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生前の備え

自社株(非上場株式)の相続と評価|株価の決まり方・分散の危険・納税資金と生前対策

公開日 2026年8月18日 ・ 更新日 2026年8月18日 ・ 7分で読めます

中小企業オーナーの相続で最大の火種は、自宅でも預金でもなく自社株(非上場株式)です。理由は単純で、自社株は市場で売れない(換金できない)のに、業績の良い会社ほど相続税評価が数千万〜数億円に膨らむから。納税はできない、分ければ経営権が壊れる、渡さなければ他の相続人の遺留分を侵す——三方塞がりの構造です。

この記事では、オーナーとそのご家族向けに、株価評価の決まり方の全体像3大リスク(納税資金・分散・遺留分)、そして生前に打てる対策メニューを整理します。個別の株価算定は必ず税理士の仕事ですが、「何が問題で、どんな道具があるか」を経営者自身が知っているかどうかで、対策の質とスピードは大きく変わります。

なぜ自社株が問題になるのか——3大リスク

  • リスク①納税資金:自社株は売れないのに相続税は現金納付。評価2億円の株なら税額は数千万円規模になり得ますが、株そのものでは払えません。会社の現預金は会社のもので、遺族が自由に使えるわけでもありません
  • リスク②分散:遺産分割で株が複数の相続人に散らばると、議決権が割れて経営が不安定化します。経営に関与しない相続人が株主総会の拒否権的な持分を握る、配当や買い取りを要求する——数世代で収拾不能になる典型パターンです
  • リスク③遺留分:後継者に株を集中させるほど、他の相続人の遺留分(遺留分とは)を侵害しやすくなります。自社株が遺産の大半を占める会社ほど、この矛盾は深刻です

株価はどう決まる?——評価方式の全体像

自社株の相続税評価 ― 評価方式の全体像と3大リスクを示す図解
図:自社株の相続税評価 ― 評価方式の全体像と3大リスク
  • 非上場株式の相続税評価は、株を取得する人が「経営支配力のある同族株主か、それ以外の少数株主か」でまず分かれます。ここが上場株にはない独特のポイントです
  • 同族株主(後継者など)が取得 → 原則的評価方式:会社の規模(従業員数・総資産・取引金額)に応じて、「類似業種比準方式」(同業種の上場会社の株価・配当・利益・純資産と比べる)と「純資産価額方式」(会社の純資産を株数で割る)を単独または併用して評価します。利益と純資産が厚い優良企業ほど高くなる構造です
  • 少数株主が取得 → 配当還元方式:配当額から簡便に評価し、原則的評価より大幅に低くなるのが通常です。「誰が相続・取得するかで同じ株の評価額が変わる」——この性質は対策設計の重要な前提になります
  • 評価は決算書だけでは計算できず、税務上の調整(土地・保険の評価替え等)が多数入ります。自己流の概算で意思決定せず、まず税理士に「現在の株価」の算定を依頼する——これが全対策の出発点です

対策メニュー①:株価と税負担への手当て

  • 株価が下がるタイミングを活かす:役員退職金の支給、大型投資や特別損失の計上年度は利益が圧縮され、類似業種比準の評価が下がる傾向があります。「退職金を払って株価が下がった年に後継者へ贈与」は王道の組み合わせです(暦年贈与・相続時精算課税・生前贈与の7年ルール相続時精算課税
  • 行き過ぎた株価対策(実態のない持株会社化・評価差を狙うだけの資産組み替え)は、税務当局に否認されるリスクがあります(総則6項)。「事業上の合理性がある施策の結果として株価も下がる」順序を守ってください
  • 納税資金:①会社が後継者から株を買い取る「金庫株(自己株式取得)」——相続株式を相続税の申告期限後3年以内に会社へ売る場合、みなし配当課税ではなく譲渡所得課税(約20%)で済む特例があり、納税資金づくりの定番です ②経営者の死亡保険金(契約者・受取人を会社にして死亡退職金の原資に/個人契約なら非課税枠・生命保険の非課税枠)③相続税の納税猶予(事業承継税制

対策メニュー②:経営権と家族の公平への手当て

  • 遺言は必須:「自社株はすべて後継者○○に相続させる」と指定し、分散を防ぎます(自筆証書遺言の書き方)。遺留分対策として、他の相続人には自宅・預金・保険金を割り当て、付言で理由を書く——ここまでがセットです
  • 経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法特例」:推定相続人全員の合意+手続きにより、後継者へ贈与した自社株を遺留分の計算から除外(除外合意)または合意時の評価額に固定(固定合意)できます。株価が今後上がる会社ほど固定合意の価値は大きい、知られざる強力ツールです
  • 家族信託・種類株:認知症による議決権の凍結対策と段階的な承継には、自社株の家族信託(議決権は後継者、配当は現経営者のまま・自社株の家族信託や、拒否権付株式(黄金株)・議決権制限株式の設計が使えます
  • これらは単品ではなく「遺言+税制または信託+資金対策」の組み合わせで初めて機能します。着手の合図は「社長が60代になったら」——健康と判断能力があるうちだけの選択肢が多いためです(認知症の口座凍結と同じ構造)
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よくある質問(FAQ)

うちは小さな会社ですが、それでも対策が必要ですか?

会社規模より「純資産と利益の蓄積」と「相続人の構成」で決まります。長年黒字で内部留保が厚い会社は、社屋・工場の含み益も乗って評価が想像以上になりがちです。逆に評価が低くても、株が兄弟に分散すれば経営権の問題(リスク②)は同じように起きます。まず税理士に株価算定を依頼し、「税の問題」か「分散の問題」か、うちはどちらが主戦場かを見極めてください。

亡くなった父の会社の株を相続しましたが、経営には関与しません。買い取ってもらえますか?

会社や後継者に買い取り義務はなく、交渉次第です(定款に相続人等に対する売渡請求の定めがあれば会社側から強制取得される場合もあります)。交渉の土俵に乗せるには、あなたの立場での評価(配当還元か原則的評価かは持株比率等で変わる)を専門家に算定してもらい、金庫株の税特例(申告期限後3年以内)の期限内に話をまとめるのが双方にとって合理的です。感情がもつれやすい類型なので、税理士・弁護士を早めに間に入れることをおすすめします。

株主名簿に、昔お金を出してもらった親戚の名前が残っています(名義株)。

放置は危険です。名義株(実際の出資者と名義人が違う株)は、相続のたびに「誰の遺産か」の争いの種になり、事業承継税制の適用や M&A の際の障害にもなります。実質の株主が誰かを整理し、名義人(またはその相続人)から書面で確認を取り、必要なら買い取り・贈与で名義と実質を一致させておく——オーナーが元気なうちにしかできない社内整理の筆頭です。

まとめ

  • 自社株は「売れないのに高評価」。納税資金・分散・遺留分の3大リスクを生む
  • 評価は同族株主なら類似業種比準×純資産、少数株主なら配当還元。誰が取るかで額が変わる
  • 資金対策は金庫株特例・保険・納税猶予。経営権対策は遺言+民法特例+信託・種類株
  • 出発点は税理士による株価算定。対策は社長の健康と判断能力があるうちだけ

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

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