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相続発生後

相続した株を売却したときの税金|取得費の引き継ぎと取得費加算の特例

公開日 2026年8月24日 ・ 更新日 2026年8月24日 ・ 7分で読めます

相続した株式や投資信託を売ると、利益(譲渡所得)に約20%(20.315%)の税金がかかります。ここで多くの人が誤解するのが取得費です。利益の計算に使う「買値」は、相続したときの時価ではなく、亡くなった人が買った値段をそのまま引き継ぎます。親が30年前に100万円で買った株をあなたが相続し、500万円で売れば、利益は400万円——「相続時に500万円だったから利益ゼロ」にはなりません。

この記事は「売るときの税金」に絞って解説します。証券口座の名義変更・移管の手続きは「証券口座・株式の相続手続き」、不動産を売る場合は「相続した不動産を売却したときの税金」をどうぞ。

この記事の要点

①税額=(売却額−取得費−手数料)×20.315%。取得費は故人の買値を引き継ぎ、不明なら売却額の5%で計算(税負担は重くなりがち) ②相続税を払った人は、申告期限の翌日から3年以内(死亡から約3年10か月以内)の売却で「取得費加算の特例」が使え、利益を圧縮できる ③NISAは例外:非課税のまま引き継げず、死亡日の時価で課税口座へ移り、取得費もその時価にリセットされる

計算の構造——「売却額」ではなく「利益」に課税

課税されるのは「利益」の部分だけ 売却額(例:500万円) 取得費=故人の買値 (例:100万円)+手数料 利益(譲渡所得:例 400万円) ここに 20.315% を課税 取得費加算の特例=相続税の一部をここに上乗せ 取得費が増えるほど、課税される利益は減る
図1:税額=(売却額−取得費−手数料)×20.315%。取得費をいくら積めるかが節税の焦点です。

税率は所得税・住民税・復興特別所得税をあわせて20.315%の申告分離課税。給与など他の所得の多寡に関係なく一律です。相続した株が値上がりしていなければ(利益がなければ)、売っても譲渡所得税はかかりません。

取得費のルール——買値の引き継ぎと5%ルール

ケース取得費の扱い
原則故人の買値(取得費)と取得日をそのまま引き継ぐ。相続時の時価ではない
買値が分からない証券会社へ取引記録の開示を依頼。それでも不明なら売却額の5%を取得費とみなす(概算取得費)
特定口座に移管した取得費情報が引き継がれ、源泉徴収ありなら申告不要で完結も可能
NISA口座の株だった例外。死亡日の時価で課税口座へ移り、取得費もその時価にリセット(次章)

5%ルールは最後の手段です。500万円で売った株の取得費が25万円扱いになり、475万円が利益として課税されます。古い株ほど「買値の記録探し」が節税に直結する——故人の取引報告書・顧客勘定元帳の開示請求を、売る前に必ず試してください。相続した口座がどこにあるか分からない段階なら「証券口座の探し方」から始めましょう。

取得費加算の特例——3年10か月以内の売却

相続税を払った人が相続財産を売ったときは、払った相続税のうち売った株式に対応する部分を取得費に上乗せできます(取得費加算の特例)。利益がその分だけ圧縮され、譲渡所得税が軽くなります。

条件は3つ——①相続や遺贈で財産を取得した人であること ②その人に相続税が課税されていること ③相続税の申告期限の翌日から3年以内(=死亡から約3年10か月以内)に売却すること。この特例は不動産の売却と共通の制度で、確定申告で明細書を添付して初めて適用されます。黙っていても税務署は引いてくれません。

売却時期の目安「いずれ売るつもり」なら、3年10か月の期限内かどうかで手取りが変わります。相続税を払った方は、納税後の売却スケジュールをこの期限から逆算して決めるのがセオリーです。相続税がかからなかった方(基礎控除以下)には、この特例の適用はありません。

NISA・投資信託・申告の注意点

NISAは引き継げません。故人のNISA口座の非課税メリットは死亡で終了し、株式は死亡日の時価で相続人の課税口座へ移管されます。取得費はその時価にリセットされるため、死亡日以降の値上がり分だけが将来の課税対象です(NISAの相続手続き)。

投資信託も基本は同じ——故人の取得価額を引き継ぎ、売却益(解約差益)に20.315%。分配金や、死亡後に支払われた配当の扱いなど細部は商品により異なります。また、故人の生前の売却益・配当は準確定申告(4か月以内)の対象になることがあり、相続人の売却益は相続人自身の確定申告(特定口座・源泉徴収ありなら不要の場合も)で処理します。「売って分ける」方針の場合は、誰の名義で売り、税引後をどう分けるかを遺産分割協議書に明記しておくと揉めません。

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よくある質問(FAQ)

相続税を払ったのに、売却でまた税金がかかるのは二重課税では?

対象が違うため二重課税ではない、というのが制度の立場です。相続税は「財産を引き継いだこと」に、譲渡所得税は「値上がり益」にかかります。ただし負担感への配慮として取得費加算の特例があり、相続税の申告期限の翌日から3年以内(死亡から約3年10か月以内)に売却すれば、払った相続税のうち株式に対応する部分を取得費に上乗せして利益を圧縮できます。売却時期の判断材料にしてください。

故人がいくらで買ったのか分かりません。どうすればいいですか?

まず証券会社に取引報告書や顧客勘定元帳の開示を依頼してください。過去の記録から買値(取得費)が判明することは多くあります。どうしても分からない場合は売却額の5%を取得費とみなす概算取得費で計算しますが、この場合は売却額の95%が利益扱いになり税負担が大きくなりがちです。5%ルールを使う前に、記録の探索を尽くすのが鉄則です。

株価が下がっているのに、相続税は死亡日の高い株価で計算されるのですか?

上場株式の相続税評価は、死亡日の終値と、死亡月・前月・前々月の各月平均終値の4つのうち最も低い価格を使えます。死亡日の終値に固定されるわけではありません。それでも売却時にはさらに値下がりしていることはあり得ますが、相続税評価が売却額を下回っても差額の還付はありません。評価ルールの詳細は「証券口座・株式の相続手続き」で解説しています。

売却は誰の名義で・いつやればいいですか?

故人の口座のままでは売却できません。遺産分割で取得する人を決め、その相続人の証券口座へ移管してから、その人の名義で売却します。売却益はその人の所得です。「売って現金で分ける」予定でも、いったん代表相続人へ移管して売却し分配する形になるため、課税関係と分配方法を遺産分割協議書に明記しておくとトラブルを防げます。取得費加算を使うなら3年10か月の期限から逆算を。

まとめ

相続した株の売却税は(売却額−故人の買値−手数料)×20.315%。取得費は相続時の時価ではなく故人の買値を引き継ぐ——ここを誤解したまま売ると、思わぬ税額に驚くことになります。買値不明なら5%ルールの前に記録探しを、相続税を払ったなら3年10か月以内の売却で取得費加算を、NISAだけは時価リセットの例外を。手続き(移管)→分け方の明記→売却時期の設計、の順で進めれば大丈夫です。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた税務助言を行うものではありません。税率・特例には適用条件があり、改正される場合があります。具体的な申告は税理士へご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)