ホームゾウゾクノート / 受益者が亡くなったら家族信託はどうなる?

信託の運用中

受益者が亡くなったら家族信託はどうなる?終了と継続

公開日 2026年8月30日 ・ 更新日 2026年8月30日 ・ 9分で読めます

家族信託の受益者——多くの場合は委託者でもある親本人——が亡くなった。信託はこれで終わりなのか、それとも続くのか。遺された受託者(子)が最初に直面する問いです。

答えは法律の一般論ではなく、あなたの家の信託契約書にすでに書かれています。この記事は受益者が亡くなった後の実務を流れで解説します。なお「受託者側が先に亡くなった」場合は「受託者が先に亡くなったら家族信託はどうなる?」を、受益者を連続させる制度の設計は「受益者連続型信託とは?」をご覧ください。この記事は発生後の手続きに絞ります。

この記事の要点

①受益者の死亡で信託が終了するか継続するかは、信託契約書の「終了事由」と「受益者の定め」で決まっている ②終了する場合は清算——債務と費用を精算し、残った財産を帰属権利者に引き渡し、不動産は登記を移す ③受益者連続型なら、受益権が次順位の受益者(配偶者や子)へ移って信託は続く。受託者は帳簿と報告を継続 ④どちらでも税金は発生し得る。財産を受け取る人に相続税の課税がめやす。登記・申告は専門家と進める

分かれ目は契約書——終了か、継続か

受益者が亡くなったら、まず信託契約書の2つの条項を開きます。

  • 信託の終了事由——「委託者兼受益者の死亡により終了する」とあれば、信託は終了し、清算の段階に入ります
  • 受益者の定め——「受益者死亡後は配偶者を第二受益者とする」のような定めがあれば受益者連続型で、信託は次の受益者のもとで続きます

受託者がすべきことは、この2条項の確認と、関係者(家族・専門家)への共有です。登場人物の整理があやふやなときは「委託者・受益者とは?」で確認してから進めると迷いません。あわせて、死亡直後も信託口口座は凍結されないのが通常のため、葬儀や医療費の支払いに信託財産を使えるかも契約の定めを確認してください。

終了する場合——清算から引き渡しまでの流れ

  1. 清算受託者として財産を確定する——終了時の財産・債務の一覧を作ります。日々の帳簿がここで効きます
  2. 債務と費用を精算する——未払いの医療費・管理費・専門家報酬などを信託財産から支払います
  3. 残った財産を帰属権利者へ引き渡す——契約書で決めた帰属権利者(「残余財産は長男に帰属させる」など)に、預金や不動産を引き渡します
  4. 不動産の登記と最終の報告——信託登記を抹消し、帰属権利者への所有権の登記を行います。最後に清算の結果を関係者へ報告して締めます

契約書に帰属権利者の定めがない場合、残余財産の行き先は法律の順序で決まり、相続人どうしの話し合いが必要になることもあります。定めの有無で難易度が大きく変わるポイントです。

継続する場合——次の受益者への引き継ぎ

受託者がやること内容
受益権の移動の確認契約の定めどおり、受益権が第二受益者(配偶者など)へ移ったことを関係者と共有する
登記の変更信託目録の受益者の記載を変更する登記を行う。司法書士に依頼するのが通例
管理と報告の継続新しい受益者のために財産管理・帳簿・報告を続ける。使い道の中心が変わる(例:父の介護費用→母の生活費)ことに注意
契約の点検次の死亡時にどうなるか(さらに続くのか終了か)を確認し、必要なら専門家に相談する
継続時の実務のめやす(2026年8月時点)。

受益者連続型には、信託を続けられる期間の上限(いわゆる30年ルール)もあります。長く続く設計の家は、どの死亡で終了に向かうのかを早めに専門家と確認しておくと安心です。

税金と登記——どちらの場合も避けて通れない

税金の考え方はシンプルに言えばこうです。受益者の死亡によって財産(または受益権)を受け取った人に、相続税の課税がめやす——終了して帰属権利者が財産を受け取っても、継続して第二受益者が受益権を引き継いでも、相続で財産をもらったのと同じ扱いで課税対象になり得ます。申告期限は死亡から10か月。信託の内容によって評価や特例の可否が変わるため、税理士への早めの相談が前提です(終了時の税の詳細は「家族信託が終了したときの税金」)。

もうひとつ、この経験は「次の設計」の材料になります。清算までやり切った受託者は、帰属の定めの大切さや帳簿の効き目を体で知っています。自分の代の備え——契約の見直しや財産の追加——を考える最良のタイミングでもあります(財産を後から足す方法は「追加信託とは?」)。

信託を続ける家は、契約の点検と財産の追加をこの機会に——現金を信託に足しておけば、第二受益者のための支払いが止まりません。追加信託契約書の下書きを無料でつくれます。

追加信託契約書をつくる

よくある質問(FAQ)

受益者が亡くなったら、信託口口座はすぐ凍結されますか?

通常の預金口座と違い、受益者の死亡で信託口口座が直ちに凍結されることはないのが原則です。口座の名義人は受託者であり、信託契約にもとづく管理が続いているからです。だからこそ、葬儀費用や未払いの医療費を信託財産から支払える設計にしておくと、家族は当面のお金に困りません。ただし支払ってよいかは契約の定めによります。支出の前に契約書を確認し、記録を残して進めてください。

信託が終了した場合、残った財産は遺産分割の対象になりますか?

契約書に帰属権利者の定めがあれば、財産はその人に帰属し、その部分について遺産分割協議は不要です。ここが家族信託の大きな利点で、遺言と同じように行き先を決めておけます。一方、帰属の定めがない場合は、残余財産の行き先を法律の順序で決めることになり、相続人間の話し合いが必要になることもあります。契約書を確認し、定めがない・あいまいな場合は早めに専門家へ相談してください。

第二受益者になった母にも、税金はかかりますか?

かかり得ます。受益者連続型で受益権を引き継いだ人は、相続で財産を取得したものとみなして相続税の課税対象になるのがめやすです(2026年8月時点)。信託が続いていても、税務上は「財産が移った」と扱われる点が直感に反しやすいところです。配偶者の税額軽減など通常の相続の仕組みが使えるかは信託の内容にもよるため、申告期限10か月を見据えて、信託に明るい税理士へ早めに相談してください。

受託者だった私は、清算が終わったら何をすればいいですか?

最後の仕事は締めの報告と記録の保管です。清算の結果(財産の一覧・精算の内訳・引き渡しの内容)を関係者に報告し、帳簿や領収書は後日の照会に備えて保管します。ここまでやって受託者の任務は完了です。そしてもうひとつ——親の信託を最後まで動かした経験は、あなた自身の老後設計の最高の教材です。帰属の定めの大切さ、帳簿の効き目。同じ仕組みを自分の代でも早めに備えることをおすすめします。

まとめ

受益者が亡くなったときの家族信託は、契約書の「終了事由」と「受益者の定め」がすべてです。終了なら、財産の確定・精算・帰属権利者への引き渡し・登記という清算の流れ。継続なら、受益権の移動と登記変更、そして新しい受益者のための管理の継続。どちらでも、財産や受益権を受け取った人に相続税の課税があり得ます。申告期限10か月から逆算し、司法書士・税理士と早めに段取りを。日々の帳簿と記録が、この最後の場面であなたを助けます

信託を続ける家は、財産の追加をこの機会に

現金を信託に足しておけば、次の受益者のための支払いが途切れません。追加信託契約書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。登録不要・ブラウザだけで完結します。

あわせて読みたい

この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務・保険の個別助言を行うものではありません。商品の内容や制度の適用可否は個別の事情により異なります。実行にあたっては必ず専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)