遺言書の文例10選|「全財産を妻に」から再婚・子なし・遺贈まで——そのまま使える書き方と注意点
この記事は、自筆証書遺言のケース別文例集です。「全財産を妻に」というシンプルな形から、再婚家庭・子のない夫婦・内縁のパートナーへの遺贈まで、実務で使われる型を10種類、注意点つきで掲載します。
先に大切なことを一つ。遺言は「1文字の違い」で効力や手続きの重さが変わる文書です。文例はあくまで骨格——財産の特定・言葉の使い分け・方式(日付・署名・押印)の3点を正しく押さえたうえで、ご自身の状況に合わせてください。方式の基本ルールは自筆証書遺言の書き方、書いた後の保管は法務局の保管制度(法務局の遺言保管制度)とセットでどうぞ。
まず押さえる3つのルール——文例より大事な土台
- ①方式:自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書し、押印(認印可・実印推奨)。「令和◯年◯月吉日」は日付の特定を欠き無効。財産目録だけはパソコン作成・通帳コピー等が可能ですが、目録の全ページに署名押印が必要です
- ②言葉の使い分け:相続人に渡すなら「相続させる」、相続人以外(内縁・孫・団体)に渡すなら「遺贈する」。「相続させる」遺言は不動産登記を単独申請できる等、手続きが軽くなります。相続人以外に「相続させる」と書いても遺贈と解釈されますが、無用な解釈争いを生まないのが作法です
- ③財産の特定:不動産は登記事項証明書のとおりに(所在・地番・家屋番号)、預金は「◯◯銀行◯◯支店の普通預金(口座番号◯◯)」と書きます。「自宅」「A銀行の預金全部」程度でも解釈で救われることはありますが、金融機関での手続きが止まる原因になります
基本の文例(1〜4)——夫婦と子への承継
- 文例1|全財産を配偶者に:「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻 ◯◯◯◯(昭和◯年◯月◯日生)に相続させる。」——最短の完全形です。子がいる場合は子の遺留分(遺留分とは)の対象になり得るため、付言(付言事項の例文集)で理由を添えるのが定石です
- 文例2|子2人に割合で:「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、長男◯◯に3分の2、長女◯◯に3分の1の割合で相続させる。」——割合指定はシンプルですが、個々の財産の帰属は結局話し合いになるため、主要財産は文例3の個別指定が実務的です
- 文例3|不動産は長男・預金は長女:「第1条 遺言者は、下記の不動産を長男◯◯に相続させる。(登記事項のとおり物件表示) 第2条 遺言者は、◯◯銀行◯◯支店の遺言者名義の預金全部を長女◯◯に相続させる。第3条 前各条記載以外の一切の財産は、妻◯◯に相続させる。」——第3条のような「その他一切」条項(包括条項)を必ず入れるのが、書き漏れ財産の協議を防ぐプロの型です
- 文例4|配偶者に自宅・住まいを守る:自宅の土地建物を配偶者に相続させる指定に加え、2020年開始の配偶者居住権(所有権は子・住む権利は配偶者)を遺贈する設計も可能です。居住権の設定は税・登記が絡む応用形のため、文言は専門家と作成を
家族の事情別の文例(5〜8)——遺言が「必須」の家庭
- 文例5|子のない夫婦(子のない夫婦の遺言):「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻◯◯に相続させる。」——兄弟姉妹に遺留分はないため、この1条だけで配偶者に全額を確実に渡せます。遺言の費用対効果が最も高い家庭類型です
- 文例6|内縁のパートナーへ(内縁の妻と相続):「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、◯◯◯◯(昭和◯年◯月◯日生、住所:◯◯)に遺贈する。」——相続人でないため必ず「遺贈する」。受遺者の特定は生年月日・住所まで書き、遺言執行者の指定(文例9)を必ずセットにします(受遺者自身を執行者に指定可)
- 文例7|再婚家庭(再婚と前妻の子):後妻に自宅と生活資金、前妻の子に遺留分相当の預金——のように全員に「何かを指定」して協議の余地を消すのが型です。「長男◯◯(前妻◯◯との子)」のように続柄を明記すると誤解を防げます
- 文例8|団体への寄付(遺贈寄付):「遺言者は、金◯◯万円を、◯◯法人◯◯(所在地:◯◯)に遺贈する。」——不動産の寄付は受け取りを断る団体が多いため、原則は金銭で。事前に団体へ受け入れ可否を確認し、遺言執行者の指定を必須に
仕上げの文例(9〜10)——執行者と「もしも」への備え
- 文例9|遺言執行者の指定:「遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長女◯◯(または◯◯司法書士)を指定する。遺言執行者は、預貯金の解約・払戻し、不動産の登記手続きその他本遺言の執行に必要な一切の権限を有する。」——執行者がいると相続人全員の協力なしで手続きが進むため、全文例に付けるべき標準装備です(遺言執行者)
- 文例10|予備的遺言(もし先に亡くなっていたら):「妻◯◯が遺言者より先に、または同時に死亡したときは、同人に相続させるとした財産は、長男◯◯に相続させる。」——受取人が先に亡くなるとその条項は失効し、書き直しが必要になるのを防ぐ保険条項です。高齢のご夫婦は必ず入れてください
文例を使うときの注意——コピペの限界
- 文例はあなたの家族構成・財産・遺留分を知りません。特に①遺留分を侵害する配分 ②財産の特定漏れ ③受取人の氏名・生年月日の誤記 ④夫婦連名の1通(共同遺言は無効)——は文例では防げない典型ミスです
- 書いたら法務局の保管制度(3,900円・法務局の遺言保管制度)で方式チェックと保管を。財産が多い・争いの気配がある・遺贈があるケースは、文例を下書きにして公正証書遺言へ格上げするのが安全です(公正証書遺言の費用)
- 当サイトの遺言書作成ツール(無料)は、質問に答えるだけでこの記事の文例に相当する条項を自動で組み立て、遺留分の注意喚起まで行います。文例の「自分用カスタマイズ」はツールに任せるのが最短です
よくある質問(FAQ)
文例どおり書けば、本当に法的に有効ですか?
方式(全文自書・正確な日付・署名・押印)を守って書けば、文例ベースでも法的には有効に成立し得ます。ただし「有効」と「意図どおり機能する」は別問題です。財産の特定が甘ければ金融機関で止まり、遺留分を無視すれば請求で崩れ、執行者がいなければ結局全員の協力が必要になります。文例は骨格、肉付けはご自身の状況——不安が残る内容なら、保管制度の活用と専門家の最終チェックを挟んでください。
一度書いた遺言を書き直したいときは?
いつでも書き直せます。新しい日付の遺言が古い遺言と抵触する部分は、新しいほうが優先します(全文を作り直し、冒頭に「遺言者は、本日以前に作成した遺言をすべて撤回する。」と入れるのが混乱を防ぐ定石です)。古い遺言書は破棄し、法務局に保管していた場合は撤回の手続きをします。家族構成や財産が変わったら書き直す——遺言は「一度きり」ではなく「更新する文書」です。
パソコンで全部書いてはだめですか?手書きがつらいです。
自筆証書遺言の本文は自書が絶対条件で、パソコン作成の本文は無効です(財産目録のみパソコン・コピー可)。手書きの負担が大きい場合の現実解は、①本文を短くし財産の詳細は目録に逃がす(この記事の文例3の型)②公正証書遺言にする(口頭で伝えれば公証人が作成・公正証書遺言の費用)——の2つです。筆記が困難な体調なら、迷わず公正証書を選んでください。
まとめ
- 土台は3つ:方式(自書・日付・押印)/「相続させる」と「遺贈する」の使い分け/財産の特定
- 「その他一切」条項・遺言執行者・予備的遺言は全文例に付ける標準装備
- 子なし夫婦は1条で完結、内縁は「遺贈する」+執行者必須、再婚は全員に指定して協議を消す
- 文例は骨格。遺留分・特定・誤記はコピペでは防げない——ツールと保管制度で仕上げを
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。