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家なき子特例とは?別居でも8割減できる要件と落とし穴

公開日 2026年9月11日 ・ 更新日 2026年9月11日 ・ 9分で読めます

「実家を継ぐが、自分は別居で賃貸暮らし。小規模宅地の8割減は使えるのか」——この問いへの答えが、いわゆる「家なき子特例」です。正式な名前ではなく、小規模宅地等の特例のうち同居していない親族が自宅の土地を取得しても8割減を受けられるパターンの通称です。

制度全体は「小規模宅地等の特例をわかりやすく」に譲り、この記事では家なき子の要件を一つずつ確認し、2018年改正で使えなくなった形と、使うための遺産分割の進め方を整理します。

この記事の要点

①家なき子特例は、亡くなった人に配偶者も同居の相続人もいない場合に、別居の親族が自宅の土地を取得して小規模宅地等の特例(330㎡まで8割減)を受ける仕組み ②本人の要件は、3年以内に自分・配偶者・3親等内の親族・関係法人の持ち家に住んでいない、今住む家を過去に所有していない、申告期限まで保有する ③2018年改正で「持ち家を子や親に贈与して家なき子になる」「親族の会社名義の家に住む」形は使えなくなった ④親が老人ホーム入居中でも要件を満たせば使える余地がある。税額ゼロでも申告が必要で、期限までに遺産分割を成立させる

家なき子特例とは——「配偶者なし・同居相続人なし」が前提

小規模宅地等の特例で自宅の土地を8割減にできるのは、①配偶者、②同居親族、③どちらもいない場合の「別居の親族」の3類型。③が家なき子で、前提として被相続人に配偶者がおらず、同居していた法定相続人もいないことが必要です。

典型は、父を先に亡くした母がひとりで実家に住み、その母が亡くなり、賃貸暮らしの子が実家を相続する場面です。母と同居していた兄弟が一人でもいれば、その兄弟が相続放棄をしても「同居の相続人がいた」と扱われ、家なき子は使えません。

要件の一覧——本人の側で確認する4点

要件確認のポイント
1相続開始前3年以内に、自分・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家に住んだことがない賃貸・社宅・寮なら可。配偶者名義の持ち家に住んでいると不可。兄弟や祖父母の持ち家も不可
2相続開始時に住んでいる家を、過去に所有したことがない持ち家を売ってそのまま借りて住み続ける形を封じる要件
3申告期限(10か月)まで、その土地を保有している期限前に売ると適用外。居住の要件はない
4取得する人が被相続人の親族である孫や兄弟姉妹は遺言で取得させる必要があり、2割加算の対象
家なき子特例の本人側の要件(2026年8月時点。前提として被相続人に配偶者・同居の法定相続人がいないこと)。

多い判定ミスは要件1です。配偶者名義のマンションに住んでいれば持ち家扱い。逆に自分名義の家を賃貸に出し、自分は借家に3年超住んでいれば要件を満たすことがあります。「所有」ではなく「所有する家に住んでいるか」で見る、と覚えてください。

2018年改正で塞がれた形——贈与で「家なき子」は作れない

2018年(平成30年)の改正前は、要件1の対象が「自分と配偶者の持ち家」だけでした。そのため持ち家を子や親に贈与して名義を移し、そのまま住み続けて「家なき子」になる自分の会社名義で家を買って住む形で、実質は持ち家がありながら8割減を受けられました。

改正で対象に「3親等内の親族」「特別の関係がある法人」が加わり、要件2も新設されて、これらはすべて塞がれています。経過措置も終わり、今から名義を動かして家なき子を作ることはできません。古い解説には改正前の内容が残っているので注意してください。

一方、親が老人ホームに入居していたケースは使える余地があります。要介護認定などを受けて施設に入り、自宅を空き家のまま(貸さずに)残していれば、その土地は「居住用」として扱われ、要件を満たす子が取得すれば8割減の対象です。施設の種類や認定の有無で判定が分かれるため、入居契約と介護保険の認定通知を揃えておいてください(「老人ホームの種類と費用」)。

使うための遺産分割——誰が取得し、いつ売れるか

「誰が取得するか」で結果が決まるため、遺産分割協議そのものが節税の設計です。

  • 要件を満たす人が土地を取得する——持ち家のある兄弟が取得すると使えません。土地は家なき子に、他の財産で調整するのが基本形
  • 申告期限までに分割を成立させる——未分割では特例を使えず、いったん特例なしで納税し、後で更正の請求で取り戻す二度手間になります
  • 売却は申告期限の後——期限前の売却は適用外。売る予定でも10か月待つ設計に。空き家なら3,000万円控除との併用も検討します(「相続した空き家の3,000万円特別控除」)
  • 税額ゼロでも申告する——協議書・戸籍・住民票に加え、取得者の賃貸借契約書など「持ち家に住んでいない」ことを示す書類を添付します

持ち家・同居・老人ホームの判定は、一つ違えば数百万円単位で税額が変わります。迷うなら協議書に署名する前に税理士へ確認するのが最も安い保険です。

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よくある質問(FAQ)

賃貸に住んでいますが、妻名義の持ち家があります。家なき子になれますか?

なれません。「持ち家」には配偶者名義の家も含まれ、妻名義の家に3年以内に住んでいれば適用外です。ただし妻名義の家を賃貸に出し、夫婦で別の借家に3年超住んでいれば、要件を満たす余地があります。判定は「名義」ではなく「その家に住んでいたか」。単身赴任で社宅にいても、家族が自分名義の家に住んでいれば生活の本拠はそちらとされ、適用は難しいのが一般的です。

実家を相続したらすぐ売りたいのですが、特例は使えますか?

申告期限(10か月)まで保有することが要件なので、期限前に売却すると使えません。売る予定でも、契約と引き渡しを期限の後にずらせば適用できます。家なき子には居住要件がなく、空き家のまま保有するだけで足ります。売却時は相続空き家の3,000万円特別控除の要件(昭和56年5月31日以前の建築など)もあわせて確認してください。

母と同居していた弟が相続放棄をしました。私は家なき子になれますか?

なれません。「同居の法定相続人がいないこと」は相続放棄がなかったものとして判定すると定められており、弟が放棄しても「同居の相続人がいた」事実は消えません。本来は同居していた弟が土地を取得して同居親族として特例を受ける形です。放棄の理由が借金なら、放棄すると土地も取得できなくなるため、放棄の前に税理士・司法書士に相談し、限定承認なども含めて検討してください。

孫や兄弟姉妹でも家なき子特例を使えますか?

使えます。要件は「被相続人の親族」なので、孫や兄弟姉妹も対象です。ただし子が存命なら孫は法定相続人ではないため、遺言で土地を遺贈する必要があり、相続税は2割加算されます。8割減の効果のほうが大きいことが多いものの、二次相続まで含めて試算を。孫の持ち家を親族に贈与して家なき子にする形は改正で塞がれています。

まとめ

家なき子特例は、配偶者も同居の相続人もいない親の自宅を、別居の親族が取得して8割減を受ける仕組み——要件は3年以内に自分・配偶者・3親等内親族・関係法人の持ち家に住んでいない/今の家を過去に所有していない/申告期限まで保有の3点。2018年改正で贈与や会社名義の抜け道は塞がれました。老人ホーム入居中の親でも使える余地があり、誰が取得するかを決める遺産分割協議が、そのまま節税の設計になります。税額ゼロでも申告を忘れずに。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

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ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務・宗教慣習の個別助言を行うものではありません。費用や給付・取り扱いは地域・保険者・事業者により異なり、変更されることがあります。実行にあたっては各窓口や専門家にご確認ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)