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相続発生後

海外に資産がある人の相続|プロベイトと国内手続き

公開日 2026年8月30日 ・ 更新日 2026年8月30日 ・ 9分で読めます

亡くなった親に、海外勤務時代の銀行口座があった。ハワイの別荘を持っていた。海外の証券会社で運用していた——海外にある資産は、日本の戸籍と遺産分割協議書を持って行っても、そのままでは動かせません

資産のある国のルールで、その国の手続きを踏む必要があるからです。国によってはプロベイトと呼ばれる裁判所の手続きに年単位の時間がかかります。なお「相続人が海外に住んでいる」場合の話は「海外在住の相続人がいる相続手続き」で扱っており、この記事は「財産が海外にある」場合の解説です。

この記事の要点

①海外資産は所在国のルールで手続きする。日本の書類一式だけでは銀行も不動産も動かない ②アメリカなど一部の国では、裁判所が関与するプロベイトという遺産整理手続きが必要で、完了まで1〜3年かかることもある ③日本に住む相続人は、原則として海外の財産も含めた全世界の財産に日本の相続税がかかる。申告期限10か月は海外分も同じ ④最大の備えは財産目録。国・金融機関・資産の種類が書いてあるだけで、家族の初動がまったく変わる

なぜ厄介なのか——手続きが国ごとに別になる

相続の手続きは「財産がある国のルールに従う」のが世界の基本です。つまり海外に資産があると、日本国内の相続手続きと、資産所在国の手続きを並行して進める二正面作戦になります。

項目日本国内の資産海外の資産
使う書類戸籍・遺産分割協議書・印鑑証明など所在国所定の書類。日本の戸籍は翻訳や認証を求められる
手続きの相手金融機関・法務局現地の金融機関・登記機関。国によっては裁判所(プロベイト)
期間のめやす数週間〜数か月数か月〜数年。プロベイトの国では長期化しやすい
専門家司法書士・税理士など現地の弁護士等が必要になることが多い
二正面作戦のめやす(2026年8月時点)。制度は国・州ごとに大きく異なります。

戸籍のように相続人を一枚で証明できる仕組みがない国が多く、「日本の常識」が通じない前提で段取りを組む必要があります(国内側の戸籍集めは「相続で必要な戸籍の集め方」)。

プロベイトとは——裁判所を通す遺産整理

アメリカの多くの州などで採用されているのがプロベイト(検認裁判)です。裁判所の監督のもとで遺産管理人が選ばれ、財産の確定・債務の清算を経てようやく相続人に分配される——この間、原則として遺族は財産に手を付けられず、完了まで1〜3年かかることも珍しくありません。現地の弁護士費用などのコストもかかります。

一方で、口座の共同名義や受取人の事前指定など、プロベイトを避けるための現地の仕組みが使われている場合は、手続きが大きく簡略化されることもあります。故人がどんな形で資産を持っていたかによって難易度が桁で変わるため、資産の存在が分かったら、まず現地制度に詳しい専門家に「プロベイトが必要な持ち方か」を確認するのが最初の分岐です。

日本の相続税は全世界の財産が対象

手続きは国ごとでも、日本の相続税は原則として全世界の財産が対象です。日本に住んでいる相続人が相続する場合、海外の口座も不動産も、国内の財産と合算して課税されます。押さえる点は3つです。

  1. 申告期限は海外分も同じ10か月——プロベイトが終わっていなくても期限は延びません。評価と申告は並行して進める必要があります
  2. 外貨は死亡日の為替相場で円換算——換算のめやすは死亡日の対顧客電信買相場です。細かな取り扱いは税理士・税務署に確認してください
  3. 現地の税との二重課税は調整の仕組みがある——外国で相続関係の税を納めた場合、日本の相続税から差し引ける制度(外国税額控除)があります。適用の可否や計算は複雑なため、国際相続に対応できる税理士への相談が現実的です
申告漏れは重いペナルティに

海外にあるから分からないだろう、は通用しません。各国の税務当局は口座情報を自動的に交換する仕組みでつながっており、海外口座の存在は日本の国税当局に把握され得ます。意図的な申告漏れは重い加算税の対象です。評価が難しくても、必ず申告に載せる前提で専門家と進めてください。

海外資産の探し方と、生前の備え

存在に気づけるかが最初の関門です。手がかりは、海外からの郵便物やメール・外貨の入金がある国内口座・確定申告書の記載・海外勤務や留学の経歴など。暗号資産の海外取引所(「暗号資産の相続」)も同じ発想で探します。評価の場面では、不動産の現地評価書類なども必要になります(国内不動産の考え方は「相続した土地・建物の評価額の出し方」)。

そして生前の備えの決定版が財産目録に「国・金融機関・資産の種類・おおよその額」を書いておくことです。これだけで家族は探す段階を飛ばし、専門家への相談から始められます。資産が大きい場合は、受取人の事前指定や現地の遺言などプロベイト対策そのものを生前に打てないか、元気なうちに国際相続の専門家へ相談する価値があります。

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よくある質問(FAQ)

海外の銀行口座は、日本の遺産分割協議書があれば解約できますか?

原則できません。海外の金融機関は日本の協議書や戸籍をそのまま受け付けず、所在国のルールに沿った書類と手続きを求めます。国によっては裁判所のプロベイトを経なければ払い戻しに応じません。まず口座のある金融機関に相続の窓口と必要書類を確認し、要求される手続きの重さによっては、現地の弁護士など専門家への依頼を検討してください。

プロベイトにはどれくらいの期間と費用がかかりますか?

国・州や遺産の内容によって大きく異なりますが、完了まで1〜3年かかることも珍しくないとされています。費用も現地の弁護士報酬や裁判所の手数料などがかかり、遺産額に対する割合で報酬が決まる地域もあります。共同名義や受取人の事前指定など、プロベイトの対象外になる持ち方をしていた資産は短期間で動かせる場合もあるため、まず資産の持ち方を確認するのが最初の分岐です。

海外の財産にも日本の相続税がかかりますか?

原則かかります。日本に住んでいる相続人が相続する場合、全世界の財産が日本の相続税の対象です。申告期限は海外分があっても相続開始から10か月で変わりません。外貨は死亡日の為替相場をめやすに円換算し、現地でも相続関係の税を納めた場合は外国税額控除で二重課税を調整できる仕組みがあります(2026年8月時点)。適用条件や計算は複雑なため、国際相続に対応できる税理士に早めに相談してください。

親が海外に資産を持っていそうです。生前に何を聞いておくべきですか?

聞くべきは4つ——①どの国の ②どの金融機関・不動産か ③どんな持ち方か(単独名義か、共同名義や受取人指定があるか) ④書類はどこにあるか。この4つが財産目録に書いてあるだけで、相続時の難易度が大きく下がります。残高や暗証番号まで聞き出す必要はありません。資産の規模が大きいなら、プロベイトを避ける持ち方への変更や現地の遺言について、元気なうちに専門家へ相談してもらうのが最善の備えです。

まとめ

海外資産の相続は、所在国の手続きと日本の相続税申告の二正面作戦です。プロベイトの国では年単位の長期戦を覚悟し、まず「プロベイトが必要な持ち方か」を専門家と確認する。日本側では全世界の財産が課税対象で、申告期限10か月は待ってくれません。二重課税は外国税額控除で調整できます。そして何より、財産目録に国・金融機関・持ち方が書いてあるだけで、家族の初動はまったく変わります。海外資産こそ、生前の一筆が効く分野です。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務・医療の個別助言を行うものではありません。制度の適用可否や手続き、医療機関の運用は個別の事情により異なります。実行にあたっては必ず専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)