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生前の備え

死後事務委任契約とは?頼める内容・費用・遺言との違い|おひとりさま・頼れる家族がいない方の備え

公開日 2026年8月16日 ・ 更新日 2026年8月16日 ・ 9分で読めます

人が亡くなると、葬儀の手配、役所への届出、病院や施設の精算、家の片付け、携帯電話やサブスクの解約――数十件の「事務」が一気に発生します。通常はこれを家族が担いますが、頼れる家族がいない方、家族が高齢・遠方の方、家族に負担をかけたくない方はどうすればよいのでしょうか。

その答えが死後事務委任契約です。自分が亡くなった後の事務を、生前のうちに信頼できる人や専門家に依頼しておく契約で、単身世帯の増加を背景に利用が広がっています。

この記事では、①頼める内容、②遺言書や他の終活書類との役割分担、③費用の相場と預託金の仕組み、④契約の流れと注意点を解説します。

死後事務委任契約の位置づけ:遺言書ではカバーできない領域

亡くなった後の3つの領域(死後の事務・財産の承継・生前の医療の希望)と、それぞれに対応する書類(死後事務委任契約・遺言書・尊厳死宣言書等)を示す図
図:亡くなった後の3つの領域と備える書類。死後の事務は相続ではないため、遺言書ではカバーしきれません。

「遺言書を書いておけば全部済むのでは?」と思われがちですが、遺言書の本来の役割は財産の承継(誰に何を相続させるか)です。葬儀の方法や家の片付けを遺言に書いても、法的な拘束力のない付言に留まるのが原則で、実行してくれる人がいなければ実現しません。

死後の事務という「実行の担い手」を法的に確保するのが死後事務委任契約であり、遺言書と競合するのではなく、組み合わせて使う書類です。

頼める内容の一覧

  • 死亡直後:病院・施設の退去手続きと費用精算、親族・知人への連絡
  • 葬送:葬儀・火葬の手配、納骨・散骨・永代供養の手続き(生前の希望どおりに)
  • 行政手続き:死亡届に関する調整、健康保険・年金の資格喪失手続き
  • 生活の後始末:家賃・公共料金・医療費の支払い、電気ガス水道・携帯電話・サブスクの解約
  • 住まい:賃貸住宅の明け渡し、家財の整理・処分(遺品整理)
  • デジタル:SNSアカウントの削除・追悼設定、パソコン・スマホ内データの処理
  • その他:ペットの引き渡し先への引き継ぎ、関係者への挨拶状

頼めないこと:財産を誰に渡すか(=遺言書の領域)と、生前の財産管理・身上監護(=任意後見・家族信託の領域)は、死後事務委任契約ではカバーできません。この線引きが、この分野でいちばん誤解の多いポイントです。

誰に頼めるか

  • 信頼できる個人:甥姪・友人など。費用は抑えられるが、受任者の負担が重く、先に亡くなるリスクも考慮が必要
  • 司法書士・行政書士・弁護士:職業的な継続性と実務力。報酬が発生
  • NPO・社会福祉協議会・民間の終活サービス:地域や法人によりサービス範囲と料金体系が大きく異なるため、契約内容の確認が特に重要

いずれの場合も、受任者には死後、契約内容を実行する法的な立場が与えられます。判例上も、本人の死亡によって当然には契約が終了しない趣旨の合意として有効性が認められています。

費用の目安:報酬と「預託金」の二本立て

費用の項目内容と目安
契約書の作成費用公正証書化の費用(公証人手数料1万円台〜)+専門家に依頼する場合の作成報酬(数万〜十数万円)
死後事務の報酬依頼範囲によるが、専門家依頼で総額50万〜100万円程度が一つの目安
実費・預託金葬儀費用・未払金の精算などの実費に充てるお金を、生前に預けておく方式が一般的(100万〜150万円程度を預託する例が多い)
費用は事業者・依頼範囲により大きく異なります。複数の見積もりを取ることをおすすめします。
注意

預託金方式では、受任者や信託会社にまとまったお金を預けることになるため、①預託金の管理方法(分別管理か)、②解約時の返金条件、③報酬の内訳、の3点を契約前に必ず確認してください。事業者の破綻や使途トラブルは、この分野で実際に問題化した事例があります。

契約の流れ:5ステップ

  1. 依頼したい事務を洗い出す(エンディングノートで希望を整理すると漏れがありません)
  2. 受任者を決めて、内容・報酬・実費の負担方法を協議する
  3. 契約書を作成する(下書きは無料ツールで作成できます)
  4. 公正証書にする(義務ではありませんが、死後に効力を主張する書類の性質上、公正証書化を強く推奨します)
  5. 関連書類(遺言書・尊厳死宣言書・エンディングノート)と保管場所を受任者と共有する

契約書には、委任する事務の範囲、報酬、実費の精算方法、預託金の取り扱い、受任者の報告義務(相続人・遺言執行者への報告)などを定めます。遺言書で遺言執行者を指定している場合は、死後事務の受任者と同一人物にするか、両者の役割分担を明記しておくと、死後の実務が円滑です。

こんな方は検討をおすすめします

  • 配偶者や子がいない、または親族と疎遠
  • 子はいるが海外・遠方在住で、駆けつけられない
  • 家族に手続きの負担をかけたくない
  • 内縁関係・事実婚のパートナーに事務を担ってほしい(法律上の親族でないと病院・行政の手続きで壁に当たりやすいため、契約で権限を明確化する意義が大きい)
  • 葬儀や納骨に明確な希望があり、確実に実行してほしい
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委任する事務をチェックしながら契約書の下書きを作成できます(登録不要)。あわせて、希望の整理にはエンディングノートツール、財産の承継には遺言書ツール、延命治療の意思表示には尊厳死宣言書ツールをどうぞ。

よくある質問(FAQ)

死後事務委任契約は口約束でも有効ですか?

契約自体は口頭でも成立し得ますが、本人の死後に効力を発揮する契約であるため、書面がなければ受任者は病院・行政・業者に対して権限を証明できません。公正証書での作成が実務上の標準です。

相続人がいる場合、相続人と受任者が対立しませんか?

あり得ます。だからこそ、契約の存在を相続人(または遺言執行者)に知らせておくこと、契約書に事務の範囲と費用の精算ルールを明記しておくことが重要です。葬儀の方式など感情に関わる事項は、生前に家族へ意向を伝えておくのがいちばんの予防策です。

生前の入院手続きや財産管理も頼めますか?

死後事務委任契約の対象は死後の事務です。生前の備えは、財産管理委任契約(体が不自由になったとき)→任意後見契約(判断能力が低下したとき)→死後事務委任契約(亡くなった後)と、時系列でつなぐ設計が実務の定石で、3点セットで契約する例も多くあります。

途中で解約できますか?

生前であれば、原則としていつでも解約(解除)できます。その際の預託金の返金条件と精算方法を、契約時に確認しておいてください。

まとめ:「実行してくれる人」を法的に確保する契約

  • 死後事務委任契約は、葬儀・支払い・解約など死後の事務の担い手を生前に確保する契約
  • 財産の承継(遺言書)・生前の備え(任意後見等)とは役割が違い、組み合わせて使う
  • 費用は報酬+預託金の二本立て。預託金の管理方法は契約前に必ず確認
  • 公正証書化と、関係者への周知が実効性のカギ

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供です。契約の締結・預託金の設計は、司法書士・弁護士等の専門家にご相談ください(本文中の費用相場は2026年8月時点の公表情報にもとづきます)。作成した書類の下書きは、専門家のチェックを受けたうえでご利用ください。