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境界が不明な土地の相続・売却|確定測量の費用と進め方
実家の土地を売ろうとしたら「境界が確定していないので、まず測量を」と言われた。塀があるだけで杭も図面もない——古い宅地では珍しくない状況です。境界が不明でも相続登記と相続税申告はできますが、売却・分筆・国庫帰属は境界確定が前提になります。
境界の考え方、確定測量の内容・費用・期間、隣地が協力しないときの手段、遺産分割との順序と費用負担を整理します。相続した不動産の売却全般は「相続した不動産を売却したときの税金」をどうぞ。
①境界には登記上の区画線「筆界」と、隣人同士の認識である「所有権界」があり、古い土地ではずれていることがある ②相続登記と相続税申告は登記簿の地積で進められ、境界確定は不要。必要なのは売却・分筆・国庫帰属のとき ③確定測量は土地家屋調査士が隣地所有者全員の立会いのもと境界を確認し、境界標を設置して測量図を作る作業。費用40万〜80万円程度、期間3〜6か月 ④隣地が応じないときは法務局の筆界特定制度、それでも決着しなければ境界確定訴訟。遺産分割の前に測量し、費用は換価分割なら売却代金から、現物分割なら取得者が負担するのが一般的
境界の考え方——筆界と所有権界
「境界」には2つの意味があります。筆界は登記記録上、土地の筆を区切る線で、当事者の合意では動かせない公的な線。所有権界は隣人同士が「ここまでが自分の土地」と認識している私法上の線で、合意や時効で動くことがあります。
両者は一致するのが原則ですが、古い土地では公図の精度が低く、塀や垣根が筆界からずれて建てられていることがあります。「境界が不明」とは、この筆界の位置を示す境界標(杭・プレート)や測量図がなく、隣地との認識も確認されていない状態を指します。相続した土地に多いのは、何十年も売買がなく確認の機会がなかったからです。
測量が要る場面・要らない場面
| 場面 | 測量 | 理由 |
|---|---|---|
| 相続登記 | 不要 | 登記簿の地積のまま名義変更できる |
| 相続税申告 | 不要 | 登記簿の地積で評価する |
| 売却 | 必要 | 買主・仲介会社が確定測量図と境界確認書を求めるのが一般的。未確定だと値下げや契約不成立に |
| 分筆(土地を分けて相続・売却) | 必要 | 分筆登記には確定測量が前提 |
| 国庫帰属 | 必要 | 境界が明らかでない土地は却下要件 |
つまり、「相続しただけ」なら測量は要らず、「動かす(売る・分ける・手放す)」なら要る。売却の予定があるなら、相続登記と並行して測量に着手すると、売り出しまでの時間を短縮できます(「相続土地国庫帰属制度とは」)。
確定測量の内容・費用・期間
確定測量は土地家屋調査士に依頼します。①公図・地積測量図・隣地の登記を調べる、②現地を測量する、③隣地所有者全員の立会いで境界を確認する、④前面道路が公道なら市区町村と官民査定を行う、⑤境界標を設置し、確定測量図と境界確認書(隣地の署名押印)を作る、という流れです。
- 費用——40万〜80万円程度。接する土地の数、面積、官民査定の有無で増減する
- 期間——3〜6か月。隣地との日程調整や官民査定で伸びる
- 現況測量との違い——現況測量は立会いなしに塀や杭を測るだけで10万〜20万円・数週間。おおよその面積はわかるが、売却の「確定測量図」にはならない
隣地の所有者が高齢で、境界を知っているうちに立会いをしてもらう——これが実務の要です。隣地も相続で代替わりすると、双方が境界を知らない者同士になり、確定が格段に難しくなります。
隣地が協力しないとき・遺産分割との順序と費用負担
隣地が立会いに応じない、境界の位置に異議がある場合の手段は2段階です。
- 筆界特定制度——法務局に申請し、筆界特定登記官が調査をもとに筆界の位置を特定する。隣地の同意は不要で、費用は手数料(数千〜数万円)+測量費用(数十万円)、期間は数か月〜1年。売却の場面で確定測量図に代わる資料として扱われることが多い
- 境界確定訴訟——筆界特定でも決着しない、または所有権界を争うときは地方裁判所での訴訟。判決で境界が確定する
遺産分割は先に測量して面積を確定し、それから分け方を決めるのが基本です。費用は、換価分割なら売却代金から差し引き、現物分割なら取得者が負担するのが一般的で、協議書に負担者を明記しておくと揉めません。測量の完了を待たずに協議書を作るなら、「面積が変わっても分割の割合は変えない」旨を定めておく方法もあります(「換価分割とは」)。
測量費用の負担者も、協議書に——境界確定の費用を誰が持つか、面積が変わったらどうするかまで定めた遺産分割協議書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。
遺産分割協議書をつくるよくある質問(FAQ)
測量したら、登記簿の面積より実際が広いことがわかりました。相続税は変わりますか?
相続税の評価は原則登記簿の地積ですが、実測面積が明らかに異なる場合は実測で評価するのが本来の扱いです。申告前に測量が済んでいれば実測で申告し、申告後に判明したなら修正申告や更正の請求を検討します。登記簿の面積を実測に合わせる「地積更正登記」をしておくと、売却時の説明も楽になります。
隣地の所有者が亡くなっていて、相続人がわかりません。
土地家屋調査士が隣地の登記や戸籍の附票から相続人を調査し、連絡を試みます。判明しない場合は立会いなしで進められる筆界特定制度が現実的です。法務局が隣地に通知したうえで手続きを進め、隣地の意見がなくても筆界を特定できます。買主や仲介会社に筆界特定を経たことを説明すれば、多くの場合は取引が進みます。時間がかかるため早めに着手してください。
測量前に売却の契約をしてもよいですか?
「確定測量を売主負担で引き渡しまでに完了させる」条件付きの契約は一般的です。ただし面積が大きく違えば代金の精算が必要になり、境界が決まらなければ引き渡しができないリスクがあります。契約書に代金精算の方法と、確定できなかった場合の解除条項を入れておいてください。買主が「公簿売買」(登記簿の面積で売買し測量なし)に応じるなら測量費をかけずに売れますが、価格は下がるのが通常です。
境界確定の費用は、相続人の誰が払うべきですか?
法律上の決まりはなく、相続人の合意で決めます。売って分ける場合は売却代金から差し引いて全員で負担、特定の相続人が取得する場合はその人が負担するのが一般的な考え方です。測量が相続財産全体の管理のためなら、相続財産から支出して協議書に記載します。誰かが立て替えた場合は、協議書に精算の方法を書いておかないと後で揉めます。国庫帰属のために測量する場合も同じで、手放すための費用を誰が持つかを最初に決めてから進めてください。
まとめ
境界には登記上の筆界と隣人の認識である所有権界があり、古い土地ではずれていることがあります。相続登記と相続税申告に測量は不要、売却・分筆・国庫帰属には確定測量が必要——費用40万〜80万円、期間3〜6か月がめやすで、隣地所有者の立会いが要です。協力が得られなければ筆界特定制度、それでも決着しなければ境界確定訴訟。隣地が代替わりする前に、境界を知る人がいるうちに確定することが最大の対策で、遺産分割は測量で面積を確定してから、費用の負担者を協議書に明記してください。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。