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生前の備え

認知症保険は入るべき?給付条件と保険より先にやる対策

公開日 2026年8月30日 ・ 更新日 2026年8月30日 ・ 9分で読めます

親が同じ話を繰り返すようになった。テレビで認知症保険の広告を見かける。「入っておいたほうがいいのだろうか」——この記事は、その迷いに判断軸で答えるものです。特定の商品はすすめません。

先に全体像を言うと、認知症のお金の問題は「介護の費用」と「本人の資産が凍結して使えなくなる問題」の二階建てで、保険がカバーするのは主に前者の上乗せ部分です。すでに契約している保険が認知症で解約できなくなる問題は「認知症で保険が解約できない!」で扱っており、この記事は「これから入るか」の判断に絞ります。

この記事の要点

①認知症保険は大きく「診断一時金型」と「介護状態への連動型」。給付のされ方がまったく違う ②「診断されたら給付」とは限らない。所定の認知症の診断に加えて一定期間の状態継続を求める商品や、軽度認知障害(MCI)は対象外の商品が一般的 ③土台は公的介護保険と高額介護サービス費、そして本人の貯蓄。保険はあくまで上乗せ ④資産の凍結対策(代理人の仕組みや家族信託)は保険では代替できない。先に打つべきはこちら

認知症保険の仕組み——2つの型を知る

認知症保険と呼ばれる商品は、給付のされ方で大きく2つに分かれます。

給付のされ方特徴のめやす
診断一時金型所定の認知症と診断され、条件を満たすとまとまった一時金使い道が自由。初期費用(住まいの整備・施設の入居金)に充てやすい
介護連動型要介護度など所定の状態に応じて一時金や年金長期化への備え向き。給付の入口が公的介護保険の認定と連動する商品が多い
型のめやす(2026年8月時点)。商品ごとに条件は大きく異なるため、必ず約款・重要事項説明で確認してください。

どちらの型でも、高齢になってからの加入は保険料が上がり、健康状態によっては入れないのが原則です。検討するなら、加入できる年齢と保険料の総額をまず確認します。

給付条件の落とし穴——「診断=給付」ではない

いちばん誤解が多いのがここです。パンフレットの「認知症と診断されたら」の一文の裏に、次のような条件が付いているのが一般的です。

  • 「所定の認知症」の限定——医師の診断に加えて、画像検査などによる器質性の認知症であることや、見当識障害など所定の状態を求める商品があります
  • 状態の継続要件——診断だけでなく、所定の状態が一定期間(たとえば180日)続いて初めて給付という設計の商品があります
  • 免責期間・待機期間——契約から一定期間内の診断は給付対象外とする設計が一般的です
  • 軽度認知障害(MCI)の扱い——対象外の商品が多く、対象でも給付額が小さいのが通例です

「診断された。でも給付条件は満たさない」という期間が生じ得る——この構造を理解しているかどうかが、後悔の分かれ目です。加入前に「どの状態になったら・いくら・いつ受け取れるか」を自分の言葉で説明できるまで確認してください。

土台は公的制度と貯蓄——保険はその上乗せ

認知症の介護費用は、まず公的介護保険が土台です。要介護認定を受ければサービスの自己負担は原則1〜3割で、負担が重くなれば高額介護サービス費などの軽減制度もあります。つまり検討の順番は次のとおりです。

  1. 公的制度で何がカバーされるかを知る——介護費用の全体像と分担の考え方は「親の介護費用は誰が払う?」で整理しています
  2. 本人の資産で賄えるかを試算する——介護費用は本人のお金で払うのが大原則。年金と貯蓄で足りるなら、保険の必要性は下がります
  3. 足りない部分にだけ保険を検討する——保険料の総額と給付額を比べ、貯蓄で備える場合と比較します
保険では解決しない問題がある

認知症で本当に家族を困らせるのは、費用そのものより本人の預金が凍結されて使えなくなることです(「認知症になったらできなくなること一覧」)。給付金は受け取れても、本人名義の資産が動かせなければ施設の入居金も自宅の売却も止まります。この問題は保険では解決できません

保険より先にやる対策と、入るなら見るべき判断軸

順番として先に打つべきは、資産が凍結しても家族が動ける仕組みです。銀行の代理人の仕組みや家族信託など、状況別の選択肢は「認知症の親の預金を家族が引き出すには?」にまとめています。あわせて、本人の資産の全体像を財産目録にしておくと、介護費用の試算(上の手順2)がその場でできます。

そのうえで保険に入るなら、判断軸は4つです。①給付条件を自分の言葉で説明できるか ②保険料の総額と給付額の見合い ③貯蓄で同じ備えができないか ④給付金を受け取る人と使い道の想定——とくに④は盲点で、本人が受取人だと、認知症が進んだとき請求手続き自体が難しくなります。指定代理請求人の設定まで含めて設計してください。

判断の第一歩は、親の資産の見える化です——年金・貯蓄・保険を財産目録に書き出せば、「保険が必要な不足額」がその場で見えます。財産目録は無料・登録不要です。

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よくある質問(FAQ)

認知症と診断されたら、すぐに給付金を受け取れますか?

商品によりますが、すぐとは限りません。所定の認知症の診断に加えて、所定の状態が一定期間続くことを給付の条件とする商品が一般的で、契約直後の免責期間を置く設計もあります。また軽度認知障害(MCI)は対象外の商品が多数です。「診断=給付」と思い込んで入ると、いちばんお金が必要な初期に受け取れないことがあり得ます。約款の給付条件を必ず確認してください。

親はもう80歳です。今から認知症保険に入れますか?

加入できる商品はありますが、慎重に比べてください。高齢での加入は保険料が高く、健康状態の告知によっては引き受けられないのが原則です。保険料の総額が想定給付額に近づく、あるいは上回るケースもあり、その場合は同じ金額を貯蓄しておくほうが合理的です。80代の備えとしては、保険よりも預金の凍結対策と財産の見える化のほうが効果が大きいことが多い、というのが実務的な感覚です。

認知症保険に入れば、介護のお金の心配はなくなりますか?

なくなりません。保険がカバーするのは費用の一部の上乗せです。介護費用の土台は公的介護保険と本人の年金・貯蓄で、さらに大きな問題として、認知症が進むと本人名義の預金や自宅が動かせなくなる資産凍結があります。凍結対策(代理人の仕組みや家族信託)は保険では代替できません。保険を検討する前に、この二階建ての全体像を家族で共有することをおすすめします。

本人が認知症になったら、給付金の請求は誰がするのですか?

原則は契約者・被保険者本人ですが、認知症が進むと本人による請求は困難になります。そこで多くの商品には、あらかじめ家族を指定代理請求人として登録しておく仕組みがあります。これを設定していないと、給付条件を満たしているのに請求できないという本末転倒が起こり得ます。加入時に必ず設定し、指定した家族にも「この保険がある」と伝えておいてください。保険の存在は財産目録やエンディングノートにも書いておくと確実です。

まとめ

認知症保険は、「診断=給付」ではないことを理解したうえで検討する商品です。給付条件・免責期間・MCIの扱いを確認し、公的介護保険と本人の貯蓄という土台で足りない分だけを上乗せする——この順番なら過不足のない判断ができます。そして預金凍結の問題は保険では解決できません先にやるべきは、資産の見える化と、家族が動ける仕組みづくり。保険はその後に比べても、遅くありません。(商品の内容は各社・時期で異なります。加入前に約款と最新情報を必ず確認してください)

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務・保険の個別助言を行うものではありません。商品の内容や制度の適用可否は個別の事情により異なります。実行にあたっては必ず専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)