介護離職する前に|介護休業・介護休暇の使い方と両立の設計
親の介護が本格化すると、必ず頭をよぎります——「もう仕事を辞めるしかないのでは」。呼び出しは平日の昼間に来るし、有給は底をつくし、職場にも申し訳ない。
けれど、辞める前に知っておいてほしいことがあります。介護離職は、収入が途絶えるだけでなく、介護が終わった後の再就職も難しい。しかも収入がなくなれば、介護費用は親の資産から出すしかなくなり、その資産も減っていきます。この記事では、辞める前に使える制度と、「自分で介護しない」設計への切り替え方を整理します。
①介護休業はまとまった日数を分割取得でき、介護休暇は短時間・単発の用事向け。どちらも要件を満たせば会社は拒めない ②介護休業中は雇用保険の介護休業給付金を受けられる場合がある ③休業は「自分で介護する期間」ではなく「介護の体制を作る期間」 ④辞める前に、サービス増・施設・分担・勤務形態の4点を確認する
介護離職が割に合わない理由
理由は3つあります。
①収入が途絶える——介護は何年続くか読めません。終わりの見えない支出を、収入なしで支えることになります。
②再就職が難しい——介護が終わったとき、離職前と同じ条件の職に戻れるとは限りません。ブランクと年齢が壁になります。
③親の資産も減る——子の収入がなくなれば、生活費も介護費も親の資産から出すことになります。介護のために辞めたことで、介護に使えるお金が減るという逆転が起きます。
「自分がやらないと」という責任感は自然なものですが、専従になると視野が狭くなり、サービスを使う選択肢が見えなくなります。介護でいちばん枯渇しやすい資源は、お金でも時間でもなく、担う人の余力です。倒れれば、そこで介護そのものが止まります。
使える制度——休業・休暇・勤務の調整
| 制度 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族一人につき、まとまった日数を分割して取得できる | 体制づくり、施設探し、退院直後の調整 |
| 介護休暇 | 年単位で日数が決まり、時間単位でも取得できる仕組みがある | 通院の付き添い、役所や銀行の手続き |
| 勤務の調整 | 短時間勤務、時差出勤、在宅勤務など。会社は措置を講じることとされている | 日常的に時間の融通が必要 |
| 所定外労働の制限 | 請求により残業を免除される仕組みがある | 夕方以降の対応が必要 |
| 介護休業給付金 | 雇用保険から、休業前の賃金をもとに一定割合が支給される | 休業中の収入の補填 |
これらは法律に基づく制度で、要件を満たせば会社は取得を拒めず、介護を理由とする不利益な取扱いも禁止されています。「うちの会社にはない」と言われた場合でも、法定の制度は適用されます。
介護休業の正しい使い方
最大の誤解がここです。介護休業は「自分で介護する期間」ではありません。「介護の体制を作る期間」です。休業して自分が付きっきりになると、休業が明けた瞬間に元の行き詰まりが戻ってきます。
休業中にやるべきことは——
- 要介護認定の申請と、ケアプランの作成(要介護認定の申請から結果まで)
- ケアマネジャーとの関係づくり。日常の連絡経路を確立する
- サービスの試用。デイサービスやヘルパーを実際に使い、本人に慣れてもらう
- 施設の下見。将来の選択肢を先に見ておく(施設の種類と費用)
- お金と分担の家族会議(介護のお金の家族会議/兄弟の分担)
分割して取得できるのが、この制度の使いどころです。最初の立ち上げに一度、状態が大きく変わったときにもう一度——そうした使い方が実務に合っています。
会社への伝え方と、辞める前の4つの確認
会社へは早めに、セットで。親の状況、想定される期間、使いたい制度、業務の引き継ぎ案。この4点を揃えて相談すれば、突然の欠勤が続くよりはるかに前向きな話になります。
それでも限界だと感じたときは、辞める前に次の4点を確認してください。①介護サービスの利用量を増やせないか②施設の利用を前倒しできないか③兄弟や親族と分担を組み直せないか④短時間勤務・在宅勤務・休職で凌げないか。
そして根本の話をひとつ。仕事を辞めるかどうかの前に、親のお金が使える状態になっているかを確認してください。判断能力が落ちれば預金も実家も動かせなくなり、そのしわ寄せは子の収入に来ます(できなくなること一覧)。親の資産が使えるなら、サービスを増やして仕事を続けられる——離職を避ける最大の備えは、実はここにあります(4制度の比較)。
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家族会議シートをつくるよくある質問(FAQ)
介護休業と介護休暇は何が違うのですか?
期間と使い方が違います。介護休業は対象家族一人につきまとまった日数を分割して取得できる制度で、体制づくりのようにまとまった時間が必要な場面に向きます。介護休暇は年単位で日数が決まっており、通院の付き添いや手続きなど短時間・単発の用事に使うもので、時間単位で取得できる仕組みもあります。どちらも法律に基づく制度で、要件を満たせば会社は取得を拒めません。日数や要件は改正されることがあるため、最新の内容は勤務先か都道府県労働局にご確認ください。
介護休業中は無給ですか?生活できるか不安です。
会社からの給与は支給されないことが一般的ですが、雇用保険から介護休業給付金を受けられる場合があります。休業前の賃金をもとに一定割合が支給される仕組みで、要件や支給率、上限額が定められています。申請は勤務先を通じて行うのが通常です。あわせて、休業中の社会保険料の扱いも会社に確認しておいてください。金額と要件は改定されることがあるため、取得前にハローワークか勤務先で自分の場合の見込み額を確認するのが確実です。
会社に迷惑をかけそうで、言い出しにくいです。
早めに伝えるほど、会社にとっても対応しやすくなります。突然の欠勤が続くほうが業務への影響は大きく、事前に相談があれば引き継ぎや配置の調整ができるからです。伝える際は、親の状況、想定される期間、使いたい制度、業務の引き継ぎ案をセットで示すと話が進みます。介護を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されており、両立支援の窓口を設けている会社も増えています。まずは人事や上司に、相談という形で切り出してください。
それでも仕事を続けられそうにありません。辞めるべきですか?
最後の手段と考えてください。介護離職は収入が途絶えるだけでなく、介護が終わった後の再就職も容易ではなく、結果として自分の生活と親の資産の両方を痩せさせることが多い選択です。辞める前に確認したいのは、サービスの利用量を増やせないか、施設の利用を前倒しできないか、兄弟や親族と分担を組み直せないか、短時間勤務や在宅勤務が使えないかの4点。それでも難しい場合は、退職ではなく休職や勤務形態の変更で切り抜けられないかを会社と相談してください。
まとめ
介護離職は収入・再就職・親の資産の3方向で不利になる選択です。辞める前に、介護休業・介護休暇・短時間勤務・所定外労働の制限という法定の制度があり、休業中は介護休業給付金を受けられる場合があります。そして肝心なのが使い方——介護休業は自分で介護する期間ではなく、介護の体制を作る期間です。会社へは早めに4点セットで相談を。そして根本の備えは、親の資産を使える状態にしておくこと。それができていれば、サービスで補って仕事を続けられます。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。