自宅で看取るという選択|体制・費用・意思表示
「最期は家がいい」——本人のこの希望を叶えられるかどうかは、気持ちではなく準備で決まります。在宅での看取りは、家族だけで抱え込むものではなく、在宅医・訪問看護・介護サービスとチームを組んで初めて成り立つものだからです。
延命治療についての話し合い方は「延命治療の希望を家族で決める」に譲り、この記事では在宅看取りを実行に移すための体制・費用・段取りに絞って解説します。とくに「いよいよのとき救急車を呼ぶかどうか」は、事前に決めていないと本人の望まない結末になりかねない重要な取り決めです。
①在宅看取りは、訪問診療の医師・訪問看護・介護保険サービスとのチーム戦。まずケアマネジャーと在宅医探しから ②費用は医療保険と介護保険の自己負担の二本立て。高額療養費などの軽減制度も含め、月々のめやすを事前に確認する ③「いよいよのとき」に救急車を呼ぶと、蘇生処置や警察の検視につながることがある。呼ばずに在宅医へ連絡する段取りを家族全員で共有 ④かかりつけの在宅医がいれば、自宅での死亡でも死亡診断書は交付される。本人の希望は書面に残しておく
在宅看取りに必要な体制——チームを組む
在宅看取りの成否は、駆けつけてくれる医療チームを組めるかにかかっています。中心になるのは次の顔ぶれです。
- 訪問診療の医師(在宅医)——定期的に自宅へ来て診療し、夜間・緊急時の連絡体制を持つ医師。看取りまで対応するかを最初に確認します
- 訪問看護——体調管理・痛みの緩和・家族への助言。看取り期は訪問回数を増やせます
- ケアマネジャーと介護サービス——介護用ベッドの手配、訪問介護、家族の休息のための短期入所など。要介護認定が入口になります(「要介護認定の申請から結果まで」)
- 家族の役割分担——主に付き添う人、仕事との調整、きょうだい間の交代。一人に集中させない設計が長続きの条件です
探し方は、病院の退院支援の窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャーへの相談が三大ルートです。「看取りまで対応する在宅医かどうか」を必ず言葉にして確認してください。
費用のめやす——医療保険と介護保険の二本立て
| 費目 | 内容 | めやす |
|---|---|---|
| 医療費(医療保険) | 訪問診療・訪問看護・薬代。自己負担は1〜3割 | 高額療養費で月の上限あり |
| 介護費(介護保険) | 訪問介護・ベッドなど福祉用具・短期入所。自己負担は原則1〜3割 | 要介護度ごとの限度額内で設計 |
| 保険外の実費 | おむつ・栄養補助食品・交通費など | 月数千円〜数万円 |
合計の自己負担は、軽減制度を使ったうえで月数万円程度に収まる家庭が多い一方、サービス量や所得区分によって上下します。費用を誰の財布から出すかは、後のトラブル予防のためにも先に決めておきましょう(「親の介護費用は誰が払う?」)。
いよいよのとき——救急車を呼ぶかどうかを決めておく
ここが在宅看取りの最重要ポイントです。呼吸が止まりかけた場面で慌てて救急車を呼ぶと、救急隊は救命が仕事ですから、本人が望んでいなかった蘇生処置や搬送につながることがあります。さらに、診療していない状態で亡くなると警察の検視の対象になることもあり、家族の負担は一気に増えます。
- 「そのときは在宅医(訪問看護)へ連絡」を家の約束にする——連絡先を電話の近くに貼り、同居していない親族にも共有します
- 本人の希望を書面にする——蘇生や延命措置についての希望は、尊厳死宣言書などの書面にして在宅医と共有しておきます(「尊厳死宣言書とは」)
- 迷ったら訪問看護へ電話——「これは最期のサインか、対処すべき変化か」を電話で相談できるのがチームを組む最大の利点です
亡くなった直後の流れと、本人の意思表示
在宅医の診療を受けながら自宅で亡くなった場合、連絡を受けた医師が死後の診察を行い、死亡診断書が交付されます。深夜であれば、慌てて起こさず朝の連絡でよいと事前に言われることもあります。段取りはチームごとに違うため、必ず「そのときの連絡手順」を確認しておいてください。診断書の交付後は、死亡届の提出(「死亡届は誰が出す?」)、葬儀へと進みます。亡くなった後の医療費の精算は「亡くなった後の入院費・医療費は誰が払う?」も参考になります。
そして体制と同じくらい大切なのが、本人の希望を早めに言葉と書面にしておくことです。在宅か病院か、痛みの緩和をどこまで優先するか、最期に会いたい人。話し合いは一度で終える必要はなく、気持ちが変われば書き直せます。
「そのとき」の希望を、書面で共有できていますか——尊厳死宣言書の下書きを無料でつくれます。在宅医・家族と共有する土台としてお使いください。
尊厳死宣言書をつくるよくある質問(FAQ)
家族が医療の素人でも、自宅で看取ることはできますか?
できます。在宅看取りは家族が医療行為を担うものではなく、訪問診療と訪問看護のチームが医療を、家族は日常の見守りと付き添いを担う分業です。痛みの緩和や急変時の対応は電話一本でチームに相談できます。大切なのは、看取りまで対応する在宅医を確保することと、家族の中で一人に負担を集中させないこと。不安が強い時期は、短期入所などで家族が休む選択も遠慮なく使ってください。
自宅で亡くなると、警察を呼ばなければいけないのですか?
在宅医の診療を受けながらの看取りであれば、原則として警察は関与しません。診療中の病気で亡くなったと在宅医が判断すれば、死後の診察をして死亡診断書を交付できるからです。警察の検視につながりやすいのは、診療していない状態での突然の死亡や、慌てて救急要請をして搬送先で亡くなった場合など。だからこそ、「そのときは在宅医へ連絡」という段取りを家族全員で共有しておくことが大切です。
在宅での看取りにかかる費用は、施設や病院より安いですか?
一概には言えません。医療保険と介護保険の自己負担は高額療養費などの軽減制度があり、月々の自己負担は数万円程度に収まる家庭が多いのがめやすですが、サービスの量・所得区分・地域で変わります。施設との比較では、居住費・食費がかからない分だけ安くなりやすい一方、家族の時間という見えない負担が大きくなります。ケアマネジャーに費用の見積もりを出してもらい、家計と負担の両面で比べてください。
本人は在宅を希望していますが、家族に自信がありません。どう決めればいいですか?
白か黒かで決めなくて大丈夫です。在宅で始めて、つらくなったら入院や施設に切り替える——途中で変更できることを前提に始めるのが現実的な設計です。まず本人・家族・ケアマネジャー・在宅医で話し合い、どの状態になったら切り替えるかのめやすも共有しておくと、家族の心理的な負担が軽くなります。本人の希望は書面に残しつつ、「家族が倒れない範囲で」という条件も本人と共有しておきましょう。
まとめ
在宅看取りは、在宅医・訪問看護・介護サービスとのチーム戦です。費用は二つの保険の自己負担の二本立てで、軽減制度込みのめやすを事前に確認。そして最重要は「いよいよのときは救急車ではなく在宅医へ連絡」という段取りの共有です。これを決めていないと、本人の望まない蘇生や検視につながりかねません。本人の希望は話し合いを重ねて書面に残し、チームと共有する——準備した分だけ、望んだ最期に近づけます。途中で方針を変えてよいことも、忘れずに。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。