死亡すると銀行口座はいつ凍結される?凍結前にやるべきこと・仮払い制度・解除までの流れ
「役所に死亡届を出したら、その瞬間に銀行口座が凍結される」――これは最もよくある誤解です。
結論からお伝えすると、口座が凍結されるのは、銀行が死亡の事実を把握したときです。役所から銀行への通知の仕組みはなく、死亡届を出しても口座は動き続けます。実際に凍結のきっかけになるのは、①家族が銀行に連絡した、②相続手続きで来店した、③新聞のお悔やみ欄や葬儀の情報で銀行が知った、などです。
つまり、銀行にいつ連絡するかは、遺族側がある程度コントロールできるということです。この「連絡までの時間」を正しく使えるかどうかで、その後の数か月の手間が大きく変わります。この記事では、凍結の仕組み、凍結前にやるべきこと・やってはいけないこと、当面のお金を確保する仮払い制度、そして解除(相続手続き)までを順に解説します。
この記事は「死亡による凍結」の解説です。ご存命の親の認知症による凍結(仕組みも出口も別物です)は「認知症で親の銀行口座が凍結される?」をご覧ください。
凍結の仕組み:いつ・なぜ止まるのか
銀行が口座を凍結するのは、亡くなった方の預金が相続財産になるからです。相続人の一人が勝手に引き出して他の相続人と揉める、二重に払い戻してしまう――そうしたトラブルから相続財産と銀行自身を守るため、死亡を把握した時点で入出金を止めます。凍結されると次の取引がすべて停止します。
- ATM・窓口での引き出し、キャッシュカードの利用
- 公共料金・家賃・保険料などの口座引き落とし(滞納が発生し得る、見落としがちな影響です)
- 年金などの振込入金(受け取れずに返戻される)
- 定期預金の解約
銀行に連絡する前にやるべき3つのこと
- 引き落とし契約の棚卸しと変更:通帳・アプリで直近1年の引き落としを確認し、電気・ガス・水道・通信・保険料・サブスク等の支払方法を、遺族の口座やクレジットカードへ変更します。凍結後にやると滞納・督促の後始末が増えます。
- 入金の確認:年金の最終受給、高額療養費や保険の入金予定がないか確認します。凍結後の入金は返戻され、受け取りの手続きが別途必要になります。
- 通帳・カード・届出印の確保と、口座の一覧化:どの銀行にいくらあるかを財産目録にまとめます。相続放棄の判断・遺産分割・相続税のすべての土台になります。
この3つが済んでから銀行に連絡すれば、凍結によるダメージはほぼ防げます。なお、連絡を先延ばしにし続けることはおすすめしません。凍結は遺産を守る仕組みでもあり、後述の仮払い制度や相続手続きは凍結後でも問題なく使えます。
凍結前の引き出しは違法?――やってよいこと・いけないこと
「凍結される前に葬儀代を下ろしておきたい」というニーズは自然なものですし、引き出し自体が直ちに違法になるわけではありません。ただし、次の2つのリスクを必ず理解してください。
リスク① 相続放棄ができなくなるおそれ
故人の預金を自分のために使うと、相続を承認した(単純承認)とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。故人に借金がある可能性が少しでもあるなら、凍結前の引き出しには手をつけないのが鉄則です(相続放棄の期限は相続を知ってから3か月)。
リスク② 他の相続人との紛争
引き出したお金は相続財産の一部です。使途の記録がないと、後の遺産分割で「使い込み」と疑われる典型パターンになります。やむを得ず引き出す場合は、①葬儀費用など故人のための支出に限定、②領収書を全部保管、③出金日・金額・使途の一覧を作成、④他の相続人へ事前に一言、の4点をセットにしてください。
当面のお金が必要なとき:預貯金の仮払い制度
2019年に始まった仮払い制度を使えば、遺産分割の前でも、各相続人が単独で預金の一部を引き出せます。堂々と使える正規ルートなので、凍結前の駆け込み引き出しより、こちらを基本に考えてください。
- 引き出せる額:死亡時の残高 × 1/3 × その相続人の法定相続分(例:残高600万円・相続人が配偶者と子1人→配偶者は600万×1/3×1/2=100万円)
- 上限:1つの金融機関につき150万円(複数の銀行に口座があれば、それぞれで利用可能)
- 必要書類の目安:故人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員がわかる戸籍、請求者の印鑑証明書など(銀行により異なるため事前確認を)
- 注意:仮払いで受け取った分は、遺産分割の際にその相続人の取得分から差し引かれます。また相続放棄を検討中の人は利用してはいけません(承認とみなされるおそれ)
凍結の解除=相続手続き:必要書類と流れ
凍結を解除する方法は、相続手続きを完了させることだけです。パターン別の必要書類はおおむね次のとおりです。
| ケース | 主な必要書類 |
|---|---|
| 遺言書あり(保管制度・公正証書) | 遺言書(遺言書情報証明書/公正証書遺言の正本等)+執行者または受取人の印鑑証明書・本人確認書類 |
| 遺言書なし・協議で分ける | 遺産分割協議書+故人の出生〜死亡の戸籍+相続人全員の戸籍・印鑑証明書 |
| 協議前に法定相続分で(銀行所定の同意書方式) | 銀行所定の相続手続書類に相続人全員が署名・実印+戸籍一式・印鑑証明書 |
銀行が複数ある場合は、法定相続情報一覧図(法務局・無料)を先に取得すると、戸籍の束を使い回す待ち時間が消え、全行を並行で進められます。手続きから払戻しまでは、書類が揃っていれば各行2〜4週間程度が目安です。
遺産分割協議書を無料でつくる
解除に必要な遺産分割協議書は、画面のステップに沿って入力するだけで無料作成できます。会員登録は不要です。複数の金融機関がある場合は、法定相続情報一覧図ガイドもあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
凍結されるまで、家族がカードで下ろし続けてもバレませんか?
出金記録はすべて残り、相続税の税務調査や遺産分割の場で必ず照合されます。「バレるか」ではなく「記録が残る前提でどう説明できるか」で行動してください。使途の記録と他の相続人への共有が自衛策です。
葬儀費用は誰のお金から出すべきですか?
実務では喪主が立て替え、香典と遺産から清算する形が多数派です。故人の預金から出す場合は仮払い制度を使い、領収書を保管してください。
口座が凍結されたまま放置するとどうなりますか?
預金が消えることはありませんが、10年放置すると休眠預金として扱われ、手続きがひと手間増えます。また相続人が亡くなって数次相続になると必要書類が激増します。相続税の申告(10か月)や登記義務(3年)ともあわせ、早めの手続きをおすすめします。
ネット銀行や証券口座も同じですか?
凍結の仕組みは同様ですが、そもそも家族が口座の存在に気づけないのがネット系の最大のリスクです。故人のメール・アプリ・郵便物から口座を洗い出し、財産目録にまとめてください。生前の備えとしては、エンディングノートへの口座一覧の記載が有効です。
まとめ
- 凍結は「死亡届」ではなく「銀行が知ったとき」。連絡のタイミングは遺族がコントロールできる
- 連絡前に、引き落とし契約の変更・入金確認・口座の一覧化の3つを済ませる
- 相続放棄の可能性があるなら、故人の預金には一切手をつけない
- 当面の資金は仮払い制度(残高×1/3×法定相続分・上限150万円/行)で正々堂々と
- 解除は相続手続きの完了のみ。複数行あるなら法定相続情報一覧図を先に
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。