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家族信託とは?仕組み・登場人物・できること・始め方まで最初に読む完全ガイド

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 9分で読めます

家族信託とは、親(委託者)が元気なうちに、預金や不動産などの財産の管理・処分を信頼できる家族(受託者)に託す契約です。契約で決めた目的の範囲で、家族が親に代わって財産を管理・運用できるようになります。

最大の役割は、認知症などで判断能力を失うと預金口座が凍結され、自宅も売れなくなる「資産凍結」を防ぐことです。この記事は家族信託を初めて調べる方向けの入り口として、仕組み・登場人物・できること・始め方の全体像を図解します。費用や契約書の作り方などの各論は、本文中の詳細記事へ進んでください。

この記事の要点

①家族信託=財産管理を家族に託す「契約」。認知症による資産凍結の予防策の代表格 ②登場人物は委託者・受託者・受益者の3者。親の財産を子が管理し、利益は親のまま(自益信託)が基本形 ③始め方は家族会議→設計→契約書→公正証書→信託口口座・登記の5ステップ

家族信託とは――「資産凍結」を防ぐ財産管理の契約

家族信託は、財産の「管理する権限」と「利益を受ける権利」を分ける制度です。たとえば父の預金1,000万円を長男に信託すると、管理・運用は長男が行いますが、そのお金は父の生活費・介護費のために使われます。名義は動いても、利益はずっと父のもの――これが家族信託の基本の形です。

なぜ今これが注目されるのか。認知症で判断能力を失うと、本人の預金は原則引き出せなくなり(口座凍結)、自宅や収益物件の売却・大規模修繕もできなくなるからです。凍結の実際は「認知症で口座が凍結されるのはいつ?」で解説していますが、家族信託を組んでおけば、親が認知症になった後も受託者の判断で介護費用の支払いや自宅の売却を続けられます。

なお、法律上の正式な呼び名は「民事信託」で、家族間で行う民事信託の通称が家族信託です。似た制度である成年後見制度との違いは「家族信託と成年後見制度の違い」で詳しく比較しています。

仕組みと登場人物――委託者・受託者・受益者の3者

委託者(父) 財産を託す人 例:預金・自宅の持ち主 受託者(長男) 託されて管理する人 管理・運用・処分を担当 信託契約で財産を託す 受益者(父) 利益を受け取る人 生活費・介護費に使われる 財産から生じる利益 委託者=受益者なら 「自益信託」(贈与税なし)
図:家族信託の基本構造。父が委託者兼受益者、長男が受託者となる「自益信託」が最も一般的な形です。

登場人物は次の3者です。

  • 委託者――財産を託す人。典型は財産を持つ親です
  • 受託者――託された財産を管理・運用・処分する人。典型は子。義務や責任が集中する要の役割で、詳細は「受託者とは?義務・報酬・できること」にまとめています
  • 受益者――財産から生じる利益を受け取る人。委託者=受益者とする「自益信託」なら、信託を始めても贈与税はかかりません家族信託と贈与税の関係

このほか、受託者を監督する信託監督人などを置く設計もあります(信託監督人・受益者代理人とは)。兄弟がいる場合に誰を受託者にするかは揉めやすいポイントなので、「兄弟がいる場合の受託者の決め方」も参考にしてください。

家族信託でできること・できないこと

できることできないこと
認知症後も預金を生活費・介護費に使い続ける身上監護(施設入所契約・医療同意など本人の身の回りの契約)
認知症後の自宅・収益物件の売却や修繕(アパートの信託年金受給権など、性質上信託できない財産を託すこと
「妻の次は長男へ」など2代先の承継指定(受益者連続型)信託していない財産の管理(信託契約の対象財産に限られる)
障がいのある子やペットのための長期の財産管理(親なき後の信託ペット信託遺留分を無効化すること(信託でも遺留分の主張は可能)
家族信託の守備範囲。契約で定めた目的と財産の範囲内で機能します。

遺言との使い分け(財産の承継先を決める機能の重なり)は「家族信託と遺言はどっちが必要?」で整理しています。自社株の承継に使うケースは「自社株の家族信託」をご覧ください。

メリット・デメリットの概要

メリットの核心は、①認知症による資産凍結を防げる ②後見制度より柔軟に財産を動かせる ③2代先までの承継を設計できるの3点です(詳細:家族信託のメリット7つ)。

一方で、受託者の負担が重い、身上監護ができない、対応できる専門家が限られるといった弱点もあります(詳細:家族信託のデメリット)。実際にうまくいかなかった例は「家族信託の失敗事例」で紹介しています。

家族信託は万能ではありません

施設への入所契約や入院の手続きなど「本人の身の回りの契約」(身上監護)は信託ではカバーできません。財産管理は信託、身上監護は任意後見と役割分担する併用パターンが実務では有力です。詳しくは「家族信託と任意後見の併用」をご覧ください。

始め方――契約までの5ステップ

  1. 家族会議で目的と方針を共有する。誰の・どの財産を・何のために・誰が管理するか。受託者以外の家族に無断で進めるのは、後の相続トラブルの典型的な火種です。合意内容は書面に残しましょう(書式:家族会議合意書
  2. 信託する財産と設計を決める。預金はいくら、自宅は入れるか等。ローン付き不動産は債権者の承諾が絡みます(ローン・抵当権付き不動産の信託
  3. 信託契約書を作成する。作り方とひな形は「家族信託契約書のひな形と書き方」に。自分で作る場合の注意点は「家族信託を自分でやる方法」で解説しています
  4. 公正証書にする。法律上の義務ではありませんが、信託口口座の開設には公正証書がほぼ必須です
  5. 信託口口座の開設・不動産の信託登記をする。金銭は受託者個人の口座と分別するため信託口口座へ(信託口口座の作り方)。不動産は信託登記を行います

費用の相場(専門家報酬・公証人手数料・登録免許税)は「家族信託の費用はいくら?」に、契約後の変更・解約は「家族信託の変更・解約」にまとめています。始めるタイミングに迷ったら「認知症対策はいつから始める?」も参考にしてください。

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よくある質問(FAQ)

家族信託と成年後見制度は、どちらを選べばいいですか?

元気なうちに家族だけで柔軟な財産管理を設計したいなら家族信託、すでに判断能力が低下しているなら成年後見制度(法定後見)が選択肢です。家族信託は本人が元気なうちしか契約できません。一方、後見制度には施設契約などの身上監護ができる強みがあります。比較の詳細は「家族信託と成年後見制度の違い」をご覧ください。

家族信託に税金はかかりますか?

委託者=受益者の自益信託なら、信託を開始しても贈与税はかかりません。利益の持ち主が変わっていないからです。ただし受益者を他人にした場合(他益信託)や信託終了時の財産の帰属によっては課税されます。詳しくは「家族信託に贈与税はかからない?」「家族信託が終了したときの税金」へ。

家族信託は自分で(専門家に頼まず)契約できますか?

法律上は可能です。ただし条項設計を誤ると信託口口座が開設できない・信託登記でつまずくといった実害が出ます。ひな形を活用しつつ、不動産や多額の金銭を信託する場合は専門家のチェックを受けるのが現実的です。手順は「家族信託を自分でやる方法」で解説しています。

家族信託はいつまでに契約すればいいですか?

本人に契約内容を理解できる判断能力があるうちです。認知症の診断後では契約できないことが多く、軽度なら公証人の判断で可能な場合もありますが、確実なのは元気な今です。ひとりっ子で親の認知症に備えるケースは「ひとりっ子の家族信託」も参考になります。

まとめ

  • 家族信託=財産の管理を家族に託す契約。認知症による資産凍結を防ぐ生前対策の代表格
  • 登場人物は委託者・受託者・受益者。委託者=受益者の自益信託が基本形で、開始時に贈与税はかからない
  • 財産管理は強いが身上監護はできない。任意後見との併用で弱点を補える
  • 始め方は家族会議→設計→契約書→公正証書→信託口口座・登記の5ステップ。契約できるのは元気なうちだけ

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法務・税務のアドバイスではありません(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。税制・法制度は改正されることがあります。個別の事情については司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。