親の施設費用が足りない...子が払う前に確認する3ステップ|実家の売却と「認知症で売れない」を防ぐ備え
「入居一時金と月20万円。親の年金だけでは足りない。自分が払うしかないのか」――施設探しの現場で、多くの子世代がこの壁に突き当たります。最初に原則をお伝えします。親の介護費用は、親のお金と公的制度で払い切るのが大原則です。子の家計から安易に払い始めると、自分の老後資金と教育費を削る「共倒れ」コースに入りかねません。
そして、親のお金で払い切る最大の切り札が実家の資金化ですが、ここにこの分野最大の落とし穴があります――親が認知症になると、実家は売れなくなるのです。この記事では、①検討の3ステップ、②実家を動かせなくなる前の備え、③どうしても子が立て替える場合のルール、を順に解説します。
検討の順番:3ステップ
STEP1 親の資産を棚卸しする
年金月額・預貯金・保険(介護一時金や解約返戻金が眠っていることが多い)・有価証券・不動産を財産目録(無料ツール)で一覧化します。施設の選択肢(入居金の要否・月額帯)は、この数字が決めます。「足りない」の多くは、実は「全体が見えていない」です。
STEP2 公的制度で月額を下げる
- 負担限度額認定(特定入所者介護サービス費):特養など介護保険施設の食費・居住費が所得・資産に応じて減額。対象なら月数万円単位で変わります(預貯金要件あり・市区町村へ申請)
- 高額介護サービス費:介護保険の自己負担が月の上限を超えた分は払い戻し
- 世帯分離:親を別世帯にすることで、負担判定の所得区分が下がる場合があります(効果とデメリットはケースによるため、市区町村・ケアマネに試算を依頼)
- 医療費控除・高額医療合算:施設費の一部は税の控除対象。確定申告も忘れずに
STEP3 実家を資金化する
- 売却:入居で空き家になるなら本命。まとまった一時金と固定資産税等の維持費消滅の両効果(居住用財産の税特例の確認を)
- 賃貸:月額費用を家賃で回す。管理の担い手と修繕費が課題
- リバースモーゲージ・リースバック:自宅に住み続けたい場合や早期資金化の選択肢。金利・評価・契約条件の差が大きく、比較検討必須の商品です
最大の落とし穴:「売ろうと思ったときには、売れなくなっている」
STEP3の実行には、所有者本人(親)の意思確認が必要です。認知症が進んで判断能力を失うと、売買契約も賃貸借契約もできなくなり、預金も凍結されます。その時点で残る道は成年後見だけ――しかも居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要で、時間も自由度も大きく制約されます。
根本対策は、親が元気なうちに家族信託で「売れる状態」を維持しておくことです。金銭と実家を信託し、契約書に売却権限を明記しておけば、施設費用が必要になったタイミングで受託者(子)の判断で売却し、代金を親の費用に充てられます。「いつか施設のお金で実家を売るかもしれない」と少しでも思うなら、信託の検討は施設探しと同時に始めてください。
それでも子が立て替えるとき:3つのルール
- 記録を残す:立替日・金額・使途(施設の請求書と紐づけ)の一覧+領収書。親の財産からの将来の清算や、相続時の精算の根拠になります。記録のない立替えは、他の兄弟から見れば「証明できない自己申告」です。
- きょうだいで合意する:誰がいくら負担するか(法律上、兄弟姉妹は資力に応じた扶養義務を負い得ます)を話し合い、書面(家族会議合意書ツール)に。1人が黙って背負う構図が、介護と相続の紛争の火種です。
- 自分の家計の防衛線を決める:毎月の上限額を先に決める。共倒れは親も望みません。足りない分はSTEP2・3と施設のグレード見直しに戻るのが正解です。
棚卸しと備えを、無料でつくる
まず財産目録 無料ツールで親の資産の棚卸しを。実家の売却が視野にあるご家庭は家族信託契約書ツールへ。きょうだいの負担の取り決めは家族会議合意書ツールで書面化できます(すべて無料・登録不要)。
よくある質問(FAQ)
親の預金から施設費を払うのは問題ありませんか?
親本人のための支出であれば問題ありません。ただし本人の意思確認ができるうちに代理人カードや家族信託の形を整え、使途の記録を残してください。
入居の身元引受人・連帯保証人を頼まれました。費用負担と同じ意味ですか?
別物ですが重要です。身元引受人は未払時の保証や退去時の対応を負うのが一般的で、契約書の保証範囲を必ず確認してください。頼れる家族がいない場合の身元保証サービスの注意点は別記事で解説しています。
立て替えたお金は、相続のときに返してもらえますか?
記録があれば、相続財産からの清算(立替金の返還)を他の相続人に主張できます。記録がなければ事実上困難です。ルール①がすべてです。
まとめ
- 原則は「親のお金と制度で払い切る」。子の家計は最後の砦にしない
- 順番は、棚卸し→公的制度(負担限度額認定・世帯分離等)→実家の資金化
- 認知症になると実家は売れず、預金は凍結。元気なうちの家族信託が根本対策
- 立て替えるなら、記録・きょうだいの合意・上限の3ルールで
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。