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相続発生後

家督相続とは?長男がすべてを継いだ旧民法の制度と、今も登記で登場する理由

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 8分で読めます

家督相続(かとくそうぞく)とは、「家」の主である戸主の地位と全財産を、原則として長男がひとりで引き継いだ旧民法の制度です。1947年(昭和22年)に廃止され、現在の相続はきょうだい平等の均分相続に変わりました。

「歴史の話」と思いきや、この制度は今も実務に顔を出します。曾祖父名義のまま放置された土地の相続登記では「家督相続」を原因とする登記が必要になることがあり、また「長男がすべて継ぐべきだ」という意識のぶつかり合いとして、現代の遺産分割にも影を落とします。この記事では、制度の中身と、現代の2つの実務場面での付き合い方を解説します。

家督相続のしくみ|現行制度との比較

旧民法:家督相続(〜1947年) 戸主(父) 長男 二男 長女 全財産+戸主の地位 相続分なし ※ 戸主の死亡だけでなく「隠居」による生前の相続もあった 現行民法:均分相続(1947年〜) 長男 二男 長女 子は男女・長幼の別なく均等 (配偶者は常に相続人。法定相続分の基本ルール
図1:旧制度と現行制度。1947年を境に「家の承継」から「個人の均分相続」へ転換しました。

旧民法の相続は「家」制度と一体でした。特徴を現行法と比べると次のとおりです。

家督相続(旧)現行の相続
誰が相続する家督相続人1人(原則、戸主の長男)配偶者と子など複数の相続人範囲と順位
何を相続する戸主の地位+全財産を単独承継財産(プラスもマイナスも)を相続分に応じて承継
開始の原因戸主の死亡のほか、隠居・国籍喪失など生前の開始もあった死亡のみ
男女・長幼男子優先・長子優先完全に平等
放棄家督相続は原則放棄できなかった3か月以内の相続放棄が可能

いつの相続に適用される?3つの時代区分

どのルールで相続するかは、「亡くなった日(相続開始日)」の法律で決まります。登記実務で使う区分は次の3つです。

相続開始日適用されるルール
〜1947年(昭和22年)5月2日旧民法=家督相続(戸主死亡・隠居の場合)。遺産相続(戸主以外の死亡)という別ルールもありました
1947年5月3日〜12月31日応急措置法の期間。家督相続は適用されず、現行に近い均分相続
1948年(昭和23年)1月1日〜現行民法の相続(その後の改正による配偶者相続分の変更等はあり)

「今から手続きするか」ではなく「いつ亡くなったか」がすべてです。だから、戦前に亡くなった曾祖父の名義の土地を今から登記する場合には、現代でも家督相続のルールを適用することになります。

実務場面①:曾祖父名義の土地の相続登記

相続登記の義務化(3年ルール・過料)を機に、何世代も前の名義のまま放置された土地の登記に着手する家庭が増えています。ここで家督相続が実務に登場します。

家督相続は、実は「登記を簡単にする」ことがある

戦前に開始した相続に家督相続が適用される場合、その代の承継者は家督相続人1人です。つまりその代では遺産分割協議が不要で、「亡曾祖父 → 家督相続人の祖父」への移転は戸籍だけで証明できます。何十人にも膨らんだかに見える相続人が、家督相続の代を挟むことで一気に整理されるケースがあるのです。

一方で難しさもあります。①古い戸籍(明治・大正の除籍や改製原戸籍)を読み解く必要がある、②家督相続か遺産相続(戸主以外の死亡)かで相続人がまったく変わる、③家督相続の後の世代は現行法の数次相続となり、そこからは協議が必要──という具合に、判断を誤ると登記が通りません。戦前の相続を含む登記は、司法書士へ依頼する価値が特に高い類型です(費用の相場)。まず現在の権利関係を法定相続情報一覧図や相続関係説明図(テンプレートはこちら)に整理するところから始めてください。

実務場面②:「長男がすべて」と言われたら

制度は80年近く前に消えましたが、「跡取りの長男が家の財産を継ぐもの」という意識は地域・家庭によって今も残っています。現行法での整理は明快です。

① 法律上、長男の優先権はゼロ──子の相続分は男女・長幼を問わず均等です。「昔からそういうものだ」に法的根拠はありません。
② ただし「長男に集める」こと自体は合意や遺言で実現できる──実家や田畑を分散させたくない事情(農業・事業の承継など)があるなら、全員が納得する遺産分割協議か、親の遺言書で長男に集中させることは適法です。その際、他のきょうだいの遺留分への配慮(代償金・生命保険の活用)が争い防止の鍵になります。
③ 押印を迫られても、納得できなければ応じない──「長男が継ぐのが当然」と協議書への実印を求められても、応じる義務はありません。遺産の全体像の開示を受けてから判断してください(兄弟で揉めたときの進め方)。

よくある質問

戸籍に「家督相続」と書かれていました。どう読めばいいですか?

その記載は、旧民法下でその人が戸主の地位と財産を単独承継したことを意味します。相続登記では、その記載(家督相続の年月日・原因)がそのまま登記原因の証明になります。判読が難しい場合は、市区町村の窓口や司法書士に読み方を確認してください。

長男が家督相続した財産を、今からきょうだいで分け直せますか?

原則できません。その相続は当時の法律で有効に完結しており、現行法を遡って適用することはできないためです。現在の名義人が亡くなったときの相続(現行法・均分)で調整するのが法的な枠組みです。

「跡継ぎがいないので婿養子に家督を譲る」ような仕組みは今もありますか?

戸主の地位という意味の家督は現存しませんが、婿養子縁組+遺言・生前贈与で「事業や家産を特定の人に集中させる」ことは現行法でも設計できます(養子縁組と相続)。祭祀(お墓・仏壇)の承継は財産とは別枠のルールです(祭祀承継者の決め方)。

戦前に開始した相続でも、相続登記の義務化の対象ですか?

対象です。義務化は過去の相続にも適用され、施行日(2024年4月)と要件を知った日等を起点に期限が計算されます。古い名義ほど関係者が増え続けるため、早く着手するほど楽になります(義務化の詳細)。

古い名義の土地も、まず財産の棚卸しから

名義が誰のままか・評価額はいくらかを財産目録に書き出せば、登記の優先順位と専門家への相談も一気に進みます。ブラウザで無料作成できます。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。旧民法下の相続の判定(家督相続か遺産相続か、相続人の確定)は専門性が高いため、戦前の相続を含む登記は司法書士への相談をおすすめします。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)