信託の計算書とは?家族信託の受託者の提出義務・3万円以下の免除判定・書き方を解説【毎年1月31日期限】
家族信託は「契約して終わり」ではありません。受託者になった方には、信託が続く限り毎年やってくる事務があります。その代表が、税務署への信託の計算書の提出です。
「そんな書類、聞いていない」という受託者の方は少なくありません。家族信託の組成を扱う情報は世の中に溢れていますが、組成後の運用実務を解説した情報は驚くほど少ないのが実情です。しかも提出期限は毎年1月31日。年が明けてから慌てて調べる方が続出します。
先に結論をまとめます。①受託者は原則、毎年1月31日までに「信託の計算書」と「合計表」を税務署へ提出する義務があります。②ただし、信託財産の収益の合計が年3万円以下なら提出不要です。③自宅と金銭だけを信託している典型的な家族信託の多くは、この免除に該当します。④賃貸不動産を信託している場合は、ほぼ確実に提出が必要です。
信託の計算書とは:受託者に課された法定調書
信託の計算書は、所得税法に基づき受託者が税務署へ提出する法定調書です。信託財産の状況(資産・負債)と、その年の収益・費用を税務署へ報告するもので、受益者(=多くの家族信託では親本人)の所得を税務署が把握するための仕組みです。
提出義務者は受託者本人です。家族信託で子が受託者になっている場合、この義務は子にあります。「親の財産のことだから親の確定申告で済んでいる」とは別枠の、受託者固有の義務である点に注意してください。
- 提出先:受託者の事務所等の所在地(個人受託者は住所地)を管轄する税務署
- 提出期限:毎年1月31日(前年1年分について)
- 提出書類:「信託の計算書」+「信託の計算書合計表」
- 提出方法:書面持参・郵送のほか、e-Taxでも提出可能
わが家は提出が必要?――3分でわかる判定フロー
判定の分かれ目は、信託財産から生じた収益の合計額です。各人別の収益の合計が3万円以下(計算期間が1年未満の場合は1万5千円以下)であれば、計算書の提出は不要とされています。
提出不要になる典型例
- 信託財産が金銭と自宅(賃貸に出していない)のみ:収益がほぼ発生しないため、多くの場合提出不要
- 信託口口座の利息が年数百円程度:3万円以下に収まるため提出不要
提出が必要になる典型例
- 賃貸アパート・駐車場を信託している:賃料収入で3万円を軽く超えるため提出必須
- 配当のある株式や投資信託を信託している場合も、収益額によっては該当
提出が不要でも、受託者の帳簿作成・保存義務(信託法37条)はなくなりません。日々の入出金を記録した信託帳簿と、年1回の受益者への報告は、収益ゼロでも必要です。
信託の計算書の書き方:主な記載項目
様式は国税庁サイトから入手できます。主な記載項目と、家族信託での書き方のポイントは次のとおりです。
| 記載項目 | 家族信託での書き方のポイント |
|---|---|
| 委託者・受託者・受益者 | 住所・氏名・マイナンバー(個人番号)を記載。自益信託では委託者と受益者が同一人物 |
| 信託の期間・目的 | 信託契約書の記載に合わせる |
| 信託財産の種類 | 金銭・建物・土地など、契約書・目録と整合させる |
| 収益及び費用の明細 | 1年分の賃料等の収入と、管理費・修繕費・固定資産税等の支出を帳簿から転記 |
| 資産及び負債の明細 | 12月31日時点の信託財産の内訳と金額 |
| 受益者に交付した利益 | 受益者に給付した金額 |
合計表は、提出する計算書の表紙にあたる書類で、提出枚数や合計額をまとめて記載します。家族信託が1本であれば、計算書1枚+合計表1枚のセットで提出する形になります。
確定申告との関係:計算書を出しても申告は別途必要
混同しやすいのですが、信託の計算書(受託者が出す法定調書)と、受益者の確定申告(所得の申告)は別物です。信託した賃貸不動産の収入は、税務上は受益者(親)の不動産所得として、受益者の確定申告が必要です。このとき不動産所得用の明細書に信託に関する事項を記載する必要があるほか、信託不動産の損失は他の所得と損益通算できないという重要な特例もあります。
信託の計算書は法定調書であり、提出義務違反には罰則の定めがあります。実務上いきなり罰則が科される例は多くないとしても、税務署が受益者の所得を把握する書類である以上、未提出は受益者の申告漏れの疑いにつながりかねません。該当する場合は期限内提出を徹底してください。期限(1月31日)を過ぎてしまった場合も、気づいた時点で速やかに提出するのが最善です。
受託者の年間スケジュール
- 日々:信託口口座の入出金を帳簿に記録(レシート・請求書を保存)
- 12月末:その年の収支を締め、資産・負債の残高を確認
- 1月:収益3万円超なら信託の計算書+合計表を作成し、1月31日までに提出
- 年1回(時期は契約で設定):受益者・家族へ信託事務報告書で報告
- 2〜3月:受益者に所得があれば確定申告(不動産所得の明細添付)
帳簿づけを、無料ツールで型化する
信託帳簿・支出台帳ツールで日々の記録を、信託事務報告書ツールで年次報告を、いずれも無料で作成できます(登録不要)。帳簿が整っていれば、1月の計算書は転記だけです。
よくある質問(FAQ)
自益信託(委託者=受益者)でも提出義務はありますか?
あります。提出要否は「自益か他益か」ではなく収益の額で判定します。自益信託でも賃貸収入があれば提出が必要です。なお信託設定時の調書(受益者別調書)は、自益信託であれば原則不要です。
収益はないが費用(固定資産税など)だけある場合は?
判定基準は収益の合計額です。収益が3万円以下であれば、費用があっても計算書の提出は不要と整理されています。ただし帳簿への記録は必要です。
税理士に頼むべきですか?
金銭+自宅のみのシンプルな信託なら、帳簿と本記事の内容で自力対応できる範囲です。賃貸不動産が複数ある、受益者の確定申告も絡む、といった場合は税理士への依頼をおすすめします。
マイナンバーの記載は必須ですか?
様式上、記載欄があります。受益者等のマイナンバーの提供を受けて記載するのが原則です。取得が難しい事情がある場合の取り扱いは税務署に確認してください。
まとめ:1月に慌てないために、帳簿を今日から
- 受託者は原則、毎年1月31日までに信託の計算書+合計表を提出
- 収益が年3万円以下なら提出不要。金銭+自宅のみの信託は多くが該当
- 賃貸不動産を信託しているなら提出必須。受益者の確定申告も別途必要
- 提出不要でも帳簿と年次報告の義務は残る。日々の記録がすべての土台
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。