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生前の備え

認知症の親の家を売るには|本人・後見の処分許可・家族信託の3ルート

公開日 2026年9月11日 ・ 更新日 2026年9月11日 ・ 9分で読めます

施設に入った親の実家を売って入居費用に充てたい。しかし「ご本人の意思確認ができないと契約できません」——不動産の売買は所有者本人の意思が必要で、判断能力がなければ本人は売主になれません

道は3つ。本人が売れる段階か、成年後見人+家庭裁判所の許可か、事前の家族信託か。条件・手順・期間と、代金・税金の注意を整理します。株式の売却は「認知症になると株は売却できない」をどうぞ。

この記事の要点

①不動産の売却には本人の意思表示が必要。認知症でも契約の内容を理解し判断できるなら本人が売主になれる。司法書士が決済時に意思を確認し、疑いがあれば止まる ②判断能力がなければ成年後見人を申し立て、後見人が売主に。ただし居住用不動産(施設入所中の元自宅を含む)は家庭裁判所の「居住用不動産処分許可」が必要で、許可なしの売却は無効 ③事前に家族信託を組んでいれば受託者が売れる。信託は判断能力があるうちにしか組めない ④売却代金は本人の財産。住んでいた家なら3,000万円控除の可能性

なぜ売れないのか——本人の意思が必要

判断能力(意思能力)のない人が結んだ契約は無効で、家族が代わりに署名しても効力はありません。決済では司法書士が売主本人と面談して意思と理解を確認し、「理解していない」と判断されれば取引は止まります。

「認知症=売れない」ではなく、診断名ではなく、その取引を理解して判断できるかで決まります。①理解して判断できる、②できない、の2つに分けて考えるのが出発点です(「法定後見の3類型」)。

ルート①本人が売る——判断能力がある段階の進め方

「実家を売って施設の費用にする」意味と価格の妥当性を理解できるなら、本人が売主として契約できます。要点は3つ。

  1. 本人の意思を早めに固め、記録する——売却の理由・希望価格を本人の言葉で日付入りで記録。かかりつけ医に「契約の判断ができる状態」の診断書をもらう
  2. 不動産会社と司法書士に事前に伝える——診断を隠さず、意思確認の時間帯や方法を相談する
  3. 手続きを急ぐ——媒介契約から決済まで3〜6か月。並行して家族信託を組み、万一のときは受託者が引き継げる形に

「判を押せる」と「理解している」は別です。家族が誘導して署名させた売買は、無効と争われるだけでなく司法書士の意思確認で止まります。

ルート②成年後見と居住用不動産処分許可

判断能力がなければ成年後見人を申し立て、後見人が売主になります(「成年後見の申立て方法」)。ただし、それだけでは売れません。

不動産の種類売却に必要なもの
居住用不動産現在住んでいる家、施設入所中の元自宅、過去に住んでいて将来戻る可能性のある家。後見人の判断だけでは売れず、家庭裁判所の「居住用不動産処分許可」が必要。許可なしの売却は無効
非居住用不動産賃貸物件・別荘・空き地など。後見人の判断で売れるが、本人の利益になることが前提で、家庭裁判所への報告が要る
成年後見人による不動産売却の要件(2026年8月時点)。

申立てには売買契約書案・査定書・売却の必要性を示す資料(施設費用、本人の収支)を添えます。家庭裁判所は「本人にとって必要か」「価格は適正か」を審査し、「子が資金を欲しい」「空き家の管理が面倒」では許可されません。後見人の選任から売却完了まで半年前後が目安。代金は本人の財産として後見人が管理し、後見は亡くなるまで続きます。

ルート③家族信託と、売却代金・税金の扱い

判断能力があるうちに家族信託で家を子(受託者)に信託しておけば、認知症になった後も受託者が契約の権限の範囲で売れます。家庭裁判所の許可も後見人も不要で、代金は信託財産として親の生活費に充てられます(「信託した不動産を修繕・売却するときの手続き」)。

ただし信託は判断能力があるうちにしか組めません。「いずれ実家を売って施設費用に」という見通しがある家庭は、元気なうちに信託を組むことが最も確実で柔軟な備えです(「家族信託とは」)。

  • 売却代金——どのルートでも本人の財産。家族が自分のために使えば使い込みになる
  • 税金——本人が住んでいた家なら3,000万円控除が使える可能性がある。施設入所後は「入所から3年目の年末まで」などの条件があるため、売却時期を税理士と確認する

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よくある質問(FAQ)

親は要介護2で、日によって理解できたりできなかったりします。売れますか?

判断能力には波があるのが普通で、契約と決済の時点で理解して判断できていれば有効です。かかりつけ医の診断書をもらい、意思確認は調子のよい時間帯に行うことを不動産会社と司法書士に相談してください。理解できない日が増えているなら、決済で止まるリスクが高いため、成年後見の申立てと並行して進めるのが現実的です。

後見人の申立てをせずに、家族が代理で売ることはできませんか?

できません。判断能力のない本人の代理権を持つのは成年後見人だけです。委任状があっても本人に意思能力がなければ無効で、実印を使って契約すれば私文書偽造の問題になります。司法書士の意思確認もあり、実際には取引が成立しません。後見人か家族信託か——正規のルート以外はありません。

後見人がついた後、実家の売却許可が下りませんでした。

本人が自宅に戻る可能性がある、施設費用は預金で賄える、といった場合は許可されないことがあります。理由を確認し、本人の収支見込みや空き家の維持費の負担を具体的に示して再申立てを検討してください。認められなければ当面は空き家のまま管理し、状況が変わった時点で改めて申し立てます。

家族信託を組みたいのですが、親はすでに軽度の認知症です。

軽度なら組める可能性があります。信託の内容(誰に何を託し、何のために使うか)を親が理解して判断できれば有効です。公正証書で作成し、医師の診断書を添えておくと後の争いに備えられます。理解が難しければ公証人が断ることもあります。早めに信託の専門家に面談してもらってください。

まとめ

認知症の親の家を売るルートは3つ。①本人が理解して判断できる段階なら本人が売主に(診断書と意思確認の準備、急ぐ)、②判断能力がなければ成年後見人+家庭裁判所の居住用不動産処分許可(本人の必要性が要件、家族の都合では不可、半年前後)、③事前の家族信託なら受託者が売れる(判断能力があるうちにしか組めない)。家族が代理で売る道はありません。売却代金は本人の財産、3,000万円控除は売却時期に注意。「いずれ売る」見通しがあるなら、元気なうちに信託を

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

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