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相続発生後

借地権は相続できる?地主の承諾は不要・名義書換料を請求されたときの対応

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 9分で読めます

親が「借りた土地」に家を建てて住んでいた──この借地権(しゃくちけん)は、れっきとした財産として相続の対象になります。そして重要なのは、相続に地主の承諾は不要だということ。「承諾料」「名義書換料」を請求されても、相続の場合は支払う義務が原則ありません

この記事では、借地権相続の基本ルール、相続後にやること、遺贈との違い、評価のしくみ、そして「もう住まない」場合の手放し方までを解説します。

借地権とは|「建物は自分のもの、土地は借りもの」

土地(所有者=地主) 「底地(そこち)」と呼ばれる 建物(所有者=親) 登記も親の名義 借地権 土地を使う権利 地代を毎月 地主へ支払う 相続の対象=「建物の所有権」+「借地権」のセット(どちらも財産です)
図1:借地権の構造。相続するのは「建物+土地を使う権利」のセットです。

借地権は、建物を所有する目的で土地を借りる権利(借地借家法で強く保護されます)で、都市部では土地の価値の6〜7割に相当する評価が付くことも珍しくない、立派な財産です。「借り物だから相続とは関係ない」という思い込みが、最初のつまずきポイントです。

結論:相続に地主の承諾はいらない

借地権は相続によって当然に相続人へ引き継がれます。賃借権の譲渡には本来地主の承諾が必要ですが、相続は「譲渡」ではないため、承諾は不要です。ここから、実務で頻出する2つの場面の答えが導けます。

地主からよくある要求対応
「相続するなら承諾料・名義書換料を払ってほしい」支払い義務は原則ありません。丁重にお断りしてかまいません(関係維持のため挨拶と説明は丁寧に)
「相続を機に契約書を作り直したい・地代を上げたい契約条件は従前のまま引き継がれるのが原則。安易に不利な条件で締結し直さないこと。地代改定には正当な根拠が必要です
やるべきコミュニケーション

承諾は不要でも、地主への連絡はすべきです。「相続人の◯◯です。地代は今後この口座から支払います」と伝え、契約書・地代の支払い記録を引き継ぎましょう。良好な関係は、将来の建て替え承諾や売却承諾の場面で効いてきます。

注意:「相続」と「遺贈」で扱いが変わる

同じ「引き継ぐ」でも、法律上の性質によって地主の承諾の要否が変わります。

引き継ぎ方地主の承諾備考
相続人が相続する(協議・遺言の「相続させる」)不要承諾料も原則不要
相続人以外への遺贈(内縁のパートナー・孫など)必要賃借権の譲渡にあたるため。承諾が得られない場合、裁判所の許可(承諾に代わる許可)を求める制度があります。承諾料(借地権価格の1割前後が目安とされる)が必要になることも

内縁のパートナーに借地上の自宅を残したい場合など、遺贈が絡むケースは設計が難しいため、遺言作成の段階から専門家に相談してください(遺贈とは内縁の妻・夫に相続権はない)。

相続後にやること4つ

順番やること
1契約書と支払い記録の確保──土地賃貸借契約書・地代の振込記録・更新料の領収書を探して保管。見つからなくても借地権は消えませんが、条件の証拠として重要です
2誰が引き継ぐかを決める──建物と借地権はセットで同じ人が取得するのが原則。遺産分割協議書に「建物および同建物のための借地権」を明記します(協議書の無料作成はこちら
3建物の相続登記(3年以内・義務)──借地権自体の登記は通常ありませんが、建物の名義変更は相続登記の義務化の対象です。建物の登記が借地権の対抗力の裏付けにもなります(相続登記の義務化自分でやる方法
4地代の支払いを止めない──相続でバタバタしている間の地代の滞納は、契約解除(借地権消滅)の口実になり得ます。支払い窓口の引き継ぎを最優先に

借地権の相続税評価|土地の評価額×借地権割合

借地権の相続税評価は、基本的に次の式で計算します。

借地権の評価式

借地権の評価額 = その土地の自用地評価額 × 借地権割合
(借地権割合は路線価図に30〜90%でA〜Gの記号として表示。住宅地では60〜70%が多い)

たとえば自用地評価額3,000万円・借地権割合60%なら、借地権の評価は1,800万円。「借り物だから財産はない」どころか、相続税の判定を左右する規模になり得ます。基礎控除を超えるかどうかの確認は「相続税の基礎控除とは?」で行ってください。なお、自宅として使っていた借地権には小規模宅地等の特例(8割減)が適用できる場合があります(特例の要件はこちら)。

住まない場合の3つの出口

出口内容と注意点
① 地主に買い取ってもらう底地と借地権が一つになると土地の価値が回復するため、地主側にもメリットがある取引。最初に打診すべき相手です
② 第三者へ売却する建物とセットで売却できますが、譲渡には地主の承諾(承諾料の目安は借地権価格の1割前後)が必要。拒否された場合は裁判所の許可を求める道があります。借地権専門の買取業者も選択肢
③ 返還する更新をやめて契約を終える方法。原則として建物の解体費は借地人負担になる契約が多い一方、条件次第では建物買取請求権を行使できる場合も。安易に「更地にして返します」と約束する前に契約書を確認
「タダで返す」前にひと呼吸

借地権は財産です。解体費まで自己負担して無償返還するのは、財産を捨てたうえにお金を払う行為になりかねません。①地主買取→②第三者売却→③返還、の順で検討し、金額の妥当性は不動産鑑定士や借地に詳しい専門家に確認してください。

よくある質問

借地権の契約書が見つかりません。相続できますか?

できます。契約書がなくても、建物の登記と地代の支払い実績で借地関係は立証できます。まず建物の登記事項証明書を取得し、通帳の地代支払い記録を確保してください。

地主が「相続したなら更新料を」と言ってきました。

更新料は「相続したから」発生するものではなく、契約の更新時期に、支払う合意・慣行がある場合に問題になるものです。契約書の定めを確認し、根拠が不明なまま支払わないでください。

相続人どうしで、建物は長男・借地権は次男と分けられますか?

建物と敷地利用権は一体で扱うのが原則で、分離させると権利関係が破綻します。1人がセットで取得し、他の相続人には代償金や他の財産で調整するのが実務です(代償分割の記載例)。売って分けたい場合は換価分割を検討します(換価分割とは)。

誰も相続したくない借地権は、相続放棄で手放せますか?

相続放棄をすれば引き継ぎませんが、借地権だけを選んで放棄することはできず、預金など他の財産もすべて手放すことになります。全体のプラス・マイナスを財産目録で見比べてから判断してください(相続放棄の手続き)。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的・税務的助言を行うものではありません。借地契約の内容・地域の慣行により扱いは異なり、承諾料等の目安も個別事情で変わります。地主との交渉・売却の実行前に、借地問題に詳しい専門家へご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)