任意後見の費用|契約時・発動後・監督人報酬まで総額のめやす
任意後見は「元気なうちに、将来の後見人を自分で選んでおく」制度です。費用については「契約のとき公証役場に払う分」だけが語られがちですが、実際には契約時・発動時・発動後の三段階でかかり、発動後の費用は本人が亡くなるまで続きます。
この記事では、三段階それぞれの費用のめやすと総額、家族が受任する場合に抑えられる部分・抑えられない部分、法定後見や家族信託との比較を整理します。制度の流れは「任意後見制度の始め方」、法定後見の費用は「成年後見制度の費用はいくら?」をどうぞ。
①契約時:公証人手数料・登記嘱託・印紙代で2万〜3万円程度。専門家に契約書案を頼めば報酬5万〜15万円程度が加わる ②発動時:監督人選任の申立て費用(数千円)、診断書(数千〜1万円)、鑑定が必要なら5万〜10万円程度 ③発動後:任意後見監督人の報酬が月1万〜3万円程度(家庭裁判所が決定)。受任者が専門職なら別途月2万〜3万円程度、家族なら無報酬も可。監督人報酬は必ず発生し、亡くなるまで続く ④総額は家族受任・発動10年で150万〜400万円程度。抑えるには家族受任・家族信託との併用で監督対象財産を減らす
費用の全体像——契約時・発動時・発動後の三段階
任意後見の費用が見えにくいのは契約から発動まで何年も空くからです。契約時の費用は一度きりですが、発動するとそこから毎月の費用が始まり、亡くなるまで止まりません。
| 段階 | かかる費用 | めやす |
|---|---|---|
| 契約時 | 公証人手数料・登記嘱託・印紙代/専門家報酬(契約書案の作成) | 自分で案文を用意すれば2万〜3万円程度、専門家に頼めば10万円台 |
| 発動時 | 監督人選任の申立て費用・診断書・(必要な場合)鑑定 | 1万〜2万円程度、鑑定があれば+5万〜10万円 |
| 発動後 | 任意後見監督人の報酬/受任者の報酬(専門職の場合)/実費 | 監督人:月1万〜3万円程度。受任者:家族なら無報酬も可、専門職なら月2万〜3万円程度 |
契約時と発動時の費用の内訳
契約時の中心は公証役場の費用です。公証人手数料は1契約につき11,000円、登記嘱託と印紙代・郵送費で数千円ずつ。合計2万〜3万円程度です。見守り契約や財産管理委任契約を同時に結ぶ場合は契約ごとに手数料が加わります(「見守り契約とは」)。
これに、契約書の案文を専門家に作ってもらう場合の報酬5万〜15万円程度が加わります。自分で下書きを用意してから相談すれば、依頼範囲を確認と公証役場対応に絞れます。
発動時は、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。収入印紙・登記手数料・郵便切手で数千円、診断書が数千〜1万円。鑑定が行われる場合は5万〜10万円程度が加わりますが、任意後見では省略されることも多いです。
発動後の費用——監督人報酬は必ず発生し、一生続く
発動後の費用で最も重要なのが任意後見監督人の報酬です。任意後見が発動すると、必ず家庭裁判所が監督人(弁護士・司法書士などの専門職)を選任し、受任者の仕事をチェックします。この監督人に払う報酬は家族が受任していても必ず発生し、本人が亡くなるまで続きます。
金額は家庭裁判所が管理財産の額などで決め、めやすは月1万〜3万円程度。受任者が専門職なら受任者報酬(月2万〜3万円程度が多い)も加わります。家族が受任者なら契約で無報酬と定めることができ、実務でもそうする家が多数です。
ここが任意後見の費用の核心です。「家族に頼むから費用はかからない」は半分だけ正しく、監督人報酬の分は必ず出ていきます。発動から10年なら120万〜360万円。この負担が「発動をためらう」原因にもなっています(「後見人制度とは」)。
総額のめやすと、抑える方法・他制度との比較
家族受任・専門家に契約書作成を依頼・発動後10年のケースで、契約時10万円+発動時2万円+監督人報酬120万〜360万円=おおむね150万〜400万円程度。専門職受任なら受任者報酬が10年で240万〜360万円上乗せされます。
- 家族が受任し、無報酬にする——最も大きな圧縮。受任者報酬をゼロにできる
- 契約書の下書きを自分で用意する——専門家報酬を確認の範囲に絞る
- 家族信託と併用し、監督対象の財産を減らす——不動産や大口の預金を信託に移せば、任意後見で管理する財産が減り、監督人報酬の算定基礎も小さくなる。信託でできない身上監護(施設契約など)だけを任意後見に残す設計(「家族信託と任意後見は併用できる?」)
法定後見は専門職後見人がつけば月2万〜6万円程度の報酬が続くのに対し、任意後見は家族受任なら監督人報酬だけで済み、後見人を自分で選べます。費用の差より「誰に任せるかを自分で決められる」ことが任意後見の価値です。発動後の月額を家族で共有し、契約時に費用の見通しも書き残しておいてください。
契約書の下書きを自分で用意すれば、専門家費用は絞れます——任せる内容(代理権目録)と受任者・報酬の定めを整理した任意後見契約書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。
任意後見契約書をつくるよくある質問(FAQ)
任意後見の費用は誰が払うのですか?
契約時の費用は本人が払うのが一般的で、発動後の監督人報酬・受任者報酬・実費は本人の財産から支払います。受任者や家族が自分の財産から負担する必要はありません。本人の財産が少なく支払いが難しい場合、家庭裁判所は財産状況を考慮して報酬額を決めるため、事情を申立ての段階で伝えてください。
発動しないまま本人が亡くなったら、契約時の費用は無駄ですか?
契約時の2万〜15万円は戻りませんが、「判断能力が低下したときに誰が動くか」が決まっていた安心の対価です。実際、任意後見契約の多くは発動しないまま終わります。それを前提に、契約時の費用を抑える(自分で下書きを用意する)、見守り契約や財産管理委任契約と組み合わせて元気なうちから受任者に役割を持たせる、といった設計にすると、契約の価値を発動前から活かせます。
監督人の報酬を安くしてもらうことはできますか?
監督人報酬は家庭裁判所が管理財産額・監督の実態を踏まえて決めるもので、本人や受任者が金額を指定することはできません。ただし、管理財産の額が小さければ報酬も低くなる傾向があるため、不動産や大口の預金を家族信託に移して任意後見の管理対象を減らすことが、間接的に監督人報酬を抑える方法になります。また、受任者が帳簿と報告をきちんと整えて監督人の手間を減らすことも、報酬の判断に影響することがあります。
家族信託と任意後見、費用だけで比べるとどちらが安いですか?
初期費用は家族信託のほうが高く(不動産があれば30万〜80万円程度)、その後の費用は家族信託のほうが安い(監督人がおらず、家族受託者なら報酬なし)のが一般的です。10年以上続くなら家族信託の総額が下回ることが多いものの、家族信託では施設入所の契約など身上監護ができません。財産管理は信託、身上監護は任意後見、と分けて併用する設計が現実的です。
まとめ
任意後見の費用は契約時2万〜15万円・発動時1万〜2万円(鑑定なら+5万〜10万円)・発動後は監督人報酬が月1万〜3万円の三段階で、監督人報酬は家族が受任しても必ず発生し、本人が亡くなるまで続きます。総額のめやすは家族受任・発動10年で150万〜400万円程度。抑えるには家族が無報酬で受任し、契約書の下書きを自分で用意し、家族信託と併用して監督対象の財産を減らす。費用の差より「誰に任せるかを自分で決められる」ことが任意後見の価値です。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。