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家族信託に贈与税はかからない?自益信託が非課税になる理由と、課税される3つのパターン

公開日 2026年8月16日 ・ 更新日 2026年8月16日 ・ 8分で読めます

「家族信託では、不動産や預金の名義を子に移すのに贈与税がかからない」――初めて聞くと、うますぎる話に思えるかもしれません。結論から言うと、これは本当です。親が受益者であり続ける「自益信託」なら、名義がいくら移っても贈与税は一切かかりません。

ただし、それには税務上の明確な理屈があり、設計を一歩間違えると「みなし贈与」として課税されるパターンも存在します。この記事では、非課税になる理由と、課税される3つのパターン、信託にかかる他の税金までを整理します。

結論:税金は「名義」ではなく「受益者」で決まる

  • 税務では、財産の持ち主を登記や口座の名義(受託者)ではなく、その財産から利益を受ける人(受益者)で判定します。これを実質所得者課税・受益者課税の原則といいます
  • 一般的な家族信託は、親が委託者兼受益者、子が受託者という形(自益信託)です。名義は子に移りますが、財産の利益(自宅に住む権利・賃料・売却代金)はすべて親のまま
  • つまり経済的な利益は誰にも移転していないため、贈与税の課税対象となる「贈与」がそもそも存在しない――これが非課税の理屈です
  • 同じ理由で、不動産を信託しても不動産取得税はかかりません。かかるのは信託登記の登録免許税だけです

課税される3つのパターン

家族信託と贈与税の図。自益信託は非課税、他益信託・受益者の変更・受益権の贈与の3パターンは課税されることを示す
図:家族信託と贈与税 ― 非課税の原則と課税される3パターン。税金は「名義」ではなく「受益者」で決まります。

パターン①:他益信託(受益者を親以外にした場合)

契約の当初から受益者を子や孫にすると、委託者から受益者への「みなし贈与」となり、信託した財産の全額に贈与税がかかります(相続税法9条の2)。「どうせ子に渡すのだから受益者も子に」と安易に設計すると、年110万円の基礎控除をはるかに超える贈与税が一度に発生します。認知症対策が目的なら受益者は必ず親本人にします。

パターン②:受益者を途中で変更した場合

信託の途中で受益者を親から子へ変更すると、その時点で親から子への贈与とみなされます。変更の手続きが簡単でも、税金は容赦なく発生します。

パターン③:受益権を贈与・売買した場合

受益者の地位(受益権)そのものを子に贈与すれば当然贈与税の対象です。逆にこれを利用して、受益権を毎年110万円の範囲で少しずつ移す・相続時精算課税で移すといった生前贈与の設計に使うことも可能ですが、税理士の関与が前提です。

「かからない」の正確な意味――課税の繰延べ

  • 自益信託の非課税は、税金が消えるのではなく「移転がまだ起きていない」だけです。親が亡くなって信託が終了し、財産が子(帰属権利者)に渡るとき、通常の相続と同じように相続税の対象になります
  • 家族信託そのものには相続税の節税効果はありません。「信託すれば相続税が安くなる」という営業トークがあれば疑ってください
  • 信託終了時の課税の詳細(相続税・登録免許税・不動産取得税)はこちらの記事で解説しています

贈与税以外に信託でかかる税金・かからない税金

  • かかるもの:信託登記の登録免許税(建物0.4%・土地0.3%)。賃貸物件なら毎年の固定資産税・所得税はこれまでどおり親に課税
  • かからないもの:贈与税・不動産取得税(自益信託の場合)。信託契約書は印紙税200円のみ
  • 賃料など年3万円超の収益がある信託は、受託者が毎年1月31日までに「信託の計算書」を税務署に提出します(税金の支払いではなく報告書類です)
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よくある質問(FAQ)

税務署への届出は必要ですか?

自益信託(委託者=受益者)の設定時は、税務署への調書提出は不要です。受託者が「信託に関する受益者別調書」を提出するのは、他益信託の設定・受益者の変更・信託の終了など、利益の移転が起きる場面に限られます。

名義が子に変わったら、税務署から贈与を疑われませんか?

心配いりません。信託による所有権移転登記には「信託」という登記原因と信託目録が記録され、贈与や売買との区別が登記簿上で明確につきます。税務署も受益者課税の原則で判定するため、自益信託の登記が贈与と誤認されることはありません。

孫を受益者に入れて教育資金を渡す設計はできますか?

可能ですが、その部分は他益信託としてみなし贈与課税の対象になります。基礎控除110万円・相続時精算課税・生前贈与の7年ルールとの組み合わせ設計になるため、必ず税理士に試算を依頼してください。

まとめ

  • 税務は名義ではなく受益者で判定。親が受益者のままの自益信託なら贈与税・不動産取得税ゼロ
  • 課税されるのは3つ:当初から他益信託/受益者の途中変更/受益権の贈与・売買
  • 非課税は「繰延べ」。親の死亡で財産が子に渡るときは通常どおり相続税の対象
  • 信託に節税効果はない。節税をうたう提案は要注意

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

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ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供です。個別の税務判断は税理士にご確認ください(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。