度、月々の費用+住宅改修などの一時費用で、総額数百万円規模を見ておくと大きくは外しません(在宅中心か施設かで大きく変わります)。大切なのは平均値より「わが家の数字」です。親の年金月額と資産を財産目録に書き出し、想定する介護の場所の月額を引き算すれば、毎月の過不足と「何年持つか」が計算できます。この試算を兄弟で共有しておくことが、いざというときの意思決定を速くします。

子どもが毎月援助するのは、やめたほうがいいのでしょうか?

順番と上限を守れば、否定はしません。ただし「①軽減制度②親の資産③自宅の活用」を使い切る前の援助は、順番の逆走です。親のお金で払える余地を残したまま子が払い続けると、子の老後資金が削られ、しかも相続の場面で「自分だけ負担した」という不公平感の火種になります。援助するなら、兄弟で月額の上限と分担を決め、記録を残し、定期的に見直す——この3点セットで。親の資産状況が変わったら(施設入所で自宅が空くなど)、援助の要否も見直してください。

まとめ

「年金だけで介護できるか」の答えは、在宅なら回る世帯が多く、施設は特養なら現実的・民間は不足しがち——つまり介護の場所の設計そのものです。足りないときは①軽減制度②親の資産③自宅④子の支援の順番を守ること。逆走が子の家計を沈めます。立て替えの記録と、兄弟での分担・上限の取り決めも忘れずに。そして出発点はいつも同じ——親の年金と資産を財産目録に書き出し、「わが家の数字」で試算することです。

「何年持つか」を、わが家の数字で計算しませんか

年金・預貯金・保険・自宅を財産目録に書き出せば、介護費用の収支試算がその場でできます。兄弟との話し合いの土台にも。登録不要・ブラウザだけで完結します。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、医療・介護・法律・税務の個別助言を行うものではありません。制度の内容や自己負担額は所得区分・お住まいの自治体・年度改定により異なります。実行にあたっては市区町村の窓口や専門家にご確認ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)