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賃貸アパートを相続したら?大家の地位・家賃・敷金の引き継ぎと確定申告
賃貸アパートの相続は、建物という「モノ」だけでなく、大家(賃貸人)という「立場」ごと引き継ぐのが最大の特徴です。入居者との契約、敷金の返還義務、修繕の責任、そして毎月の家賃──相続した日から、あなたは大家です。
この記事では、契約・家賃・敷金の法律関係、直後にやる実務、税金(準確定申告と相続人の確定申告)、そして「経営を続けるか、売るか」の判断材料を解説します。親が元気なうちの認知症対策としてのアパート管理は「家族信託でアパートを管理する方法」をご覧ください。
何を引き継ぐのか|大家の地位の中身
ポイントは3つです。① 賃貸借契約は当然に承継され、入居者の同意も新契約も不要です(逆に、大家の相続を理由に入居者へ退去や値上げを求めることもできません)。② 敷金の返還義務も承継します。退去が出れば、預かり敷金(帳簿上の存在で、現金が別に取ってあるとは限りません)から返還が必要です。③ アパートローンが残っていれば債務も相続の対象です。まず団信の有無と残高を確認してください(抵当権付き不動産の相続)。
遺産分割までの家賃は誰のもの?
相続開始から遺産分割が成立するまでの間に発生した家賃は、判例上、遺産とは別の財産として、各相続人が法定相続分に応じて当然に取得するとされています。あとから遺産分割でアパートを長男が取得しても、分割前の家賃までさかのぼって長男のものになるわけではないのが原則です(相続人全員の合意で「取得者のものにする」と決めることは可能)。
実務では、相続専用の口座を1つ決めて家賃を全額プールし、経費(管理費・修繕・固定資産税・ローン返済)を差し引いた収支を記録して、分割協議で精算するのがトラブルを防ぐ定石です。誰かが家賃を無断で受け取り続けると、使途不明金の争いに直結します(兄弟で揉める原因と対処)。
相続直後にやる実務5つ
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 管理会社へ連絡──死亡の事実と当面の窓口(代表相続人)を伝え、家賃の振込先を相続用口座へ変更。故人の口座は凍結され家賃が受け取れなくなるため最優先です(凍結の仕組み) |
| 2 | 契約関係の書類を確保──賃貸借契約書・レントロール(入居状況一覧)・敷金の預かり額・管理委託契約・修繕履歴・火災保険。財産調査と並行して集めます(財産の調べ方) |
| 3 | 入居者への通知──取得者が決まったら、貸主変更と新しい振込先を書面で通知します(管理会社経由が通常)。決まるまでは「相続人一同」名義での案内も実務上行われます |
| 4 | ローン・保険の手続き──団信の請求または債務引受の相談を金融機関へ。火災保険の契約者変更も忘れずに |
| 5 | 取得者を決めて相続登記(3年以内)──収益物件こそ共有は避け、1人が取得して代償金や他の財産で調整するのが定石です(登記のやり方/共有にしてしまった場合の解消) |
税金|準確定申告・相続人の確定申告・相続税評価
① 準確定申告(4か月以内)──亡くなった年の1月1日から死亡日までの不動産所得は、相続人が故人に代わって申告します(準確定申告のやり方)。
② 相続人自身の確定申告──死亡日の翌日以降の家賃収入は相続人の不動産所得です。遺産分割が決まるまでの分は、法定相続分に応じて各相続人が申告するのが原則で、「分割で取得者が決まってからまとめて」ではない点に注意してください。青色申告を引き継ぎたい場合は、相続後の期限内に相続人自身の青色申告承認申請が必要です(期限は死亡日により異なるため税務署・税理士に確認を)。
③ 相続税評価は下がる──賃貸中の建物は貸家評価(おおむね3割減)、敷地は貸家建付地評価となり、自宅より評価が下がります。計算のしくみは「土地・建物の評価額の出し方」を、課税の有無は「基礎控除の判定」をご覧ください。要件を満たせば貸付事業用宅地として小規模宅地等の特例(200㎡まで5割減)の対象にもなり得ます(特例の解説)。
続けるか、売るか|判断の3つの軸
| 判断軸 | 見るポイント |
|---|---|
| ① 実質収支 | 家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税・ローン返済・空室損を引いた手残り。満室想定の表面利回りではなく、直近2〜3年の実績で判断します |
| ② 建物の残り寿命 | 築年数と大規模修繕の履歴。外壁・屋根・給排水の更新時期が近いと、数百万円単位の支出が待っています。修繕見積りを取ってから結論を |
| ③ 自分の適性・体制 | 入居者対応・空室対策を担えるか。管理会社に任せても、経営判断(募集条件・修繕の決断)は大家の仕事です。遠方・多忙で無理があるなら、高値のうちに売るのも立派な選択です(売却時の税金) |
「相続税評価が下がるから持ち続けるべき」とは限りません。節税効果は、空室と修繕リスクを引き受ける対価です。収支・寿命・体制の3軸で冷静に比較してください。売却する場合、入居者付きのまま(オーナーチェンジ)で売るのが通常で、退去させる必要はありません。
よくある質問
入居者から「大家さんが亡くなったので敷金を返して」と言われました。
相続だけを理由とする返還義務はありません。敷金は退去時に、原状回復費等を差し引いて精算する通常のルールのままです。契約も従前どおり継続することを、管理会社経由で丁寧に案内してください。
相続放棄を検討中です。家賃を受け取ってしまって大丈夫ですか?
危険です。相続開始後の家賃の受領・費消は相続財産の処分と評価され、単純承認とみなされるおそれがあります。放棄を検討している間は家賃に手を付けず、管理会社に事情を伝えて保管してもらってください(直後にやってはいけないこと)。
兄がアパートを相続する予定ですが、決まるまでの家賃を「全部自分のものだ」と言っています。
原則は分割成立までの家賃は法定相続分で全員のものです(本文2章の判例)。収支を開示してもらい、精算を協議書に明記しましょう。応じない場合は使途不明金の問題として専門家へ(相談先の選び方)。
サブリース契約(一括借り上げ)が付いています。解約できますか?
サブリース契約も相続で承継されます。大家側からの解約は借地借家法の正当事由の壁があり、容易ではありません。契約書の解約条項・賃料改定条項を確認し、見直したい場合は不動産に強い弁護士へ相談してください。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。