市民後見人とは|専門職後見人との違い・報酬・なるための養成研修・頼む側のメリットと限界
市民後見人とは、弁護士や司法書士のような専門資格を持たない一般市民が、自治体や社会福祉協議会などの養成研修を修了したうえで、家庭裁判所から成年後見人に選任されたものです。判断能力が不十分な方の身近な支援者として、国が広がりを後押ししている担い手です。
この記事を読んでいる方は、「社会貢献としてなってみたい」方と、「専門職後見人の報酬負担が重いので市民後見人に頼めないか」というご家族の二通りだと思います。両方の視点から、制度の実像――できること・向き不向き・報酬・なるための流れ――を整理します。
市民後見人の位置づけ――親族でも専門職でもない第三の担い手
- 成年後見人の担い手は大きく①親族 ②専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士など)③市民後見人・法人(社協等)の3系統です。市民後見人は、地域住民が研修と実務支援を受けて担う「地域の支え合い」型の後見人です
- 単独で活動するわけではなく、自治体・社会福祉協議会・中核機関(成年後見センター等)が受任調整とバックアップ(相談・監督支援)を行うのが標準的な仕組みです
- 選任するのはあくまで家庭裁判所です。本人・家族が「この市民後見人にお願いします」と直接指名する制度ではなく、候補者は地域の中核機関の調整を経て裁判所が決定します
専門職後見人との違い――費用・持ち味・限界
- 報酬:専門職後見人は月2〜6万円が目安なのに対し、市民後見人は無報酬〜ごく低額(実費・活動費程度)で活動する例が多く、本人の財産からの負担が大幅に軽くなります。報酬付与の審判自体は可能ですが、ボランティア性の高い担い手です
- 持ち味:担当件数が少ないぶん、定期的な訪問・見守りなど身上保護(生活面の支援)の細やかさは専門職以上になり得ます。地域の福祉資源にも通じています
- 限界:遺産分割や不動産売却、親族間の紛争、多額・複雑な財産管理、虐待対応などが絡む案件は市民後見人には原則任せられず、専門職が選任されます。市民後見人が向くのは「財産がシンプルで、紛争性がなく、日常の見守りが中心」のケースです
【頼む側】市民後見人に来てもらうには
- 直接の指名はできませんが、道筋はあります。申立て前に市区町村の中核機関・成年後見センター・地域包括支援センターに相談し、「報酬負担が難しい」「身上保護を重視したい」事情を伝えると、市民後見人や法人後見の受任調整の俎上に載る可能性があります
- 申立書の候補者欄に誰も書かない(または調整済みの候補者を書く)形で家裁の判断に委ねます
- 報酬負担が重い場合の別ルートとして、市区町村の「成年後見制度利用支援事業」による申立費用・報酬の助成もあります。市民後見人と助成、両方を窓口で確認しましょう
- なお、そもそも後見以外で足りるケース(代理人登録・日常生活自立支援事業)や、親に判断能力があるうちの家族信託・任意後見のほうが適する場面も多いため、「費用の安い後見人を探す」前に「後見が本当に必要か」の検討を先に行ってください
【なりたい側】市民後見人になるまでの流れ
- ①養成研修の受講:市区町村・社協・都道府県等が実施。基礎研修+実務研修で計数十時間規模のカリキュラム(法律・福祉・実務演習)が一般的です。募集時期・受講要件(年齢・居住地など)は自治体ごとに異なります
- ②名簿登録・実務経験:修了後、候補者名簿に登録。多くの地域では、いきなり単独受任ではなく法人後見の支援員や専門職後見人の補助として実務経験を積みます
- ③受任調整→家裁の選任:中核機関がケースとのマッチングを行い、家庭裁判所が選任。受任後も定期報告・研修・社協等のバックアップを受けながら活動します
- 報酬は期待しないこと。活動は交通費等の実費支給が中心で、収入源にはなりません。一方、地域福祉の最前線に関わる社会貢献としての手応えは大きく、定年後のセカンドキャリアとして選ぶ方が多い活動です
よくある質問(FAQ)
市民後見人は信頼できますか?不正が心配です。
市民後見人は養成研修の修了者から選任され、社協等のバックアップ機関と家庭裁判所(多くは後見監督人も)による二重三重のチェックを受けながら活動します。統計上、後見人の不正の多くはむしろ親族後見人によるもので、監督の枠組みが手厚い市民後見人は制度的には管理された担い手といえます。
家族が市民後見人の養成研修を受けて、自分の親の後見人になれますか?
その形は想定されていません。市民後見人は「第三者」後見の担い手であり、自分の親族のケースは受任調整の対象外です。ご家族が後見人になりたい場合は、通常の申立てで親族候補者として名前を挙げる形になります。親族が選任されるかは財産規模や家族関係次第で、確約はありません。
どこに相談すれば市民後見人の話を進められますか?
窓口は市区町村の成年後見中核機関(名称は「成年後見センター」「権利擁護センター」等)または社会福祉協議会です。地域包括支援センターやケアマネジャー経由でもつながります。「市民後見人の受任調整をしているか」「利用支援事業の助成要件」の2点を聞けば、地域で取れる選択肢が一度に分かります。
まとめ
- 市民後見人=養成研修を受けた一般市民による後見人。社協等の支援と家裁の監督のもとで活動
- 報酬負担はほぼゼロ〜低額。見守り中心のシンプルな案件に強く、紛争・複雑案件は不可
- 直接指名はできない。中核機関への事前相談+利用支援事業の助成確認が現実的ルート
- 後見が本当に必要かの検討が先。元気なうちなら家族信託・任意後見という選択肢もある
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。