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家族信託した不動産の確定申告|損益通算禁止の落とし穴と必要書類
賃貸物件を信託したあと、最初の確定申告で必ず出る疑問が「誰が、何を出すのか」です。答えは申告するのは受益者、資料をそろえるのは受託者。名義が子に変わっていても、家賃は税務上ずっと親(受益者)の所得です。
そしてもうひとつ、契約前に知っておくべき落とし穴があります——信託した不動産の赤字は、他の所得と相殺できません。この記事では申告の全体像と損益通算の制限、受託者が用意する書類を整理します。信託の設計そのものは「賃貸アパートの家族信託」、計算書の提出判定は「信託の計算書とは?」へ。
①申告義務は受益者。受託者は帳簿と資料を用意して渡す役割 ②最大の注意点が損益通算の制限。信託不動産の損失はなかったものとされ、給与や他の物件の黒字と相殺できず、翌年への繰り越しもできない ③申告書には信託分の明細が必要。受託者は月次で帳簿をつけ、年明けに集計する流れを作る
誰が申告するのか——受益者課税の原則
家族信託の税務は受益者課税が原則です。信託財産から生じる収益は受益者のものとして扱われ、登記や口座の名義が受託者になっていても、受託者の所得にはなりません。
親を委託者兼受益者とする一般的な設計(委託者・受益者とは)なら、これまでどおり親が確定申告をします。子が受託者として家賃を管理していても、申告名義は変わりません。子の役割は帳簿の作成と資料の受け渡しです。
受託者である子が、自分の確定申告に信託不動産の収入を含めてしまう誤りが実際に起きます。信託口口座に入ってくるお金は子のお金ではありません。受託者の報酬を受け取っている場合のみ、その報酬が子の所得になります(受託者の報酬)。
損益通算の制限——契約前に知るべき落とし穴
ここが賃貸物件を信託する際の最大の論点です。信託した不動産から生じた損失は、税務上なかったものとみなされる取扱いがあります。結果として次のようになります。
| 状況 | 信託していない場合 | 信託した場合 |
|---|---|---|
| 大規模修繕で赤字が出た | 給与所得等と相殺できる | 相殺できない |
| 別の賃貸物件は黒字 | 黒字と赤字を通算できる | 信託分の赤字は通算不可 |
| 赤字を翌年以降へ | 要件を満たせば繰越可 | 繰り越せない |
| 信託した複数物件の間 | — | 同じ信託契約内かどうかで扱いが変わるため要確認 |
実務上の意味はシンプルです——赤字が見込まれる物件ほど、信託による税務上の不利が大きい。築古で修繕が続く物件や、大規模修繕を数年内に控えた物件を信託するときは、凍結対策の必要性と天秤にかけて判断してください(家族信託のデメリット)。
申告と提出書類、受託者が用意するもの
受益者側——不動産所得として申告し、信託財産に係る分は通常の物件とは区分して記載します。信託分の収入・必要経費をまとめた明細の添付が求められるため、受託者からの資料が前提になります。
受託者側——用意するのは次の3つです。
- 信託帳簿——収入と支出の継続的な記録。表計算ソフトで問題ありません(信託帳簿はエクセルでOK)
- 受益者へ渡す収支資料——家賃、管理費、固定資産税、修繕費、ローン返済がある場合はその内訳まで
- 信託の計算書——受託者に課される法定調書。収益の額などが一定額以下の場合には提出が不要とされる基準があります(提出の判定はこちら)
ローン付き物件を信託している場合は、返済の扱いや銀行との取り決めが絡むため、あわせて「ローン・抵当権つき不動産の家族信託」も確認してください。
年間スケジュールとつまずきポイント
受託者の1年はおおむねこう動きます——毎月:入出金を帳簿に記録/年末:1年分を集計し受益者へ資料を渡す/1月:信託の計算書の提出要否を判定し、必要なら提出/2〜3月:受益者が確定申告。
つまずくのはほぼ2か所です。ひとつは帳簿を後回しにして年明けに1年分をまとめようとすること。領収書が散逸し、信託口口座と個人口座の入出金が混ざり、収拾がつかなくなります。もうひとつがお金の混同——受託者個人の財布と信託財産を分けずに支払いをしてしまうケースで、帳簿が作れないだけでなく、受託者の分別管理義務にも関わります(失敗事例)。
どちらも、月に一度10分の記録で防げます。信託は契約日ではなく、その後の運用で成否が決まります。
受益者への報告を、書面で残す——年1回の収支報告は受託者の実務であり、家族間の信頼の土台です。信託事務報告書の下書きが無料・登録不要でつくれます。
信託事務報告書をつくるよくある質問(FAQ)
申告するのは受託者ですか、受益者ですか?
受益者です。信託した賃貸不動産から生じる家賃収入は、税務上は受益者のものとして扱われます。名義が受託者に変わっていても、受託者自身の所得にはなりません。したがって親を受益者とする一般的な設計では、これまでどおり親が確定申告をします。受託者である子の役割は、帳簿をつけて収支をまとめ、申告に必要な資料を受益者へ渡すことです。判断能力が低下している場合の申告手続きの進め方は、税理士や税務署に事前に相談してください。
損益通算ができないとは、具体的にどういうことですか?
信託した不動産から生じた損失は、税務上なかったものとみなされる取扱いがあります。つまり大規模修繕などで赤字が出ても、給与所得や信託していない別の物件の黒字と相殺できず、翌年以降に繰り越すこともできません。信託していなければ使えたはずの節税効果が失われるということです。とくに、赤字が出やすい築古物件や大規模修繕を控えた物件を信託する場合は影響が大きくなります。信託の設計前に税理士へ試算を依頼してください。
複数の物件を持っています。全部を信託すべきですか?
一律の正解はなく、物件ごとに判断します。損益通算の制限は信託した不動産に及ぶため、赤字が見込まれる物件を信託すると税務上の不利が生じやすくなります。一方、信託しなければ認知症で管理も売却も止まるリスクが残ります。実務では、凍結リスクの大きい物件を優先して信託し、赤字が見込まれる物件は扱いを個別に検討する、といった組み合わせで設計します。税務と凍結対策のどちらを優先するかは家庭ごとに違うため、税理士と信託の専門家に同席してもらうのが確実です。
まとめ
信託した賃貸不動産の確定申告は——申告するのは受益者、資料をそろえるのは受託者。名義が子に移っていても、家賃は税務上ずっと受益者の所得です。そして契約前に必ず知っておきたいのが損益通算の制限で、信託不動産の赤字は他の所得や別物件と相殺できず、繰り越しもできません。赤字が見込まれる物件ほど不利が大きいため、凍結対策の必要性と並べて物件ごとに判断してください。運用面では、月に一度の帳簿とお金の分別管理——この2つだけで、申告期のトラブルはほぼ防げます。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。