ホームゾウゾクノート / 亡くなった後の入院費・医療費は誰が払う?

相続発生後

亡くなった後の入院費・医療費は誰が払う?高額療養費の払い戻しと相続の注意点

公開日 2026年8月24日 ・ 更新日 2026年8月24日 ・ 7分で読めます

看取りの直後、病院から渡される入院費・医療費の請求書。結論は、これは故人の債務(マイナスの相続財産)であり、相続財産から精算するのが基本形です。誰か一人が自腹で背負う筋合いのものではありません。ただし一つだけ先に確認を——相続放棄を検討中なら、故人の財産からは払わないでください(あなた自身の財布から払うのは問題ありません)。

この記事では、支払いの考え方→放棄との関係→後から取り戻せるお金(高額療養費など)→相続税・所得税での扱い、の順に整理します。葬儀費用の分担は「葬儀費用は誰が払う?」で同じ構造を解説しています。

この記事の要点

①入院費・医療費は故人の債務として相続人が引き継ぎ、実務では相続財産から精算+領収書保管が基本形。身元保証人になっていた家族は、相続と別に契約上の支払義務を負う ②相続放棄を検討中は、故人のお金から払うと単純承認とみなされるリスクがある。自分の財産から立て替える分には放棄に影響しない ③高額療養費(2年)・葬祭費・埋葬料(2年)は後から取り戻せる。未払医療費は相続税の債務控除、支払済み分は準確定申告の医療費控除の対象になり得る

誰が払う?——法律の建前と実務の基本形

亡くなった時点で未払いだった入院費・医療費は、故人が病院に負っていた債務です。債務は相続の対象なので、法律上は相続人が(複数いれば法定相続分に応じて)引き継ぎます。実務では、代表の相続人が故人の相続財産から精算し、領収書を保管して他の相続人と共有するのが基本形——葬儀費用と同じお金の流れです。立て替えた場合は遺産分割のときに精算します。

注意が一つ。入院時に家族が身元引受人・連帯保証人になっていた場合、その人は相続とは別に、自分の契約にもとづく支払義務を負います。誰が保証人欄に署名したか、入院時の書類を確認しておきましょう。未払額は財産目録の負債欄に記録しておくと、この後の放棄判断・遺産分割・相続税のすべてで使えます。

相続放棄を考えているときの鉄則

故人の財布から払わない故人に借金があり相続放棄(3か月以内)を検討しているなら、故人の預金や現金から医療費を払ってはいけません。相続財産の処分として「相続を承認した」(法定単純承認)とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。一方、相続人が自分自身の財産から支払うことは、相続の承認にはあたりません。保証人としての支払いも同様です。どうしても判断がつかない場面では、支払う前に弁護士・司法書士へ。

「病院に迷惑をかけたくないから、とりあえず親の口座から」——この善意の一手が放棄を封じるのが典型的な失敗です。支払期限は病院との相談で猶予できます(FAQ参照)。順番は財産・負債の調査(財産の調べ方)が先、精算は後です。

後から取り戻せるお金——高額療養費・葬祭費

制度内容と期限
高額療養費1か月の自己負担が上限額を超えた分の払い戻し。死亡後は相続人が請求する。期限は診療月の翌月初日から2年
葬祭費・埋葬料国民健康保険・後期高齢者医療は葬祭費、会社の健康保険は埋葬料(いずれも数万円)。期限2年
未支給年金亡くなった月の分までの年金を遺族が請求(死亡後の年金手続き
民間保険入院給付金・死亡保険金は保険会社へ請求(死亡保険金の請求手続き)。時効3年

高額療養費は請求しなければ戻りません。加入していた健康保険(市区町村・後期高齢者医療広域連合・健康保険組合)から届く支給申請の案内を見落とさないこと。死亡後に受け取る高額療養費は相続財産側のお金なので、受け取った人の記録・共有を忘れずに(詳細はFAQ)。各種期限の全体像は「相続手続きの期限一覧」へ。

税金での扱い——債務控除と医療費控除

①相続税の債務控除——死亡時点で未払いだった医療費・入院費は、相続税の計算で遺産総額から差し引ける「債務」です。請求書・領収書を保管しておけば、その分だけ課税対象が減ります。

②医療費控除(所得税)——支払いのタイミングで扱いが分かれます。故人が生前に支払った医療費は、故人の準確定申告(4か月以内)の医療費控除の対象。死亡後に、生計を一にしていた相続人が支払った医療費は、その相続人自身の確定申告で医療費控除に使える場合があります。同じ1枚の請求書でも「いつ・誰が払ったか」で行き先が変わる——領収書に支払日と支払者をメモしておくのが実務のコツです。なお、死亡後に払った故人の医療費を故人の準確定申告の医療費控除に入れることはできません(債務控除の側で拾います)。

未払いの医療費も、財産目録の負債欄へ——プラスもマイナスも1枚に書き出せば、放棄の判断・債務控除・遺産分割まで一気通貫で使えます。無料・登録不要です。

財産目録をつくる

よくある質問(FAQ)

入院費が高額で、すぐに払えません。どうすればいいですか?

まず病院の会計・相談窓口に事情を伝えてください。支払期限の猶予や分割払いに応じてもらえるのが通常で、放置して督促に進むのが一番よくありません。あわせて、高額療養費の払い戻しで実質負担が下がる見込みを確認し、当面の資金は死亡保険金の請求預金の仮払い制度で確保する、という順番で対応します。

家族が入院時の連帯保証人(身元引受人)になっていました。放棄しても払う必要がありますか?

保証人としての支払義務は、相続とは別のあなた自身の契約上の義務です。そのため相続放棄をしても保証人の立場は消えず、病院から請求されれば支払う必要があります。逆に言えば、保証人が自分の財産から支払うことは相続の承認にはあたらないので、放棄の妨げにはなりません。

高額療養費の払い戻しは、誰の口座に入りますか?

死亡後に支給される高額療養費は、故人が受け取るはずだったお金を相続人が請求するもので、請求した相続人の口座に振り込まれます。ただしこれは相続財産(または相続税の課税対象)として扱われるため、受け取った人のものになるわけではありません。金額と入金日を記録し、遺産分割の場で他の相続人と共有してください。申請期限は診療月の翌月初日から2年です。

死亡診断書の文書料や差額ベッド代も、債務控除や医療費控除の対象になりますか?

扱いが分かれます。相続税の債務控除は「死亡時点で未払いだった故人の債務」が対象で、治療費・入院費の未払い分は対象になりますが、死亡診断書の文書料は葬式費用側で扱われるのが実務です(葬儀費用の債務控除)。医療費控除では、治療対価でない文書料や本人希望の差額ベッド代は対象外とされるのが原則です。個別判定は税理士に確認してください。

まとめ

亡くなった後の入院費・医療費は、故人の債務として相続財産から精算+領収書保管が基本形。ただし相続放棄を検討中は故人の財布から払わない——自分の財産からの立て替えや保証人としての支払いは放棄に影響しません。高額療養費・葬祭費・埋葬料は2年以内に請求すれば取り戻せ、未払分は相続税の債務控除、支払済み分は「いつ・誰が払ったか」に応じて準確定申告か相続人自身の医療費控除へ。請求書が届いたら、慌てて払う前にまず財産目録の負債欄に1行——それが正しい最初の一手です。

財産目録を、無料でつくりませんか

預金・不動産などのプラスの財産と、医療費・借金などのマイナスの財産を1枚に。相続放棄の判断も債務控除も、ここから始まります。登録不要・ブラウザだけで完結します。

あわせて読みたい

この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的・税務的助言を行うものではありません。単純承認にあたるかの判断や控除の適否は事案により異なります。相続放棄は弁護士・司法書士へ、税務は税理士へご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)